前回、「ワールドヒーローズ2」の発売にまで触れたが、実はほぼ同時期に後のゲーム業界に多大なる影響を与えたゲームが発売されていた。当時、そのゲームを雑誌で目にしたゲーマーたちは「一体どうしてコナミがこんな軟派なゲームを」と嘆いたものだったが、そんな失望の声に反してその出来はあまりにも素晴らしく、その評価は極めて高いものであった。このゲームとは言うまでもなく、あの「ときめきメモリアル」である。
当時はギャルゲーという言葉はあまり一般的ではなく、もっぱら美少女ゲームとかと言ってたような気がするが、当然の事ながらそのルーツはPCである。この辺りはWikipediaでも読んでもらえればと思うが、「ゲームとして楽しめるぐらいに」完成度を高めた火付け役と言えば、やはり「同級生」を初めとするエルフの作品だったのではないだろうか。
確かに、PCEではある時期からギャルゲーがプッシュされ始めたのは確かであるが、当然皆が皆そのようなゲームを求めていた訳でもなかった。「アニメグラフィック再生機」などと揶揄された事もあったが、まあぶっちゃけすでに画面処理ではSFCやMDには到底叶わなかったので、BGもスプライトもそう必要ではないビジュアルシーンに必然的に力を入れざるを得なかった、というのがもっともな理由だ。なので、確かに比率としては高かったかも知れないが、別にそれだけが売れていた訳でもない。
なので、当時はまだ硬派なイメージだったコナミが、まさかこのようなゲームを出すというのは衝撃かつショックだったものである。しかも、女の子のグラフィックも当時としてはバタくさく、洗練された「同級生」の絵と比べて正直微妙だった。「こんなの売れるのかよ」というのが率直な感想であったかと思う。
しかし、私はPCエンジンFANしか読んでいなかったのだが、巻頭で特集されたのはもちろん、発売直前には別冊の冊子の付録までついているという力の入れようだった。さらに、その冊子そのものがかなり良い出来であり、面白くて何度も目を通したほどだったので、ゲームをプレイしていないにも関わらず内容には多少詳しくなってしまった。
さらに、当時のゲーメストは2ページのみ家庭用の記事があったのだが、なんと一部編集部員がどハマりしたため、見開き2ページでの大特集が組まれたのだ。これによりアーケードゲーマーにまでその知名度を広める事となったが、これだけでもどれだけのインパクトがあったか分かってもらえただろう。
当然、ゲーマーからの評価もかなり高く、PCエンジンFANのゲーム通信簿ではなんと脅威の26点超えを記録した。徳間書店の雑誌が全盛だった当時、この「ゲーム通信簿」はかなりメジャーな評価の指標であったものである。計30点満点なのだが、大体22点以上でまあ遊べる、24点以上で優秀、26点を越えれば神、のようなイメージだった。PCEにおける歴代最高は「天外魔境II」であり、次点で「SNATCHER」であったかと思う。
その名を一般層まで広げたのはやはり翌年のPS版がきっかけだったとは思うのだが、すでにPCE版の時点で神ゲー認定されていたという事である。それだけ、ときメモの登場は衝撃的だった、という事だ。