これはすでに何度も触れられている事であろうが、ストIIが他のゲームに対して圧倒的に上回っていた点と言えば、まずはその滑らかすぎるアニメーションである。「ファイナルファイト」におけるメインキャラの歩行アニメーションなどもかなり滑らかだったと思うのだが、それでも立ちポーズなどは単なる静止画だった。しかし、この「ストII」においては、ただ単に立っているだけの状態であっても、贅沢すぎるほどのアニメーションを用い、まるで本当に息をしているかのような動きを再現していたのである。
今では当たり前かも知れないが、当時としてはこれだけでも計り知れないインパクトがあり、画面を見た者たちが全てそこで立ち止まって凝視したほどである。特に私的にはリュウ・ケンの滑らかさには圧倒され、これは今見ても全く見劣りしないほどであり、画面を見ただけで息遣いが聞こえてくる感じなほどである。
そして、一応初代と言う前例があったとは言え、ストIIは全6ボタンが前提であり、当然それだけ複雑な操作が要求される。当然、当時は多くても3ボタンが普通だったので、それはそれは最初の頃は普通に操作するだけでも大変だった。普通に考えるなら、それだけでも初心者は一歩引いてしまうようなものであるが、それは決してそうではなかった。つまり、前にも説明したように、適当にボタンを叩いているだけでもそれなりにゲームになり、そしてそれでも1人目ぐらいは勝ち抜けるような難易度設定だったのでもある。
そしてそれだけ適当なプレイをしても、めちゃくちゃ面白いのだ。つまり、仮に1人目でやられたとしてもそれで嫌気が差す事などはなく、むしろ台さえ空いてれば何度でもコインを入れてプレイしたくなる。もちろん、続けてやっていればそれなりに上手くなっていき、自身の上達を肌で感じるようになっていく。そしてさらに上手くなれば、単に勝つだけでなくかっこよく、いわば魅せるプレイで勝つ事も出来る。
つまり、初心者でも上級者でも楽しむ事が出来るという、当時のゲーセンの最大のテーマのひとつをあっさりと実現してしまったと言えるのだ。これだけでもいかに革命的なゲームであったかという事を窺い知る事が出来るだろう。これは「テトリス」でもそうだったかも知れないが、テトリスはいわば未知のジャンルであったのに対し、ストIIは1on1の対戦という昔から存在する、いわば古いジャンルのゲームでそれを成し遂げたのだ。この偉業というのはあまりにも大きいものなのだ。
私がプレイした時はすでに発売から4ヶ月が経っていたが、このように新規のプレイヤーも楽しめる事からストIIはまだまだ人気絶頂であり、全く台が開かない状態が続いていた。また、当時としても一線級であるCPシステム基板のため、テトリスのように数台も仕入れる事が出来ないため、どこのゲーセンでもせいぜい1〜2台程度しかなかった事もあり、とにかくワンプレイするだけでも一苦労だったものだ。