世界初のゲームサントラは、当時のアルファレコードが発売した「ビデオゲーム・ミュージック」である。そして、世界初のゲームの映像ソフトも、同じくナムコの「ゼビウス」だ。つまり、ゲームの音楽・映像の商品化にいずれもナムコ、そしてゼビウスが関わっていたという事になる。
それだけでもゼビウスの偉大さが分かろうというものであるが、サントラはともかく、当時のセルビデオの価格というのは極めて高く、そしてそれを取り扱うお店そのものも希少だった事もあって、当然の事ながら私は実物を見た事がない。内容は一応16エリアをクリアしている、との事であるが、編集もされているようであり決してプレイの質は高くないという。しかし、そうは言ってもゲームビデオの先鞭をつけたのはこの作品である事に間違いはなく、その後も多数のゲームビデオがリリースされていった。
その後、家庭用でもスーパーマリオや、そして高橋名人出演の忍者ハットリくん、そしてかのスターソルジャーのビデオなども発売されていった。メディアの露出からしてもこちらの方が知名度は高いはずなのであるが、家庭用はわざわざビデオを取り寄せなくても家でプレイ出来る、という事からも、その後のゲームのビデオ化はアーケードが主流となっていった。
1986年にゲーメストが創刊されると、その後発売されたビデオにはほとんどそのスタッフが関わって行き、同時にプレイの質も抜群に高いものとなっていった。その当時でも私はリアルタイムではないのであるが、おそらくその存在を高めたのは沙羅曼蛇やR-TYPEあたりからではないかと思う。前者は、995万7200点で終わったという伝説を持つ、元ゲーメスト編集部員のすぱいきっど大和氏のプレイが手元のコンパネも含め収録されており、これを完璧に模倣すれば1000万点も夢ではない、というほどの出来である。
実際、1面の網状細胞地帯では位置合わせが甘く、画面を切り替えた直後に爆死しているとの事であるが、その他に関しては完璧なので問題はない。そして後者のR-TYPEであるが、こちらは私は見た事がないものの、石井ぜんじ氏による神がかりのプレイは、当時のPCE雑誌の編集部たちがこぞって参考にしたという代物だ。そして、この辺りからセルビデオの価格も安くなっていった事も、普及の足掛かりとなったと思われる。
それでも、まだまだ収録時間に対するコストは高く、そのほとんどが25分程度のものであった。その常識を破ったのが、1991年にキングレコードより発売された、「グラディウスIII」と「パロディウスだ!」のビデオである。当時のハイスコアラーであるHIR氏によるノーミス1周の無編集ビデオは大変な話題となり、発売と同時に大ヒットを記録したのは言うまでもない。その好調を受けて、その夏には「ナイトストライカー」と「ワルキューレの伝説」も発売された。
このうち、前者に関しては大分後になって購入したが、撃ちまくりワンコインクリアと、全ステージパシフィストプレイ収録という究極の出来であった。これもグラディウスIIIと並び、当時を代表する伝説的ビデオのひとつであろう。しかし、そんなゲームビデオ全盛時代になっても、何故か大ヒットしながらも発売されなかったゲームがあった。それが、前年のゲーメスト大賞受賞作品である「ファイナルファイト」であった。
暴力的な内容がNGになった、とかの噂も流れたが、それならば、という事でゲーメスト自らが発売する事となった。つまり、これが初のゲーメストブランドのビデオなのであるが、一般流通のルートがなかったのかマルゲ屋と通販のみの発売となった。こちらも出来は素晴らしく、ハガーによるノーミスクリアというものだった。それ以外は慣例通り、他社発売のビデオに協力、という形を経ていたが、1993年の餓狼伝説2をきっかけとして、その後ほとんど自社ブランドで賄うようになった。そして、ここから一般流通も開始され、世の中にCD屋が増えた事もあって購入はかなり容易になっていったかと思う。
その後もほとんどが格ゲーであったが、1994年の「極上パロディウス」からはシューティングもリリースされていく。こちらは格ゲー以外では初めてのムックも発売され、格ゲー全盛の当時では異例とも言えるヒットを誇ったものだった。後年の評価ではダライアス外伝の方が遥かに上であるが、リアルタイムでのインカムは極パロの方が遥かに上だったのだ。
ゲーメストが倒産して以降は、秋葉原などで同人ビデオが発売されるぐらいのものとなっていったが、のちのPS2版「怒首領蜂大往生」や、PS3版「ケツイ」などではソフトに攻略DVDやブルーレイが同梱されてきたり、そして現在では容易にネットでスーパープレイが望めるようにもなったので、市販ソフトの役割はほとんど終わってしまった。まあそれでも、ゲームのプレイが残せないのが当たり前な当時としては、スーパープレイのビデオの存在というのは非常に価値のあるものだったので、ゲームの遺産としては極めて重要なものなのだ。