当時、雑誌を読んでいなかった私は状況が呑み込めなかったので、久々に凄い乱闘を見たな、以上の感想は思い浮かばなかった。そして、その月末にはジャイアント馬場が急死する。発表されたのは2月1日の事であったが、この時は馬場の病状などは一切伏せられていたため、自分はもちろんの事、日本中に大変な衝撃が走ったものである。そして、この馬場の急死により全日本も大きく揺れ動く事になり、のちの橋本の運命にも関わっていく事になるのである。
まあ、もちろんその時はそんな事は知る由もないのだが、小川はひとまずUFO、そして遂にPRIDE参戦を果たしたため、しばらく橋本との関りはなくなっていく。しかし、猪木の強権により藤波辰爾が社長に就任すると、猪木のイエスマンである藤波はあっさりとUFOとの関係を復活させ、そして10月11日のドームの目玉として橋本VS小川の再戦が組まれるのだ。
この2人の因縁はプロレスファン以外からも関心を集め、その最たるものは何と言っても当日夜にあの「ニュースステーション」がなんと20分近くもの枠を割いて特集をしたのである。当時は月曜日でプロ野球がなかった事、そして何と言っても久米宏が夏季休暇中であった事が何よりの要因である。当時は契約問題で揺れていた事もあり、久米宏への当てつけ的かとも思ったものだったが、この件によりテレ朝は決してプロレスを軽視している訳ではなく、あくまで久米宏が居たからNステでプロレスを扱う事が出来なかった、と言う事を改めて我々は理解したのだ。
と言う訳で、これは大袈裟ではなく歴史的な事件とも言えたのであるが、このNステの報道は非常に良く出来ており、ご丁寧にも試合前までの煽りまでもが上手くまとめられ、初見であってもそこに行きつくまでの流れが理解出来たものである。
そして、角澤アナのリポートにより、速報で伝えられたのであるが、当然の事ながらプロレスの枠内に終始した。この試合、最後はSTOを喰らった橋本がかなりグロッキーになり、ほとんど試合が成立しない所まで行った所、突然猪木が小川にパンチを喰らわせて小川のTKO勝利と言う結末を迎えたのであるが、本放送もあるせいかそこまでは描写されず、橋本がダメージを負っている場面にTKO負け、と言う説明に終わった。
その週末には当然ワールドプロレスリングで放映されたのだが、この時点では結構深い時間であったため、確かのちの「リングの魂」における南原氏と勝俣氏の「リンたま観戦ツアー」の方が早い時間帯であったため、深夜ながら7パーセント台と言う驚異的な視聴率を記録したのだ。このおかげで、かなり一般層にまでこの2人の抗争は話題となり、同時に橋本の一般的知名度も飛躍的に向上し、現役プロレスラーでは最も知名度の高い一人とまでなったのだ。