橋本真也について語る・その18 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

1998年後半のワールドプロレスリングの主役は完全に大仁田厚だった。新日本のレスラーたちは気分が悪かっただろうが、実際に知名度抜群の大仁田厚が出ると視聴率が一気に高くなったらしいから、テレビ的にもプッシュするのは当然である。そして、その流れの中で1.4での佐々木健介戦が決まり、当然それが大会での最大の目玉だった。

 

この日は確か夜12時半ぐらいから当日録画放送がされていたかと思うが、当然のようにつかみは大仁田と健介の試合だった。で、私はそれ以外のカードは知らなかったので、まさかここで今更感満載の橋本VS小川戦が行われるなど予想だにしなかったのである。おそらくほとんどのファンが同じような気持であったかと思うが、入場してきた小川を見てびっくり、余分な脂肪が完全に取り除かれ、黒タイツとレガースをつけた精悍なその姿は完全にファイターそのものだったのだ。

 

そんなカッコいい小川に対して、橋本の相変わらずなボテってとしたその姿には少なからず失望させられた。そして、そんな橋本の入場中にまさかのマイクアピールを犯す。これは実況の辻よしなり氏も触れているが、プロレスラー最高の見せ場である入場にまさかのマイクアピールと言うのはご法度そのものである。この時点で、多くの人たちが不穏な空気を感じた事は間違いない。

 

試合自体は今更触れるまでもないかも知れないが、正直何も知らずに当時見ていた者の感想としては、小川の方が明らかに強そうに見えるのだから、橋本が無様にやられてしまうのは当然だと思ってみていた。つまり、まだ当時のファンと言うのは、単純に強い人間が勝つもの、と信じ込んでいたという事である。ただ、それでもさすがにパンチがプロレスにしてはモロに入っているな、とも思っていたし、直後の顔面蹴りにしてもそうである。

 

プロレスの歴史上でも屈指のマイクアピールかも知れない「目を覚ましてください!」と言うのも、強いのは橋本ではなく俺なんだよ、と言ってるようにしか見えなかったし、実際にそれはそうなのだから納得せざるを得なかった。なので、この時の素直な感情としてはプロレスラーが負けて悔しいという気持ちはほとんどなく、逆に自身の強さを自ら証明して見せた小川カッコいい、と言う感想の方が強かったのである。

 

そして、試合以上に注目されたかも知れないのが、日本プロレス史上最大級となったであろう世紀の大乱闘である。しかし、小川はこうなる事をある程度想定していたか、あらかじめジェラルド・ゴルドーを引き連れており、さすがにゴルドーがいる間は新日本のレスラーも手を出せなかった。これに関しては情けない、との声もあるが、ゴルドーはあくまで用心棒的な役割で試合には一切関与していないので、ゴルドーをボコる大義名分もなかったのでこれも当然である。

 

しかし、ゴルドーがヤバい奴と言うのも事実なので、手を出したくても出せなかったのも事実だろう。その証拠に、ゴルドーが引っ込んでからはタガが外れたようにUFOの連中に襲い掛かり、特に村上は瀕死の重傷を負ってしまう。

 

この試合は特番でも流されたが、のちの通常枠では完全ノーカットで放映され、久々に見るプロレスの事件に何度も録画したテープを見返していったものである。