八犬伝 | kazuのブログ

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原作が山田風太郎とは知りませんでした。大好きな作家の一人。奇想天外、オカルト、エロスのオンパレード、史実、事実の中に虚実を混ぜ、「ええっ-!そんなことできんの―?、うんうん、なるほどなるほど、そうかー」と馬鹿馬鹿しさのなかに妙に納得させる彼の執筆。時には物理、化学を持ち出して彼お得意のあり得ない忍術を「可能なんだ」と思わせてしまうその技法。確か、柴田錬三郎だったか(間違ってたらごめんなさい)、彼の才能に嫉妬したと言います。「魔界転生」「甲賀忍法帖」「柳生忍法帖」「くノ一忍法帖」「忍法忠臣蔵」etc...若い時は長編、短編、彼の忍法帖ものはほとんど読み漁りました。洋のジャックヒギンズ、和の山田風太郎、これが私の二大巨頭です。

そしてこれは読んでないんやなあ。今回の「八犬伝」、原作者の滝沢馬琴が友人の葛飾北斎に自らの構想を語って聞かす手法。現実の世界と虚構の世界、二次元の世界を観客は行ったり来たりするわけです。血沸き肉躍る世界にエキサイトしていると突然現実の世界の江戸時代に引き戻される。読んでへんから何とも言われへんねんけど今までの彼の手法とは違うわけです。現実(史実)の中に虚構の世界を描いていたのに現実の世界と虚実の世界をくっきりと分けてしまう。その辺がねぇ、観ていて冷めてしまうわけなんですが...。

時は室町、安房国領主、里見義実の滝田城は隣国の舘山城主安西景連に攻め込まれ陥落寸前にあった。万策尽きた義実は愛犬八房に冗談交じりに「景連の首を取ってきたら褒美に娘の伏姫をやろう」と語りかける。すると八房は何処へともなく姿を消す。数日後、八房が景連の首を加えて帰ってきた。これを機に里見軍は一斉に攻勢に転じ安西軍を滅ぼす。景連を誑かし悪政へ導いたとして愛妾である毒婦玉梓は捕らえられ首を跳ねられる。だが玉梓は斬首の間際「里見家を呪い、子々孫々まで祟ってやる」と言い残した。勝利を祝う里見家の中、玉梓の呪いをかけられた八房は伏姫を奪い山中に立て籠もる。山中に隠れた八房をみつけた里見軍は一斉射撃をかけたがこの時、八房を庇い伏姫も共に命を落とす。この時、伏姫の首にかけられていた数珠は仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つの玉となり四方に飛び散った...。

 

江戸時代...時の人気作家滝沢馬琴は友人の人気絵師葛飾北斎に自らの新作の構想を聞かせる。そしてこの物語を絵にしてほしいと北斎に依頼するのだった。これが28年間に及ぶ超大作「南総里見八犬伝」の始まりであった。

 

室町時代...伏姫が没して数年後、再び里見家に暗雲が立ち込める。関東管領扇谷定正が里見領に触手を伸ばしてきたのである。定正を思うままに操るのは彼の愛妾となった毒婦玉梓の怨霊。風雲急を告げる里見家にどこからともなく八人の剣士が集う。犬塚信乃、犬川壮助、犬塚毛野、犬飼現八、犬村大角、犬田小文吾、犬江親兵衛、犬山道節。彼らの手には仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の玉が握られていた。目の前に立ちふさがるは強大なる関東管領扇谷定正、そして悪霊玉梓...。

 

大切な息子を失い、妻を失い、そして齢70を過ぎ視力も失くした滝沢馬琴。「南総里見八犬伝」この壮大なスケールの物語の完結を諦めかけた時、思いがけぬ者が彼に手を差し伸べる。

 

まさに日本初の冒険ファンタジー、そしてその誕生秘話。物語の展開の途中でファンタジーの世界から現実の世界(執筆時代の江戸時代)に引き戻されます。その時に鶴屋南北なんかが出てきて「忠臣蔵」や「四谷怪談」まで登場。もうなんかごちゃまぜ状態。何を中心に構成されているのか。「南総里見八犬伝」に胸解きめかした人たちはなんか消化不良やったんやないかな。自分としてはハリウッドで確固たる地位を築き今や時の人、若き時代の真田広之と当時の映画界のトップアイドル薬師丸ひろ子が主演した1983年の「里見八犬伝」が懐かしい。この物語を観てあまり深く考えたくないよな。ただ、ただ勧善懲悪の世界に浸り、ファンタシーに酔い、そして読書で体感できない演者たちの殺陣に魅入られる。これですよね。やっぱりなぁ、脇を千葉真一、志穂美悦子、夏木マリ、目黒裕樹など骨太役者たちの豪快さに比べたら...線が細いわぁ今の若い役者さんたちは。名前がわからん。それにCGばかりにおんぶにだっこ。仕方ないかなぁ。ちなみに1983年度版の監督は深作欣二です。そりゃあ骨太さでは今の監督たちじゃ叶わんやろ。少々のバカバカしさやきめの粗さは目をつぶりゃあ娯楽作品とすれば面白い。180年以上も前の原作を映画にするんや。理屈はいらんのよ。