フラッグデイ 父を想う日 | kazuのブログ

kazuのブログ

サラリーマン社長のムービートラベル

本日題材に挙げる作品は「フラッグデイ 父を想う日」。ショーンペンの監督・主演、そして娘のディラン、息子のホッパージャック共演。ショーンペン懇親の力作です。と、その前に先日の「アバーター」についてもう一言。私がアバターのシリーズにイマイチのめりこめない理由の一つに、役者たちの顔が見えないということを付け加えておきます。主演のサムワーシントンやゾーイサルダナ、シガニーウィーバー、それに脇役も「タイタニック」のケイトウィンスレットやあくのツよーいクリフカーティスやスティーブンラングまで出てるのに観終わった後「あっ、これあの人だったの」程度にしかわかりません。CGグラフィックって言うんですか?なんとなくアバターの顔は彼らの容姿をかたどってはいるものの私たちは役者たちの素で生き生きと演じる姿を見に来ているのも確か。そんな中から明日のスターを見出したりもします。「アバター」にはそれを感じることができません。何度も言うようにこれは私見であって、皆思いは様々。この作品を観て衝撃や感動を得る人もいるはず。だからもうこれ以上は言いませんが。

なぜこんな話を持って来たかと言うとまさにこの「フラッグデイ 父を想う日」が役者の顔が見える映画。主演のショーンペンが自らメガホンを持ち、自分の娘を息子を映画に出演させたのは単なる七光りの親ばかではないはず。この物語は一種クライムストーリーですがそれよりも17年間の父と娘の心の葛藤を描いた作品。お互い心の底から愛し合っているのに、繋ぎ合わせたくても繋げることができない父と娘の絆。これを実際の父と娘が演じます。役者にとってこれ以上の表現の仕方は出来ないと思います。本当に役者の「顔」が見える作品。事業に失敗し借金を抱え、家族から逃げ出してしまい犯罪に走る、まさにろくでなしを絵にかいたような男(うーん身に染みる)。しかし娘に対する愛情は誰にも負けないそんな父親をショーンペンが演じ、何度もくじけそうになるのをなんとか踏みとどまりなんとか父を支えようとするが、自ら親離れを決意する娘を実の娘、ディランペンが演じます。なんとも歯がゆく、何とも切ない作品。1992年に起こった全米最高額の偽札事件の実話を物語にしています。

1992年アメリカ史上最大の贋札事件が全米を揺るがした。犯人ジョンヴォーゲルは裁判を前にして逃亡。その模様が全米に中継される...。警察で聴取を受けたジョンヴォーゲルの娘ジェニファーはポツリと言った。

「それでも私は父が好き」

1975年家族の前に姿を現してはまた消えると言う生活を繰り返していたジョンヴォーゲルは農場を購入し、妻のパティ、娘のジェニファーと息子のニックと共に移り住んだ。父が戻ってきて大喜びの家族だったが、幸せな日々は長く続かなかった。無理なローンを組んで手に入れた農場のため生活は困窮し父と母の喧嘩が絶えなくなる。ジョンは再び家族の前から姿を消す。父の残したローンの取り立てに耐えきれず母は酒におぼれ、3人は荒んだ生活を送ることになる。まだ子供だったジェニファーは幼い弟のニックとともに叔父ベックの協力を得て、父の元へ行くことになった。

父には新しい恋人もいてジェニファーたちにとってまた楽しい日々が続いたが、やはり長続きしない。父の元には借金の取り立てが押し寄せる。ジェニファーとニックは再び母の元へ送り返されることになった。

1981年、母のパティは再婚し、ジェニファーは高校生になった。平穏な日々が送られているように見えたがその実、家族関係はぎくしゃくしていた。母の再婚相手が高校生のジェニファーに懸想し手を出そうとする。母は今の暮らしを壊したくなくて見て見ぬふりをする。ジェニファーは耐え切れずニックを残して家を出る。彼女の行くところは父の元しかなかった。また借金を抱え込んみ、恋人にも去られ一人で暮らしていたジョンは最初は戸惑ったが、愛する娘の思いに応えるべく普通の会社に就職するため面接を受け続ける。ジェニファーも仕事を見つけ二人にささやかな幸せが訪れるかと思われたのだが...。

やはりジョンは生活を変えられなかった。娘を想うあまり大金を手に入れるため銀行強盗を働いたジョンは懲役刑を受ける。

「フラッグデイ(国旗制定日)に生まれた俺は生まれつき幸運なんだ」

フラッグデイが訪れるたびに父に思いをはせるジェニファーだったがそんな父の思いを断ち切り、母とニックにも別れを告げ自立する道を選ぶ。彼女が選んだ職業はジャーナリストだった。なんとか雑誌社にアルバイトで潜り込めた彼女は努力を続けようやく記事を書かせて貰えることになった。そんな時、出所したジョンがジェニファーの前に現れる。

 

ショーンペンが自らメガホンを取った作品。たんにゴリ押しで娘や息子を出演させているとは思えません。やっぱり実の父と娘、なんか観ている者には独特の感情が響いてくるような気がします。ショーンペンてハリウッドでは気難し屋で知られています。若いころにはDMだの裁判沙汰だのと色々物議を醸しだしました。だけど2000年代に入り2度のアカデミー賞をはじめ数々の映画賞にノミネート。制作や監督も手掛けまさに20世紀、21世紀を代表するアクターです。やっぱりその娘さん、息子さんですからね、サラブレットです。表現力が豊かです。

父と娘の姿が今回は描かれましたが大人になってからの親子関係は難しいと思います。父と娘の他、父と息子、母と娘、母と息子。形は様々ですがお互い分かり合えると言うのは実際なかなか難しいんじゃないでしょうか?生涯を通して分かり合えた関係が保てるなら本当に幸せなんでしょう。自分だって3年前に父を亡くしましたがおそらく最後まで分かって貰えなかったと思います。後悔と言うのは親が亡くなってから来るもんです。いろいろとね。だから大人になって同じ土俵で仕事ができるショーンペン親子は今は本当に幸せなんでしょうね。この作品の実話の親子、ヴォーゲル親子とは真逆です。原作はこの物語のヒロインで当事者のジャーナリストだったジェニファーヴォーゲルの回顧録です。しかし自分の父親が全米を揺るがせた犯罪者だと言う事実を突きつけられる。なんともつらい物語です。