ワイルドローズ | kazuのブログ

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自分の夢を叶えるために愛する家族を犠牲にすることは是か?非か?

常にその答えを模索している、そう感じた作品が本作「ワイルドローズ」でした。この物語はただのサクセススト-リーではありません。前科持ち、シングルマザーと言うハンデキャップを抱えて、自らの実力のみを信じ、「いつかはカントリーミュージックのメッカ、ナッシュビルで歌う」

その夢を叶えるためには「責任」と言う言葉が彼女に重くのしかかり壁となります。彼女が最後に出した決断とは?

イギリス、グラスゴー。軽犯罪で12ヶ月の間、刑務所で収監されていたローズリン・ハーランはムショ仲間からエールを送られ出所。久々にわが家へ戻ってきた。出迎えるのは冷ややかに見つめる母、それに娘と息子の二人の子供。まだ幼い息子は大喜びだが、多感な年ごろの年上の娘の方は口を聞いてくれない。さもあらん、彼女は子供たちを愛してはいるものの自らの夢、カントリーミュージックの歌手として「ナッシュビルで歌うこと」に猪突猛進。子供たちの世話は疎かになり、すべて母親任せ。浮き草のような生活を送る彼女に傷ついた子供たちを見て母親は苦言を呈するが、ただひたすら夢を追い続ける彼女は聞き入れようとしない。だが、かつて歌っていたクラブでも働かせてもらえず職に困った彼女は裕福な女性実業家スザンナの屋敷で家政婦として雇って貰えることになった。

ある日、ひょんなことからローズの歌声を聞いたスザンナは彼女にカントリーミュージックの歌手としての実力を見出し、友人であるロンドンの有名ラジオパーソナリティ、ボブハリスにデモテープを送る。するとハリスは一度ロンドンで会いたいと言ってきた。喜び勇んで会いに来たローズにハリスは「君の訴えたいことは何なんだ?自分で曲を作りなさい」と彼女に薦める。グラスゴーへ帰った彼女にスザンナは屋敷でパーティーを開きそこで彼女を歌わせクラウドファンディングでナッシュビルへ行くための資金を稼ぐことを提案する。だんだんとローズに夢が広がり始める。だが「あなたは若いんだからもっと挑戦すべきよ、子供が出来たら何もできなくなるわ」と叱咤激励するスザンナに子供がいることを言い出せずにいるローズは思い悩む。まして自分が前科持ちなどと言えるはずがない。彼女の悩みはそれだけではない。夢が広がれば広がるほど子供たちとの心も離れて行く...。

傷付いた子供たちを見て思いなやんだ末、ローズはパーティ当日、スザンナにすべてを告げて去っていく。自らの夢と引き換えに子供たちと過ごす平凡だが穏やかな日々。一度は彼女の夢が潰えたに見えたが、その時思いがけなく、あれだけ彼女の生き方を否定していた母親が手を差し伸べるのであった...。

 

この物語、主題は「夢を追うシングルマザー」であるが一見すると、体のいい「ネグレクトドラマ」である。シングルマザーでも、前科者でも夢を追える!聞こえはいいサクセスストーリーだが「子供を育てる」って言う責任は?「子供を産んだ」責任は?私は「感動」とは別にこれって難しいな-って思って観ていたんですけど...。でもそれを考えたらなんとも締まらない作品になってしまいます。

で、結局この作品がとった結末は「大円満」。母親の言う「あなたの夢を奪うつもりはない、子供に対して愛情を注ぐ姿を見て」って言う話になるんですけど、この物語、モデルになった人がいて実話をベースに作られたらしい。それで実話の方はこのような円満に終わったんでしょうか?ラストで自分のステージを観てほほ笑む、母と子供たち。結局はお互い、理解しあうことが大事って映画は言ってるんやけど、それはそれでええんやけど、なんかこのヒロインに感情移入できない自分がいるのでした。

 

ヒロインのローズを演じたのが新進女優のジェシーバックリー。歌、うまいんですよねぇ。彼女、レネーゼルウィガーがアカデミー賞をとった「ジュディ/虹の彼方に」でジュディガーランドがロンドン公演を行ったときのロンドンでの秘書・付き人を演じたんやけどこんな歌うまい人とは思わなんだ。全く180度違う役柄にビックリでしたわ。