アーケードスティックのお話・その44 Victrix Pro FS in 2023 | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

7年ぶりの完全新作となる「ストリートファイター6」を前に、この機を逃すまいとして再びアケコン業界も賑わってきた。正直、お気に入りのモノが1台あれば済むとは言え、一度アケコンの魅力に取りつかれてしまうと新しい製品が発表される度に気になってしまうものである。その一つが、日本ではちょうど3年ぶりにリリースされるVictrix Pro FS for PS5だ。

 

今回はレバーレスも同時発表されたが、自分は格ゲー以外にもアケアカなどを頻繁にプレイする事もあり、今なおスティック一筋なのでここでは割愛する。そのスティック版であるが、カラーとPS5に正式対応した以外はほぼ同一の仕様であるように見える。まあ、あいにく円安のおかげで価格は16000円もアップし、Brookの完成品アケコンを超えアケコンとしては史上最高値を記録してしまったのであるが、そんな価格にも関わらずセールスは好調のようである。

 

現在、日本のAmazonで購入できるのはホワイトのみのようであるが、果たして57000円の価値があるのかどうかは難しい所である。まあ、正直こんな製品を買うようなマニアであれば、前モデルも購入しているのがほとんどな気がするものの、多少は新規のプレイヤーも居なくもないだろう。なので、改めて買う価値があるのかどうかであるが、少なくともアケコンとしての完成度は高いのは間違いはない。

 

現在、アケコンの天面の主流はほぼ平面であり、その下に手の肘などが痛くならないように斜めに下がっているものがほとんどである。旧マッドキャッツのTEシリーズは初代からその形であるし、歴代最高傑作のひとつとされる初代Pantheraもそう、HORIのアケコンもビュウリックス配置を模したRAPから、最新のファイティングスティックに至るまで、ほぼその形をとっている。

 

例外なのは天板が斜めに下がっているQanbaのObsidianとPearl、そしてこのVictrixである。ただ、前者は普通に傾斜がされているだけなのに対し、Victrixはレバーとボタン部分は平面だが、そのすぐ真下からカーブを描くように斜めに下がっているのだ。この天板の境目が非常に絶妙であり、手のひらが自然な形で天面に添える事が出来る。継ぎ目がなく、スムーズに斜めに下がっているガワはVictrixと、Brookのアケコンのみであり、これは使っていて非常にやりやすいのだ。



まあ、ObsidianとPearlも十分やりやすいのだけれども、アーケードのコンパネは基本水平なので、人によってはレバーとボタン部分が斜めと言うのは違和感を感じる人がいるのかも知れない。なので、このVictrixのなだらかな弧を描いているガワは大きな特徴のひとつだろう。

 

そして、高級アケコンはほぼ例外がないレベルで、静穏性に優れている。その頂点が旧Pantheraであり、同じ三和レバーでありながらどうしてこうも違うのか、と驚嘆したほどだ。続いてTE2⁺や、旧マッドキャッツ製品などがその代表なのであるが、これらの系譜からこのVictrixもそれを期待していた。しかし、天板の材質のせいなのか、ボタン音はかなり響くと言っていいレベルである。特に、自分などは見た目重視でクリアボタンに変えてしまったので、尚更そう感じてしまうものだ。

 

レバーも静穏性には劣るのだが、さすがにHORIのRAPのように明らかに響く音とは異なり、表現は難しいが上品な感じの響きである。なので、こちらに不満を抱く人は少ないだろう。

 

もうひとつの特徴として、取り外し式のレバーがデフォルトとなっているが、私はすぐに付属のノーマルに変えてしまったので、ここでは評価外とする。しかし、ノーマルに比べると若干の違和感を感じてしまった事は事実である。

 

ワンタッチでガワが開けられるのも大きな特徴ではあるが、TE2⁺や旧Panthera、そしてHORIのファイティングスティックに比べるとスペースが狭いので、細かい作業などはやり辛いかもしれない。

 


以上こんな感じであるが、アケコンとしての出来は非常に高レベルであり、何よりその高級感から所有欲を断然に満たしてくれる事は間違いない。ただ、高級感や使用感に関しては、ObsidianとPearlも全く劣っていないし、実際この2台は長らく自分のメインアケコンだったほどである。なので、本当に欲しくてたまらず、57000円を出す事に全く惜しむ事はないというのであれば全然買ってもいいと思うが、そこまででないのであればQanbaなどを選んだ方が幸せになれるかもしれない。