ストリートファイターIIを愛す・その11 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

いつ頃正式発表されたかは全く覚えてはいないのだが、1992年の3月頃にはSFC版ストIIの画面写真は公開されていたと思う。当時、家庭用の大作と言えばほとんどがRPGだったので、これほどまでにそれ以外のジャンルが注目された例はかつてなかったのではないか、と言うぐらいに巻頭で大特集が組まれていったものである。

 

もちろん、当時はダッシュの話題で持ちきりだったので、初代ストIIはこの時点でもはや「旧作」に過ぎなかった。それでも、我々にとってはこのSFC版が楽しみで楽しみで仕方がなかったものである。それはもちろん、「あの」ストIIが家庭でプレイ出来るという事。これだけの事実が当時どれほど脅威的な事だったのか、これはリアルタイム経験者でなければ決して理解出来ない事ではないか、とすら思うのだ。

 

発売日は平日だったが、訳あって私の学校は休みだったので、早朝から町田のキムラヤに並ぶ事となった。当時はもちろんスマホも携帯もないので、ひたすら黙って並ぶだけであったのだが、それだけに周りの人たちと仲良くなったりする事もままあった。この時がちょうどそれであり、前後に並んでいた大学生っぽい男と、息子のために並んだという主婦の方とずっと話していたものである。

 

また、よせばいいのに友人の分も請け負う事となったので、自分の分を買った後に律儀に地元の店に並んで無事入手する事が出来た。つまり、自分のプレイを待つ事なく、人のためにまた並んで待つ羽目になったのだから、今思えばお人好しもいい所だ。そんな事もあって無事購入は出来たのだが、もちろん今のような豪華なアケコンもないので、パッドでプレイせざるを得なかったのであるが、それでも狂ったようにプレイしていったものである。

 

容量は16Mビット、つまりアーケードのちょうど3分の1であるため、キャラが小さいのはもちろんの事、立ちやジャンプのモーションさらに通常技もかなりカットされていた。BGMも言わずもがなで、PCM使用ながらほとんど同じ音色のままだ。しかし、当時は完全移植などありえないという概念だっただけに、とにかくストIIが家でプレイできる、という事実だけでも十分すぎるほどの喜びであったのだ。

 

また、アケコンはない、と触れたが、一応ジョイスティックと称したアケコンはそれなりに出回っていた。もちろん、本家カプコンからも「CPSファイター」なるアケコンが発売されたのであるが、9800円ほどするにも関わらずプラスティック制でとにかく剛性感のない出来であり、今でも非常に評価が低い。数年後中古で購入したのであるが、良かったのはファミコンにも使える事ぐらいだった。

 

なので、翌年シグマ製のアケコンを購入するまで、ひたすらパッドでプレイしていったのだが、それでも昇龍拳や立ちスクリューが出せるぐらい、コマンド精度は高かった。また、西谷氏が語る所によれば、通常技のグラフィックが削られていても、実際の判定はアーケード版と同じようにしているという事らしいので、確かに違和感なくプレイ出来たものである。