1980年代初めにアメリカでテレビドラマとして放映された「俺たち賞金稼ぎ!フォールガイ」。アメリカでは5シーズン作られたらしいですけど日本では1シーズンのみ。あんまりパッとしなかったんやね。主演がリーメジャース。この人、主演の作品が映画やテレビでいくつか作られてて本国アメリカでは、そこそこ人気やったんやけど、日本での人気は仕事でもプライベートでもなんかついてない人なんです。まず元宇宙飛行士の空軍大佐が瀕死の重傷を負いサイボーグになる手術を受け特殊任務に就くと言う「600万ドルの男」。これで日本でもそこそこ人気が出ました。ところがこの作品のスピンオフ的要素で作られた「地上最強の美女バイオニックジェミー」。これが日本で人気爆発!主演のリンゼイワグナーの方が遥かに人気を超えてしまいました。そして私生活でも...彼が結婚した相手がファセフォーセット。もう我々の世代では1970年代から1980年代にかけてのセックスシンボル。美人なだけでなくゴージャス!という言葉がぴったりの女優さんでした(この間亡くなられましたけどねぇ、残念です。合掌)。結婚当初は当然、リーメジャースの方が売れっ子やったんやけど、彼女が「チャーリーズエンジェル」(観たなぁ~)で登場するやいなや、たちまち人気は逆転!当初の名前は〝ファラフォーセットメジャース〟旦那の名前を付けてました。邪推ですが嫁のために旦那が売り込んだのかって思いたくなります。人気沸騰の後は当然の如く別れちゃいましたけどね、なんか可哀そう。「影が薄い」自分のイメージではそんな印象が強い役者さんです。今回このドラマが40年以上たち「フォールガイ」として映画化されると知り、そのリーメジャースを思い出した次第です。
物語は映画の裏方、スタントマンの男がその身体能力を生かして副業で賞金稼ぎをやると言うストーリー。アメリカの賞金稼ぎと言うのは保釈金を踏み倒して逃亡した囚人を支払った代理店からの依頼を受けて捕まえに行くと言うのが殆んど、西部開拓時代では首に懸賞金のかかったならず者を捕まえに行くガンマンなんかがよく描かれていますが時代は移り変わりました。スティーブマックイーンの遺作「ハンター」でよく描かれてます。
リーメジャースの映画では自分が若い頃、テレビの何とか洋画劇場で「超高層プロフェッショナル」と言う作品を一度観たことがあります。これがなかなか面白かった。建築の凄腕プロフェッショナルたちが集められ、敵対する悪党の妨害を受けながら3週間でビルを完成させるというもの。多分、映画としてはヒットしなかったんやろうけど面白かったねぇ。もう40年くらい前に一度観たっきりやけど、いまだに脳裏に焼き付いています。TSUTAYAで探したんやけどなかなか見つからない。
このリーメジャースが演じたスタントマン、コルトシーバスを今回はライアンゴスリングが演じます。ムチャおもろそう。共演が私イチオシの女優エミリーブラント。勿論、凝ったアクションも凄かったけど映画のバックヤードツアーに連れて行って貰ったようで「一粒で二度おいしい」作品です。
腕利きスタントマン、コルトシーバスはアクションスターのトムライダーの代役として数々のスタントをこなしてきた。だが、ある作品の落下シーンで失敗し瀕死の重傷を負う。辛うじて命を取り留め傷も癒えたコルトだったが映画業界からも、そしてカメラ担当をしていた恋人のジョディの前からも忽然と消えてしまう。
18ヵ月後...レストランの駐車係をやっていたコルトにプロデューサーのゲイルから復帰のオファーが届く。現在シドニーで撮影中のSFアクション超大作「メタルストーム」に主演しているトムライダーのスタントをやらないかと言うのだ。最初は渋っていたコルトだったがこの作品がかつての恋人ジョディの監督デビュー作だと知ると即快諾、シドニーへ飛んだ。
シドニーに着いた彼は早速、撮影に参加。見事にスタントを成功させいささかも腕が落ちていないことを証明した。だがスタントマンがコルトと知るとジョディは激怒。自分の前から黙って姿を消した彼に怒り心頭なのだ。それでもジョディの心を取り戻したいコルトは危険なスタントを次々と必死でこなす。そんな彼にプロデューサーのゲイルがもう一つの頼みごとをする。肝心の主演のトムが行方不明になってしまったのだ。彼を見つけ出してほしいと言う。トムの行方を追いナイトクラブへ潜入。どうやら麻薬がらみの地元ヤクザとつるんでいたようだ。麻薬を盛られたり、クラブで大立ち回りを演じたりと散々だったが、今度は映画スタッフが滞在するホテルへ潜入するとバスルームに氷漬けの死体。気づけば殺人の疑いをかけられ警察からも殺し屋からも追われる始末。コルトは途方もない陰謀に引きずり込まれて行く。だが彼はこの後、より恐ろしい驚愕の事実を知ることになる。
劇中で制作している作品が笑ってしまう。SFアクション超大作って..娯楽の内容をすべてぶち込んだような謳い文句。宇宙のガンマン、迫りくるエイリアン、エイリアンの恋人。馬鹿馬鹿しく思えば思うほどこの作品に参加しているキャスト、作り手、裏方に至るまで映画を愛おしんでいると言うのが伝わって来ます。最後はカメオでジェイソンモモアが登場するわ、エンドクレジットのあとで落ちをつけるわ、「私たちこんなバカバカしいこと、こんな真剣に取り組んでるのよ」って言っているようで余計に映画に対する愛情を感じます。しかし、このドラマを良く見つけてきたねー、ドラマがアメリカで放映されてた頃ってライアンもエミリーもまだ赤ん坊でしょ。わからんはずや。しかしエミリーはいい女優さんになったねぇ。この作品や「プラダを着た悪魔」なんかのコメディもOK、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」や「ボーダーライン」なんかのアクションもOK、SFもOK、シリアスもOK、大河もOKとまさにマルチ女優です。二人とも今、脂が乗って一番いい頃。今後の作品にも期待しています。
それからさっき「映画のバックヤードツアー」なんて言ったけど、スタントマンを始めとする映画の裏方さんたちに対する尊敬と感謝もしっかり込められています。傲慢なスターや守銭奴のプロデューサーに「たかがスタントマン」、「たかが裏方」と劇中に暴言を吐かせるシーンはそれの裏返し。そうやなぁ、ハリウッド版「鎌田行進曲」が感じられて映画好きにはホント愛情が感じられる作品。いやあ、嬉しいね。