烈火のごとくの香港映画です。矛盾に苦悩する正義、許せぬ復讐。香港の人気スター、ドニーイェンとニコラスツェーが正義を貫く警官と悪に染まってしまった警官として激突する、まさに怒りの炎、「レイジング・ファイア」です。この作品、大きな宣伝広告もなく、神戸は国際松竹会館でひっそりとやってました。香港..九龍..ブルースリーやジャッキーチェンが築いてきた香港アクションの系譜を今、彼らが継いでいます。しかし、中国共産党が侵食してしまった今、私の大好きだった香港映画はどうなるんかな?カンフーアクションから香港ノワール、そんな系譜を併せ持つ作品がこの作品だと思います。絶対的正義と絶対的悪、でも悪には悪に染まる理論があり、正義には常に矛盾がつき纏います。だからグレーゾーンの中で抑圧された者たちが怒りを、魂を、爆発させる。作り方は荒っぽいけどそんなエネルギッシュな作品がこれから香港で出来るのやろか?少なくとも習近平のお先棒を担ぐような作品だけが作られるような香港映画は御免なんやけど...。
香港警察、東九龍署の警部チョンは上司から警察幹部や政治家、財界人の食事の席に呼び出される。彼が逮捕した者の中に香港の有力者の息子がいたのである。罪をもみ消せと言うのだ。当然の如く、チョンはその横車を蹴る。だがその夜、彼が長年追い続けていた凶悪犯ウォンクワン逮捕メンバーからチョンの班が外される。だが麻薬の取引現場を押さえる計画だったのが正体不明の強盗団に襲撃を受けウオンクワンは殺害、大量の麻薬を奪われる。しかもウォンクワン逮捕に同行していたチョンの上司であり親友でもあるイウ警部が殉職する...。
怒りに燃え、捜査に当たるチョンだったが捜査線上にある男が浮かぶ。男の名はンゴウ、チョンを慕っていた元エリート警察官で、チョンにとってはまさに弟のような存在。兄弟のような二人が袂を分かつようになったのは4年前のある誘拐事件が原因だった。誘拐された大企業の経営者の居所を探すためンゴウと彼の部下は誘拐犯を拷問、その果てに殺害してしまったのである。上司からの要請だったにも拘わらず彼らを助けようとする者はいなかった。その結果、彼らは刑務所に収監、一人は死に追いやられた。現場に駆け付けたチョンはンゴウたちを何とか助けたかったものの正義を曲げて偽証するわけにはいかなかったのである。
今回の強盗団はンゴウと彼の元部下たちだった。正義に燃えていた警官時代のンゴウの面影は既になく、冷酷無比の犯罪者になり下がっていた。警察に対して怨念の炎を燃やすンゴウと正義を貫こうとするチョンの間で今まさに最後の戦いが始まる。
この作品が遺作となったベニーチャン監督、そして主演の二人は今の香港をどう思っているんかな?ブルースリーの後を継いだジャッキーチェンは残念ながら中国共産党の広告塔になり下がってしまいました。まあ、麻薬で息子が捕まってますからこれを脅迫のネタにされたらしょうがないでしょうね。中国は麻薬所持=死刑ですもん。後に続く香港スターたちはどうするんでしょう?ちなみにドニーイェンは「魚釣島は中国領」と言っているそうです。残念やけど香港人の彼に「日本の味方をせえ」と言っても無理やろうけどやっぱり共産主義者にはなってほしくない。独裁者の軍門に下ってほしくないんやけどね。映画はむっちゃ迫力あって面白いんやけど、そんなこと考えるとなかなか映画にのめり込めない自分がいたりして...。香港映画界の方々には傍観者のような日本人の私が言うのも無責任かもしれないけど自由に思う映画をこれからも撮ってほしいんですが習近平は増々弾圧や言論封殺、芸能活動やタレントたちにも規制をかけ「第二の文化大革命」とも呼ばれるような政策を推し進めています。なんとか、なんとか、今の現状を打破してほしいと思います。