バビロン | kazuのブログ

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サラリーマン社長のムービートラベル

ハリウッドの創成期、そして映画がサイレント(無声映画)からトーキー(有声映画)に変わっていった時代、その時代の波に乗れなかった者、頂点を摑みながら名声に溺れ堕落していった者。それを体現しているのがブラッドピットとマーゴットロビー。ブラッドピットは銀幕スターのトップに君臨しています。無茶苦茶です。自らを着飾る高級スーツのように美人妻たちと結婚、離婚を繰り返していきます。毎夜のパーティ、と言うよりも卑猥極まりない乱痴気騒ぎに参加。冒頭このシーンが延々と30分ほど続きます。その乱痴気騒ぎに持ち込もうとする象が◌◌コをまき散らすわ。娼婦と何ら変わりない端役女優がスポンサーらしき変体親父に◌◌◌コをかけたりと持っていたポップコーンさえ口に入れる気がしなくなりますが、そんなとこへ登場してこの乱痴気騒ぎに潜り込んで自分を売り込もうとする新人女優が マーゴットロビー。圧巻の猥褻なダンスを披露して関係者の目に留まります。この乱痴気騒ぎがようやくお開きになった翌朝に〝BABYLON〟「バビロン」のタイトルが...

こんなシーンが3時間10分も続くのかと少々辟易しましたがやはり「ラ・ラ・ランド」のデイミアンチャゼル監督。最後の最後まで見ごたえ充分の作品でした。二人と深いつながりを持つことになる映画製作を夢見るメキシコ人青年マニーをディエゴガルバと言うメキシコの若い俳優さんが演じていますが、チャゼル監督もメキシコ系ちゃうかったかな?マニーが目にするもの、体験するものはすべてチャゼル監督自身そのものであって、ハリウッドに対する軽蔑や畏敬の念、そんなものがすべて含まれているような気がしました。私はとにかく、マーゴットロビーがよかった!

 

1920年代カリフォルニア、豪邸ひしめくベルエア。映画製作を夢見るメキシコ人青年マニーは映画会社のアシスタントとして日夜、奔走していた。今日もパーティーが開かれる大邸宅に象を持ち込むと言う無茶ぶりに応えようとしているところだった。パーティと言っても男女入り乱れての乱交パーティだ。参加者はハリウッドスター、映画会社の重役、スポンサー、ゴシップ記者...そして娼婦まがいの女優の卵たち。そこへ大スター、ジャックコンラッドが登場!場は最高潮に達する。ほっと一息つこうとしたマニーが外の空気を吸おうとしたとき、一人の若い女がパーティに潜り込もうとしていた。新人女優のネリーラロイだ。守衛ともめていた彼女をマニーは入れてやった。パーティの最中、ステージに上がって扇情的に踊るネリーのダンスは圧巻だった。一目でマニーはネリーの虜になってしまった。ネリーはハリウッドの重役たちの目にも止まり、映画の役をその場で掴み取る。

狂乱の一夜が明け、酔いつぶれてしまったジャックコンラッドをマニーが連れて帰ることになった。マニーはなぜかジャックに気に入られ彼のアシスタントとして働くことになる。翌日の撮影現場には端役ながら抜擢されたネリーと映画監督やプロデューサーたちの無理難題に奔走するマニーの姿もあった。ダイナミックなダンスとどんな要求にも100%答えるネリーは監督たちに強烈な印象を与えスターへの第一歩を歩む。一方、重役たちの無茶ぶりをこなしていくマニーも裏方としての頭角を現していく。怒号が日夜飛び交うハリウッドの撮影現場、時代はまさにサイレントからトーキーへ、映画界、演劇界はまさに大きな時代のうねりを迎えていた。

1920年代も後半を迎え映画界は完全にトーキー映画に移行した。サイレント映画の頂点にいたジャックコンラッドはセリフの必要な役への転換に悪戦苦闘していた。だがかつての栄光とプライドは捨て去ることはできない。ジャックのアシスタントとして働いていたマニーはジャックの元を離れ今や監督として、プロデューサーとして、そして映画会社の重役としてハリウッドでの実績を積み重ねていた。そしてネリーは今やトップ女優として君臨していたが彼女の堕落はすでに始まっていた。日頃のギャンブル癖、酒、ドラッグ...。奔放で野性味あふれ、扇情的な姿が彼女の魅力であったが今ではそれが災いしていた。マニーはなんとかジャックの返り咲きとネリーの復活を願っていたが時の流れと二人のかつての栄光がマニーの願いを打ち砕く。ジャックは二流作品に甘んじるようになり、ネリーは自堕落な生活にどっぷり漬かってしまい、ギャングに多額の借金を作ってしまう。マニーはネリーをなんとか救おうとすべてを投げうって二人でハリウッドを去る決意をするが...

 

まさにハリウッドの栄枯盛衰。貫禄のブラットピッド、雌豹のようなマーゴットロビー、いいね、いいね。身を滅ぼすと判っていても惚れてしまう、この今どきでは珍しい女臭さぷんぷんのマーゴットロビー。ダイナミック、扇情的、野生的、奔放、自己破滅。これを体現できる彼女はまさにこれはまり役!よかったわー。

ラストで中年になったマニーが映画館で涙を流すシーンがありました。マニーの感情はデイミアンチャゼル監督自身の感情です。彼はハリウッドに、映画に溢れんばかりの愛情を感じています。それなのに冒頭の乱痴気騒ぎやギャングと繋がるハリウッドの人間たちにエゴを感じ軽蔑感を持っています。非常に複雑な感情が見え隠れしています。そして恐怖も...。それはトビーマグワイア扮するギャングのボスがアンダーグラウンドへ案内するシーンやネリーが踊りながら闇の中へ消えていくシーンで感じます。いまじゃあんな見世物小屋的なところはロサンゼルスにあるとは思えませんが...。

この作品に登場するキャラクターには数多くのモデルがいるそうです。ジャックコンラッドもネリーラロイもサイレント時代に一世を風靡したスターがモデルだそう。それを現代のビッグネーム、ブラッドピットや飛ぶ鳥を落とす勢いのマーゴットロビーが演じると言うのはホント感慨深い。そしてゴールデンエイジと呼ばれたハリウッド黄金期の恥部を世界に向けて公開すると言うのはアメリカはいろんな問題を抱える国だけれどもやっぱり懐が深いと思います。中国とちゃうわ。

最初はどうなるんや?と思いましたが終わってみればいい映画やった。ブラットピッドとゴシップ雑誌の女性編集長が相対するシーンが印象的。落ち目になったジャックが、

「昔は役者は犬以下の扱いだった、レストランにも入れなかった。それを俺が変えたんだ」

「誰でもいつかは忘れられる。何十年かたってあなたのフィルムが掘りだされるだけ。あなたは終わり」

大変や、役者さんも。しかし、何度も言うようやけど、マーゴットロビーがいい! ほんまにいい!