見事におしゃれな、おしゃれなフレンチコメディ。観終わったあとで食べたくなるのはフランス料理と言いたいところですが、昼間っからそんなもん胃袋に入れる余裕はありまへん。がっついてたのはお好み焼き、ガレットをモダン焼きに見立てて食べております。昔、女の子とフランス映画を観終わった後、「フレンチのランチが食べたい」と言う女の子は話の分かるセンスのいい娘と言った人がおりますがもうそんな洒落た年でもありません。
加えて本作「ウィ、シェフ! Oui,Chef!」は今のフランス国家と言うより、先進国の世情をも描いています。腕はいいけど融通が利かない、我が強い、上司に逆らうと言う女性シェフとフランス語さえまともに話せない移民支援施設の子供たち、思いもよらぬ化学反応がユーモラスなこの作品、社会風刺もちゃんと描かれています。
フランスの港町ダンケルク。大人気の料理番組「ザ・コック」に出演している有名シェフ、リナデレトのレストランで働くスーシェフ(副料理長)カティマリーは将来、自分のレストランを持つのが夢。腕はいいが我が強い。見た目の彩を重視する上司のシェフ、リナデレトと味重視のカティとはそりが合わうはずもなく、とうとう大喧嘩をして店を飛び出してしまう。
どんなに腕がよくてもそんな料理人を雇ってくれる店もなく、やむを得ず行き着いたのは移民支援施設の料理人。仕事初日から驚きの連続、施設で寮生活を送り職業訓練学校に進学するまでここで勉強を続ける子供たちはまともにフランス語を喋れない者もいる。食堂は缶詰ばかりで調理場は不衛生で設備も乏しい。彼女は仕方なく自ら機材を持ち込み、子供たちに食事を作るが料理人仕込みの腕で懇切丁寧に作る彼女の料理はうまいが何時間もかかる。出来上がる頃には生徒たちはレストランにほとんどいない。育ち盛りの子供たちには味よりも量と憤る施設長のロレンゾは子供たちを料理作りのアシスタントにと提案する。
翌日から調理の実習が始まる。初日はカティの厳しさに反発する者もいたが、それぞれの国を出て命を懸けてこの国へやって来た子供たちのことをロレンゾから聞いたカティは心を動かされる。戸惑いながらも料理を教えるカティは教えるコツをつかみ始める。子供たちも段々と興味を持ち始め自分たちの国の料理を作れるまでになる。ロレンゾは新たに施設に「調理人養成コース」を開設。新たに職業訓練学校に20人の枠を設けて貰う。カティの調理教室は順風満帆のように見えた。だが18歳になって職業訓練学校に就学できないと故国へ強制送還されるフランスの法律ではカティの思いだけではままならないこともあった。今日もまた一人母国へ送還される。カティは因縁のある「ザ・コック」のシェフ王者決定戦に望むことになった。彼女には50,000ユーロの賞金とは別にもう一つの狙いがあった。
フランスにはそういう法律があるわけやね。フランスに限らず移民に対する政策は各国それぞれ厳しい法があるはず。それに比べりゃ日本の移民政策は甘い。外国人技能実習制度の廃止に向けて日本の政策もようやく動き始めましたが確かにこの作品だけ見ると外国人労働者には厳しいかもしれませんがやはり国が思うべきは自国の民。この作品の言わんとしていることは理想の意見の一つとして受け取っときます。
けど映画としては目の付け所も面白いし、頑固なシェフが自らの新しい可能性を見つけて変わっていく姿も、生徒たちとの交流もまた清々しい。しかしフランス料理って言うのはやっぱり見た目が綺麗。美・味これが揃っていることが条件なんですね。自分にはやっぱし敷居が高いですわ。フォアグラよりあん肝、10,000円のフレンス料理よりも1枚1,000円の腹持ちのいいお好み焼き。これですわ。