放射線治療による便秘と下痢: がん放射線治療の副作用である胃腸障害とその対策
がんの放射線治療によって、便秘や下痢などの胃腸障害が副作用として発現します。放射線治療の副作用は非常につらいです。吐き気、嘔吐、頭痛、嚥下困難などの全身的な副作用によって、食欲不振となり食べることができなくなります。その結果、排泄される便の形成が少なくなって、便秘が生じます。腹部への放射線照射は、小腸や大腸の粘膜細胞に損傷を与え、下痢や下血が生じます。放射線治療の副作用による便秘や下痢などの胃腸障害の対策には、整腸対策が必要となります。水溶性食物繊維であるイヌリン食物繊維は、整腸作用に優れているため、放射線治療で生じる便秘や下痢などの胃腸障害の予防や改善に有用な食品成分となります。ここでは、がんの放射線治療による便秘と下痢:がん放射線治療の副作用である胃腸障害とその対策についてお話します。
放射線治療とは
がん患者さんの30%以上が放射線治療を受けています。放射線治療とは、がんの組織に放射線をあてて、がん細胞を破壊してがん組織を消滅させ、あるいはがん組織を小さくする治療のことをいいます。がん細胞の骨移転による痛みの緩和や脳移転によるしびれや痛みなどの神経症状を和らげるときにも放射線治療が用いられます。
放射線治療は、がん治療法として単独で行われることがあります。また、抗がん剤や外科手術などの治療法と併用して行われることもあります。外科手術治療との併用では、がんの再発を防ぐために、手術の前後で放射線治療が行われ、すい臓がんなどのように、手術と同時に放射線治療が行われることもあります。
放射線治療に用いられる放射線の種類には、X線、ガンマ線、電子線などがあります。放射線治療は、体の外から放射線をあてる外部照射と、体の内側から、がん組織やその周辺の組織に放射線をあてる内部照射とに分けられます。また、外部照射と内部照射とを組み合わせて行う放射線治療もあります。外部照射による一般的な放射線治療では、1回の治療で10~20分程度で、多くの場合、1週間に3~5日間の治療が数週間にわたって行われます。
放射線治療の対象となるがん治療
放射線治療が標準的な治療となっている主ながん疾患には、頭頸部領域のがん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、悪性リンパ腫、食道がん、脳腫瘍などがあります。頭頸部領域のがんには、舌がんや咽頭がんなどが含まれます。放射線治療は、6~8週間の外部照射で行われます。肺がんの場合、早期のがんでは手術による治療が行われ、病期第Ⅲ期が放射線治療の対象となります。治療期間は、6~7週間、外部照射で放射線治療が行われます。乳がんの乳房温存治療では、乳房部分切除手術に外部照射による放射線治療を併用して治療を行うのが一般的です。放射線治療による乳がんの治療期間は、5~6週間です。子宮頸がんでは、病期第Ⅲ期が放射線治療の対象となります。前立腺がんも放射線治療の対象となります。治療期間は、6~8週間です。悪性リンパ腫では、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫ともに、放射線治療と抗がん剤とによる併用療法が行われます。食道がんでは、外科手術の対象とならない進行性の食道がん治療に放射線治療が用いられます。脳腫瘍では、良性腫瘍及び悪性腫瘍ともに放射線治療が行われます。放射線治療による治療期間は5~7週間です。
放射線治療を用いた緩和治療
転移性骨腫瘍及び転移性脳腫瘍の諸症状、並びにがんが神経や血管を圧迫して生じる症状の緩和にも、放射線治療が用いられます。転移性骨腫瘍では、がんによる痛みを軽減する目的で放射線治療が用いられます。転移性骨腫瘍の患者さんのほとんどが、放射線治療によって痛みを感じなくなります。治療期間は3週間程度です。転移性骨腫瘍で脊髄が圧迫されますと、歩行困難、しびれや感覚がなくなったりします。このような場合にも、放射線治療が用いられ、症状が緩和されます。転移性脳腫瘍の神経症状の緩和にも、放射線治療が用いられます。脳全体に放射線を照射するのが一般的です。肺がんで上大静脈が圧迫されますと、頭部や上腕から心臓に戻ってくる血流が遮断され、それが原因となって、顔のむくみ、腕のむくみ、呼吸困難、咳などの症状が現れます。このような症状の緩和に放射線治療が用いられます。
放射線治療の副作用
抗がん剤治療と同様に、放射線治療によっても副作用が生じます。放射線を照射する体の部位によって、現れる副作用も異なります。放射線治療による副作用は、放射線が照射される体の局所に現れるもの、放射線治療中又は終了直後に現れる急性期の副作用及び放射線治療終了後、半年から数年後に現れる晩期の副作用の3つに区分されます。
放射線治療による局所の副作用
放射線治療による体局所の副作用は、主に、頭部、口腔、頸部、肺、縦隔、乳房、胸壁、腹部及び骨盤に発現します。頭部の副作用では、頭痛、耳痛、めまい、脱毛、頭皮の発赤、吐き気、嘔吐などの症状がみられます。口腔及び頸部の副作用では、口腔、咽頭、喉頭の粘膜炎と、それによる食べ物の飲み込みにくさ、飲み込み時の痛み、声がかれる等の症状がみられます。口渇や味覚の変化も現れます。肺の副作用では、肺への放射線照射によって食道が治療部位に入っていますと、食道炎を発症し、食べ物の飲み込みにくさ、飲み込み時の痛みが出ることがあります。また、放射線肺炎の発症により咳、発熱、息切れなどの症状がみられます。乳房及び胸壁への放射線照射によって、肺の放射線治療と同様に、食道炎による食べ物の飲み込みにくさ、飲み込み時の痛みなどの症状に加え、放射線肺炎による咳、発熱、息切れなどの症状が副作用として現れます。腹部や骨盤の放射線治療では、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、便秘、下血などの副作用が発現します。放射線が照射された皮膚には、日焼けのような皮膚の変化が生じます。発赤、色素沈着、乾燥皮膚、皮膚の剥離などの副作用が現れます。かゆみや痛みを伴うこともあります。放射線を腹部側から照射しても、背中の皮膚に症状が現れます。
放射線治療による急性期全身性の副作用
急性期の全身的な副作用には、疲れやすさ、倦怠感、食欲不振(食欲がなくなる)、貧血、白血球減少、血小板減少などの血液障害があります。放射線治療によって疲労感や倦怠感を訴える患者さんも多いです。食欲不振は、放射線治療の代表的な副作用です。血液中の赤血球、白血球、血小板などの血液細胞は、骨髄で造られます。骨髄が多い骨盤、胸骨、背骨が広範囲に放射線照射されますと、血液細胞が造られなくなり、貧血や血球減少症などの副作用が現れます。白血球が減少しますと、体の免疫防御能が低下し、風邪などの感染症が生じやすくなります。
放射線治療による晩期の副作用
頭部の放射線治療では、晩期の副作用として、脳や脳神経の障害により、難聴、顔面神経麻痺、脳障害、脳下垂体機能低下などが生じます。眼に放射線が照射された場合、白内障、網膜症などが晩期の副作用として発現します。眼に生じる副作用は、視力障害が伴います。口腔及び頸部の放射線治療では、皮膚潰瘍、皮下の硬結、唾液腺の機能低下による口渇、味覚異常、軟骨炎、下顎骨炎、四肢の麻痺やしびれがある脊髄症及び甲状腺機能低下症などの晩期の副作用が生じます。肺や縦隔の放射線治療では、肺の繊維化、呼吸困難、食道の狭窄、嚥下困難(食べ物を飲み込めないこと)、心外膜炎、心不全、脊髄症などの晩期の副作用が生じます。乳房、胸壁及び腋窩(わきの下)への放射線治療では、乳房の硬結、肺の繊維化、腕のむくみ、腕及び手のしびれ、肋骨の骨折などの晩期の副作用が発現します。腹部及び骨盤への放射線治療では、直腸及び結腸の狭窄、消化管潰瘍、消化管の出血、膀胱壁の硬結、血尿、リンパ液及び血液の滞留・うっ血、下肢のむくみ、肝機能低下、腎機能低下、不妊症などの晩期の副作用が発現します。また、放射線治療は、もともとがんの治療に用いられるのですが、放射線を照射することによって、二次性のがんが生じることがあります。
放射線治療による副作用としての便秘
放射線治療によって、吐き気、嘔吐、頭痛、倦怠感、嚥下困難(食べ物を飲み込めないこと)、唾液分泌の低下、口内粘膜炎、食道炎などの副作用が発現します。これらの副作用によって、食事の摂取量が極端に低下し、体重もまた減少します。食事量が低下しますと、排便に必要な便の形成が不十分となって、便秘が生じます。また、放射線治療によって、回腸や結腸などの大腸の狭窄(狭く細くなること)が副作用として発現します。大腸の管が狭くなりますと、便の通りが悪くなり便秘の原因となります。放射線照射による脳の神経症状の発現は、同時に消化管運動の抑制も生じさせます。排便に必要な消化管の運動は、脳神経系に支配されているためです。放射線治療による消化管運動の抑制は、便秘が生じる原因となります。
腹部又は骨盤への放射線治療は、大腸内に生息する腸内細菌を死滅させます。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌には、便を軟らかくする作用があり、排便をスムーズにする機能があります。しかし、放射線治療で、これらの善玉菌が死滅しますと、排便がうまくいかなくなり、便秘が生じます。また、腸に生息する善玉菌は、体内免疫にも貢献していますので、放射線治療で善玉菌が死滅しますと、がん治療の効果そのものを減弱させてしまいます。このように、放射線治療を原因とする便秘は、放射線治療に伴うさまざまな副作用によって生じます。
放射線治療による副作用としての下痢
放射線治療の副作用に放射線腸炎があります。放射線腸炎は、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、大腸がんなどの婦人科、泌尿器科、消化器科及び内科の領域で行われた放射線治療の副作用として生じる腸管の障害のことをいいます。放射線の照射によって、腸管粘膜細胞の壊死がおこり、ひどい下痢又は下血が生じます。放射線腸炎は、子宮類内膜腺の放射線治療に最も多くみられる副作用です。子宮がんの場合、放射線治療を受けた患者さんの20%以上に、放射線腸炎が発症します。
放射線腸炎は、急性期及び晩期の何れにもみられる副作用です。腸管粘膜では、絶えず活発に粘膜細胞が造られています。そのため、放射線に対する感受性がとても高く、細胞の壊死が生じやすい組織です。急性期の放射線腸炎は、放射線が直接、粘膜細胞を障害することによって発症します。他方、晩期の放射線腸炎では、粘膜細胞の壊死のみならず、大腸壁や周囲組織の動脈の内膜炎や血栓形成により生じる組織障害となります。腸粘膜にびらんや潰瘍がみられ、障害が進行しますと腸管の狭窄や腸閉塞が起こることがあります。このように、放射線腸炎は、下痢を伴う放射線治療の代表的な副作用となります。
放射線治療の副作用である便秘や下痢を伴う胃腸障害の対策
放射線治療の副作用として生じる便秘や下痢などの胃腸障害は、避けることができませんので、何らかの対策を講じる必要があります。便秘及び下痢の両者の整腸効果に期待できるのが、水溶性食物繊維であるイヌリン食物繊維です。イヌリン食物繊維は、大腸内に生息する乳酸菌やビフィズス菌の特異的な栄養源となって、それらの善玉菌を増やす効果に優れています。イヌリン食物繊維を摂取することによって、腸内環境が改善され排便がスムーズに行われます。善玉菌は、硬くなった便を適度に軟らかくする機能がありますので、放射線治療の副作用として生じる便秘の改善に効果を発揮します。また、下痢の場合、大腸内で溶けた状態のイヌリン食物繊維は、大腸内の内容物(便の原料となる成分)を吸着させ、便の形成を促進させることによって、水様便を抑制させます。このように、イヌリン食物繊維は、放射線治療の副作用として発現する便秘や下痢などの胃腸障害に効果的に作用します。イヌリン食物繊維の整腸効果は、便秘薬や下痢止め薬とは異なり、連用による効果の減弱が生じませんので、急性期及び晩期を通じた胃腸障害に適用できる特徴があります。さらに、イヌリン食物繊維は、善玉菌を増加させますので、放射線照射により低下した体内免疫力を回復させる効果が期待され、放射線治療によるがんの治療効果の向上も期待されます。今では、スティムフローラのように、不純物を全く含まない極めて高純度のイヌリン食物繊維が、健康補助食品として市販されています。放射線治療の副作用として発現する便秘や下痢などの胃腸障害のコントロールに、このような健康補助食品を活用することも有用です。
放射線治療には副作用が伴いますが、副作用発現によるリスクよりも、がん治療効果のベネフィットが高いので、このようながん治療法が存在することになります。副作用をうまくコントロールすることによって、がん治療効果を上げることができます。
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