前回の終わりで触れた、コンピューターRPGの根源というのはもちろん「ウィザードリィ」の事である。それまで数多くのシリーズが家庭用機へと移植されてきたが、全ての基本となる初期3部作の完全移植というのは一度もなされてこなかったのだ。特に、ファミコンではIIIとして移植されたシナリオ2などは、シナリオ1で育てたキャラを転送するのが大前提とした作りなので、それが容易には出来ないファミコン版では大幅にアレンジされた事もあり、ファミコンのみのユーザーにとっては興味津々だったものである。
それが、なんと1998年になって突然当時のトップシェアを誇ったPSに移植される事となった。その名もずばりの「ウィザードリィ・リルガミンサーガ」である。前述の理由により、オリジナル、特に当時は国産パソコン版と言われたPC98用をベースとするバージョンに強い憧れがあったので、これはまさに待望の移植、青天の霹靂に近いものがあった。
かなり楽しみにしていたので、もしかしたら予約して買ったのかも知れないが、もちろん発売日にすぐに購入したものである。前述のよう、このPS版は国産PC版準拠であるが、さすがにリアルタイムセーブは再現は出来なかった。よって、セーブはメモリーカードにセーブするタイミングのみとなるので、基本全滅してもセーブデータさえあれば無事である。しかし、逆に言えば安易なリセット技は難しいので、莫大な経験値を得たり、貴重なアイテムを入手したら忘れずにセーブしなければならない。
あとはWikipediaなりゲームカタログなり見て詳細を確認していただければ良いと思うが、お馴染み羽田健太郎氏の書き下ろしBGMと、ファミコン版のイラストを高解像度で再現した末弥純氏のモンスターグラフィックに加え、ファミコン版をさらに改良したUIの快適さと、まさに初期ウィザードリィの決定版と言って差し支えな出来だった。当然、レベル100を軽く超えるほどやり込んだのは言うまでもない。
そして、翌月末には待望の続編である「鉄拳3」がリリースされた。アーケード版ではPS互換基板の改良版を利用していたとかで、背景にもポリゴンが使用されており、さすがにそれの完全再現は不可能だった。しかし、それでも単なる一枚絵の背景ではなく、ポリゴンを利用し画面の動きに沿い、それでいて当然60フレームを維持しているので、まさにPSの限界を突破したかのような移植であった。
ただ、この手のゲームの難点として、ゲーム性は前作とは大きく変化出来ないというものがある。一応上下移動などは追加されたものの、やはり散々鉄拳2をやり込んだ私としては大きな違いは感じる事が出来ず、前作ほどやり込むには至らなかった。しかし、1998年上半期に発売されたこの2作のインパクトは非常に大きく、すでに斜陽であったSSに対し、PSはまだまだ全盛期である事を世に示す結果となっていったのだ。