スペインGP レポートDAY3 (Race) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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こういうレースは、気持ちいいですね。

セイフティ・カーも導入されず、
スタートからゴールまで、掛け値無しのガチンコ・レースでした。



その中で、今回のKOBのP5という結果は、
中国GPの優勝者であるROSや2009チャンピオンのBUTを追い抜いて・・・と、いう内容なので、
VETがドライブスルー・ペナルティ(黄旗区間減速義務)
MSCがクラッシュでリタイヤという前走者の脱落があったにせよ、
十二分な評価を受けて良いものだと思います。

レース戦略的には、多くのドライバーが3ストップで、予選PPタイムながら失格によ
り最後尾スタートとなったHAMが2ストップ作戦でした。
そして、KOBを含むグリッド1~10のドライバーは、
全員、オプション・タイヤでのスタートでした。

また、かねてからの予想通り、
レーススタート時の気温が予選時と比べて気温で5~8度、
路面温度で7~10度ほど下がったので、コンディションが変化しました。

さらに、予選後に激しい降雨もあって、路面のラバー(タイヤ・コンパウンドの沈着)も洗い流されたのですが、
路面温度の低下は、路面の悪化を上回る影響をもたらしたようで、前座レースであるGP2の、かつてKOBが在籍したチームに聞いてみたところ、
グリップは向上していて「予想より2~3ラップ長持ちした」という事前情報を得ていました。

このため「ひょっとすると2ストップ」も可能な状況か・・・と、いう予想の元でレースはスタートとなりました。


KOBはスタートも、1~2コーナーのポジション取りも無難に決めたものの、
BUTに先行されてP10でのレース開始になりましたが、
程なくチームメートのPERがGROと接触してタイヤをパンクさせて後退したためオープニングラップはP9とスタートグリッドと同じポジションで戻ってきました。


ですが、このPERの後退が、実はこの後のレースを早々に動かす事になります。


というのも、ピットに戻って、クリーンエア(前走者が遙か前方で、単独走行という状態)でコースに新品プライムタイヤで走り出したPERのラップタイムは、
バトル中で理想のラインが取れない状況に対し、
実際はどのようなラップタイムで走ることが可能かの参考タイムになるからです。

これにより、トップ10走行中のチームは、
そのほとんどが予選で使用した(KOBは新品スタートですが)中古タイヤのラップタイムと新品のプライムタイヤとの差が解る事になり、
誰かが予定より早めにタイヤ交換に動く(アンダーカットと言います)と、
それに呼応してタイヤ交換に動くか、動かないかを瞬時に判断しなければなりません。

で、このアンダーカットを好むWEBが、動いてしまいました。

そして、KOBの2台前を走るVETも続きました。

こうなると、一番リスクの少ない反応は「フォロー・ザ・リーダー」です。

ただ、フォロー・ザ・リーダーをしても、装着タイヤまではまねする事はできませんから、そこはチームの判断です。

いずれにしても、このWEBのアンダーカット決断によって、
残りの周回数と、残りのタイヤセットでの予想の周回可能数からして、
今回はトップを争う全員が3ストップ、しかも最後のスティントが長い
極めて難しい状況となりました。


KOBは、この間ずっとスタート時に先行されたBUTと順位を入れ替えながらP8~P9を走行していましたが、L32にBUTをT5という、非常に追い抜きの難しいコーナーでオー
バーテイク
(これまでに多くのドライバーが、ここでオーバーテイクを仕掛けましたが、いずれも接触してフロントウィングを失うことになった場所です。)


また、その後タイヤ交換を挟んで、
L59にはROSをT10のブレーキングでオーバーテイクしてP5に浮上しました。

その後、ラップタイムがぐっと落ちたので、
タイヤがダメになって、再度追い抜かれるのかも知れない
・・・と、心配された方もいるでしょう。

実際、後方からVETがもの凄い勢いで追いかけてきており、
VETは「P5も可能だった」と、言っておられるようですが、そんなことはありません。

ROSを追い抜いた後は、P4のGROまで到達不能のタイム差があったため、
ポジションキープでゴールを目指し、今回使用したエンジンを、後のレースで使用しなければならないので、回転数を下げ、空燃比をバトルモードから、安全モードへ「落とし」て、走行してエンジンの「ライフ」を、延長していたのです。

ですから、追いつかれてもモードを戻せばVETとはちゃんとバトルできる状態にはありましたし、
実際、レース中のペースはKOBの方が若干良かったので、Sauberとしては、KOBにVETが後方何秒にいるかを連絡しているだけで、全く心配はしていませんでした。



というわけで、今回のようなレポートが出来ることは、
プライベート・チーム所属のKOBとしては、なかなか無いので、非常に嬉しく思うと共に、このようなレポート内容が続けられればと、願っています。


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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。

KOB=小林可夢偉
BUT=ジェンソン・バトン
VET=セバスチャン・ベッテル
MSC=ミハエル・シューマッハ
HAM=ルイス・ハミルトン
PER=セルジオ・ペレス
WEB=マーク・ウェバー
ROS=ニコ・ロズベルグ