無名 | kazuのブログ

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サラリーマン社長のムービートラベル

久々の香港映画、いや中国映画やな。懐かしきあの香港映画は今はありません。まあ、香港映画でも散々、日本人は悪役にされたけどね。これが中国映画になると輪をかけて益々、憎っくき日本人と言うことになります。中国には純粋の日本人でありながら中国内で悪党専門の日本人として活躍する日本人俳優がいるそうであります。本作「無名」でも森博之と言う役者さんが活躍しています。役は関東軍の諜報員総元締。本来ならこう言う作品は日米合作として両国公平に歴史的事実を公正に描くもの。まあ訛りのない日本語をしゃべる日本軍人を演じる役者さんが何人か出演しているのでこう言う役者さん、いっぱい中国にいるんでしょうね。中国人のそう快感を得るために...。作品中には日本軍人に頭の上からセメントを流されて生き埋めにされる中国人たちの姿なんかが描かれています。本当なら仕方ないけど、聞いたことないけどなあ、うーん。日本人としては複雑です。

主演はトニーレオン、いい役者ですよねぇ。「非情城市」から始って「インファナル・アフェア」「レッドクリフ」、香港フィルムノワールの数々の作品、なんか沁みる役者さんです。それからもう一人の主演ワンイーボー、若手の俳優で歌手でダンサーだそう。相当人気あるそうですが私は全然知りません。あしからず...。スパイが暗躍する上海を舞台に残酷でダーティーな世界が繰り広げられます。善人が一人も出てこえへん。

世界大戦末期の上海。汪兆銘政権の国民党・政治保衛安部のフーは中国共産党の秘密工作員ジャンを訪ねていた。フーはジャンから共産党幹部の情報を聞き出すことに成功する。

1941年上海。1938年の広州大爆撃を生き延び政治保衛部の主任になったフーは石原派を自認する日本帝国・関東軍スパイのトップ渡部と戦局の分析をおこなっていた。その場には従弟で部長のタンもいる。フーにはイエとワンと言う部下がおり親日派である汪兆銘の国民党の元で諜報活動をおこなっていたがある時、任務に失敗し処刑されるはずだった国民党の女スパイの命を助け、引き換えに日本人の要人リストを手に入れた。

1944年名古屋で汪兆銘が死去すると国民党は蒋介石政権へ。中華民国・国民党、中国・共産党そして日本帝国・関東軍の諜報機関の間でも微妙な空気が流れだした。イエにはファンと言う婚約者がいたが彼女は共産党のスパイであり、日本を敵視していた。ファンはイエに別れを告げる。数日後、ファンはイエの同僚ワンから暴行を受け殺害される。

1945年戦局は日本に不利になり渡部は日本を去る決意をする。共産党の工作員ジャンは諜報活動に疲れ共に過ごした女性工作員チェンと余生を過ごそうとしたが彼女には夫がいた。共産党の工作員だったチェンの夫はフーだったのである。一方、イエはワンがファンを殺害した理由を問い詰めた。ワンはファンが共産党員だったからだと聞かされ激怒する。その怒りの矛先は共産主義者だと知ったフ-へ...。1945年8月15日。日本敗戦。戦争と政争に翻弄された諜報員たちの運命は...。

 

ややこしい、ああトニーレオンは結局共産党員だったのねと言う結末に。ラスト近くのトニーレオンVSワンイーボーのガチのセメントファイトは派手だった。なんでもスタントなしだそう。時代背景を言うとこのあたりの中国情勢と言うのはほんとうにややこしいです。1930年代は中国各地を軍閥と言うのが支配していていたんですが満州は日本の租借地として認められていたわけです。その満州で日本はうまくビジネスをやっていて世界大恐慌の中でもなんとか乗り切っていたわけ。だから日中戦争勃発後も国民党の汪兆銘は親日派で交流がありました。ただ中国国内には共産党員も多く、これは全くの反日、そして国民党自体も汪兆銘が死ぬと蒋介石が政権を取り日本に反旗を翻します。この男、散々日本に世話になっております。日本に留学させてもらい、日本帝国陸軍で勤務させてもらい、一説によるとかの松井石根大将に下宿の世話までして貰ったとか。なのに南京事件の張本人に仕立て上げ...。まあこれ以上言うと一方的になりますので。

またここでは東条派、石原派と陸軍にはあってこの作品に出てくるスパイの親玉は石原派だとか。まあ確かにこの二人仲が悪かったのは確かですがそんな単純なものではない。東条派とは勿論、陸軍大臣、首相を兼任し終戦後は東京裁判で絞首刑になつた東条英機であり石原派とは戦争の天才、石原莞爾であります。派閥で言うなら皇道派と統制派であり単純に言えば天皇親政の下での国家改造を目指すのが皇道派、陸軍大臣を通じて政治上の要望を実現するという合法的な形で列強に対抗し得る「高度国防国家」の建設を目指すっていうのが統制派。「226事件」以降、皇道派の勢力は弱体化。東条は統制派やったけど石原はどっちにも属さずやったと言います。まあそこまで中国映画に求めるのは酷。けど日本人が中国に自分の国のことを語られるとなんともチープ。そんなことで上げ足を取るような映画じゃないんですけどね...。