新橋演舞場の芸術祭十月大歌舞伎は、七世松本幸四郎追遠として、団十郎と幸四郎の昼夜で役が入れ替わる『勧進帳』や、昼夜とも義経として出る藤十郎が話題になっているが、他にも大曲『国性爺合戦』があり話題に尽きない。
しかし、なんといっても『曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)』(通称「御所五郎蔵」)の「腹切の場」(五郎蔵内腹切)があることが事件である。この場は1947年から2012年の間に2回しか演じられていない。なんと64年間に2回である。
さらに五條坂仲之町の場では仮花道が作られ、両花道で勢ぞろいし河竹黙阿弥の七五調の名セリフのツラネがある。無論仮花道があるかどうかの情報は仕入れない方がいいだろう。
新橋の大きさの問題もあるが予想どおり両花道ではなく、花道と舞台上手に分かれ5人ずつでツラネをする光景は歌舞伎の醍醐味であった。
悪役である星影土右衛門を松緑が演じているのだが、ニンにあっている。声も通るがやや口を開けすぎの感がある。少し口を閉じ声を殺した方が凄味を増すだろう。
傾城皐月は芝雀で、好きな男(五郎蔵)のために金策をしようとして嫌いな男(土右衛門)に身を任せることを決意し、五郎蔵に愛想づかしをしたことで逆に問いただされ「(それには)深い、深い」ワケと言いたいところすぐ近くに土右衛門がいるため、ワケを呑みこみ「深い、深い、仲」とするところなど難役を見事にこなしている。芝雀(皐月)、松緑(土右衛門)<、高麗蔵(逢州)、梅玉(五郎蔵)なんとこの4人が初役なのだ。
いわゆる「とめ役(とめ男)」が幸四郎。腕の動きや手の仕草で貫録を表現し舞台を引き立てる。
五郎蔵と土右衛門で切り合いになり、土右衛門が消え、蝋燭の光に導かれてスッポンから出てくる。ファンサービスもたっぷりだ。
腹切りのところから浄瑠璃が入り、芝雀の奏でる胡弓が音を合わせる。そこに梅玉の尺八が加わり、歌舞伎ならではの果ての場。
私も初見のため識者の意見をききたいところだ。