映画「すずかけの散歩道」
司葉子と杉葉子が出版社編集部員で上司の編集長が森雅之。司にとっては倍の年齢という森(実年齢では48歳)に魅かれる。
津島恵子が司の姉で、森の死んだ妻に似ている。津島と森が会った時、森が特有の目線の演技をするので、何かあると思っていたら何もない。
司は森が居るだろうホテルのバー(TOKYO GRAND HOTELとなっている)へ行き、一人でウィスキーを呑んでいた森にダンスをせがみ、告白する。森は年長者の慎みから自分は司の若さにそぐわないと彼女を諭す。
その後の司はあっけらかんと会社の屋上で同僚たちと「失恋した」といってエンド。(ま、私にも体験があるが告白して拒絶されると熱が冷める場合があるが…)
今ではすっかり読まれなくなった石坂洋次郎の原作。原作と映画は別物だろうがほとんど中身がない。(石坂洋次郎批判については拙文『60年安保、日活という時代』の「あいつと私と原作者」参照)
津島と男性編集部員との恋も不自然。
しかし司のシャープな美しさと、森の魅力はたまらない。
森が東北出張するとき、ひとり夜汽車に座り虚ろな視線を送るシーンは、まるで森のイメージフィルム。司も森もファッションがよく、出張帰りに着ていた森のオーバーや、司のウェストを幅広の革ベルトで締めたタイトスカート姿など、たいへんスタイリッシュ。
くわえタバコで仕事をしたり、女同士でバーカウンターで呑んだり、石坂の好きな女性像を描いている。
カメラワークも平凡。
旧国鉄本社の屋上からの俯瞰撮影は貴重。中央郵便局、丸ビル、新丸ビル、八重洲側の風景がみられる。1959年の風景である。
司の「その場所に女ありて」(1962年鈴木英夫監督)と通底するプロットだが、映画の質は「その…」の方がはるかに上質。
ただ司と森の魅力があり、それだけで存在価値がある。
ただ森の良質のあるロマンスグレーの男性上司という役柄はニンに合っていないような気がする。
森と言えば、妻の葬式代を愛人から借りたり(『浮雲』)、盃事につけこんで肉体関係を迫ったり(『夜の鼓』)、といった役柄が彼らしい魅力だと思うが…