【可夢偉レポート】モナコGP DAY3(RACE) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

GOODSMILE RACING 広報ブログ

ファンと共に走るレーシングチーム『GOODSMILE RACING』

残念ですが、今回、KOBについては、あまりレポートすることがありません(泣)。

KOBは抜群のスタートを決めて、
HUL、RAIらをパスして、
VETに続いて7番手まで上がったところで、
まずはALO、そしてMSCに接触してスピンしたGROを避ける際に、
GRO
のリヤタイヤに乗り上げてしまい、そのまま離陸してしまいました。



※VETに続いてP7でT1にアプローチ。そこへ、スピンしながらGROが。。


※GROが、ブレーキをリリースしたので、KOBは、そのままでは当たると、方向転換。
そして、タイヤが接触。エアボーン!



順位は落としたものの、着地すると走行は続けられたのでSC導入のスローラップを利用して、ピットイン。


同一ラップでSC隊列に復帰するだけの時間内でチェックして、すぐに隊列に送り戻しましたが、
SCアウトでレーシング・スピードに戻ると、右フロントのトー・ロッド取り付け部分とプッシュロッド取り付け部分が、着地の衝撃で痛んでいてアライメントが狂い、走行不能と判断してリタイヤとなりました。

完全なもらい事故とエアボーンクラッシュなので、
KOBの腰や背中が無事だった事が唯一の良いニュースでした。



ということで、今回のレポートは、これまで・・・

と、いうのはあまりに寂しいので、
次戦を踏まえて、全体的な状況をまとめておきましょう。

レースはトップのWEBが引っ張る形で進行し、まずはL27にROSがペースが若干遅かったP7のRAIとトップグループ最後尾のP6のVETの間に戻しました。

絶妙の作戦と言えるでしょう。

これに、L29でP1のWEBが反応して、P3のHAMも続きました。
さらに、フェラーリの2台、ALOもMASも反応して、順位は変わらず。
RAI同様、ペースの上がらなかったMSCの前にALOもMASも安心して戻ることが出来ました。
ここで、狙い通りになったのが固い方のプライムタイヤでスタートして、先頭グループがタイヤ交換している隙に先行し、プライムタイヤの保ちを利用して相対的な順位を上げることになったVETです。
(まさに、昨年のKOBの戦術です。)

実質上、トップグループの戦いは、ここモナコでは、この後にSC導入か雨でも降らない限り、これで終わりです。
後は、
L31にトップに立ったVETが、どの順位でタイヤ交換して戻るか。。。です。

結局、VETはL46にピットに入り、P4に復帰。
HAMの前に出ました。

これで、決まりました。

その後、実際、若干の降雨はありましたが、タイヤを交換したのはP7を走っていたVERだけで、その後はコンディションが回復し、VERの賭けは裏目に出てしまい、貴重なポイントを逃す結果となってしまったのが目立つ程度です。

さて、この単調とも言えるレースを演出したのが、DAY2でのレポートにも記した路面温度と言えるでしょう。
レース日のモナコの天候は、午前中こそ、気持ちよく晴れていたのですが、
お昼過ぎから曇り始めて太陽が薄雲に陰り、スタート時には完全に曇っていました。


経験則で言うと、太陽が陰ると路面温度は、その後、約2分で下降を始めます。
実際、路面温度はスタート時に最高の約38度から一貫して下がり続け、ゴール時には31度でした。
グリッドは、路面温度が約47度だった予選で最速ラップを記録(高い路面温度で機能するセッティング)した順番に並んでいますから、これらのトップグループにとっては、レースでは一貫してコンディションが不向きのままだったということが推測できます。


つまり、車輌の具合は一貫して「不良」だったと思われます。
実際、燃料が軽くなるにつれ、向上するはずのラップタイムは、トップグループでは終始1分19秒~20秒のラップタイムでの周回で、ムリに追い越しをしかけず「何かが起こる」のを待って、現状維持・・・。
とにかく、タイヤを1周でも長く保たせろ、という状況だったことでしょう。
見かけは、トップグループの車輌が拮抗して走行したため、スリリングだったかもしれませんが・・・。

また、路面にはタイヤかすが飛び散って堆積していましたね。
このタイヤかすは、タイヤが理想的ではない状態でグリップしているときに発生します。
消しゴムを想像してみて下さい。
一定方向に擦るように押し続けるとと、消しゴムのカスが出ますね。
すごく当然のことに思えるでしょうが、実は、力を掛けて、カスが出ないでギュッと止まている状態が、F1でいう「グリップ(つかみ)」なのです。
(かすの出方も、圧力のかけ方、擦り方で変わるのも解ると思います。)

消しカスが出ると、消しゴムは減りますよね?
タイヤも同じ事です。
トップグループは、この「消しカス」が、出来るだけ出ない走りで、ゴールまで消しゴムにあたるタイヤのトレッド面が残るように走っていて、副次的には、コーナーの外側にちぎれ飛んだタイヤかす/消しカスが堆積するおかげで、コースのきれいなラインが1本だけになり、出来る追い越しも、しにくくなってきたという状態です。

こうした状況の中で、唯一、コンディションの変化に合ったタイヤチョイスをしていたのがVETでした。
路面温度の下がったレース後半では、柔らかいオプションタイヤの方が、うまく機能したというわけです。


トップグループは、予選で使用した柔らかいユーズドのオプションタイヤでスタートしており、規定で固いプライムタイヤをレース後半で使用しなければならなかったことから、こういうVETの追い上げを演出する結果になったというわけです。
翻って、KOBの所属するSauberの相方、PERはペナルティで最後尾からスタートして、さらにドライブスルーペナルティを受けましたが、レース中のベストラップを含み、レース中のペースは1分17秒~18秒という1ステップ高いレベルで周回できていました。
もちろん、追い上げに際し、クリアラップ等もあったのですが、平均的なペースはトップグループを完全に上回っていました。
ちなみに、今回優勝したWEBの今回のレース中の個人のベストラップは1:18.805で、昨年のレース全体のベストラップも、このWEBで1:16.234でした。
これに対し、今回のレースの全体のベストラップはSauberのPERの1:17.296で、昨年のSauberのレース中のベストラップはKOBの1:18.308です。
(PERはクラッシュで、出場していませんでした。)


 こうして見ると、Red Bullは、レース・パフォーマンスでは、昨年比で約1.5秒の性能低下ですが、Sauberは逆に約1秒の性能向上というわけです。
(もちろん、コンディションが違うので、直接比較というわけではなく、あくまで参考比較です。)

どういうことかと言うと、Red Bullを含むトップチームは、エンジンのホット・ブローとブロウン・デフューザーを無くして、大幅な性能低下に面している・・・と、いう状況です。


言わば、ラムダ・ドライブの無いARX-7のようなものです。

そもそもホット・ブローとブロウン・デフューザーを搭載していなかったSauberは、マジック・デバイス(ホット・ブロー)に頼らず、地道に基本性能を向上させて、昨年比で、このレース・ラップの差を生み出していると考えることができます。

ま、いうなればC31は、トップチームのARX-7に対して、M9の「ファルケ」(笑)でしょうか。


 
いずれにしても、現状で、SauberのC31は、
頭を使えば今回のレースような路面コンディションにはうまく適合でき、さらに、状況によってはトップチームと戦える可能性を秘めているという事です。


もちろん、リタイヤしたKOBに「もし」は言いません。

が、次戦モントリオールは、例年低温との戦いであり、今回のモナコとセットアップも酷似(違いはダウンフォースレベルだけ)しており、
さらには対昨年比でC31は縁石走破性能が向上しているので、レース日のコンデョションの予想に、セットアップを合わせていれば、良い戦いが出来る気配はあります。


あ、ちなみに、ARX-7やM9は「フルメタル・パニック」からの引用ですので・・・。
知らないヒトがいたら、ゴメンナサイ。





============================

※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。
KOB=小林可夢偉

HUL=ニコ・ヒュルケンベルグ

RAI=キミ・ライコネン

VET=セバスチャン・ベッテル

ALO=フェルナンド・アロンソ

MSC=ミハエル・シューマッハ

GRO=ロマン・グロージャン

WEB=マーク・ウェバー

ROS=ニコ・ロズベルグ

VER=ジャン=エリック・ベルニュ