アーケードスティックのお話・その19 Qanba Pearl | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

 

昨年7月に、海外の有名アケコン通販サイトであるArcade Shockのみにおいて発売されたQanba Obsidianのノアール配置バージョンであるQanba Pearl1が、今月9日において遂に日本のAttasaからも正式発売となったので、早速ながら購入させて頂いた。

最大の特徴はもちろんそのノアール配置にあるのであるが、オールドゲーマーの方であればご存知のよう、初代ストIIのボタン配置も斜めにボタンが配列されている、後にブラスト配置と命名されるそれに近いものだった。HORIが初めてRAPを発売した時は、比較的ビュウリックスに近いものであったが、それ以降は旧筐体が廃盤となるまでは基本全てブラスト配置が基本であったかと思う。それだけ、初代ストIIのオリジナルコンパネから始まった「斜め配置」の歴史は、ゲーマーにとっては馴染みの深いものだったのだ。

 

それが一変したのはもちろんアーケード版のストIV発売時に、タイトーから発売されたビュウリックス筐体のコンパネ配置が採用されてからというものである。それにならい、ストIVとタイアップした旧マッドキャッツ製品は、鉄拳タイアップ以外のコンパネはほぼ全てそれがスタンダードとなった。HORIもそれに追随し、2009年に完全リニューアルバージョンとして、PS3用に発売された新生RAPも、完全にビュウリックスを模したものとなったのだ。

 

旧マッドキャッツ製品は、厳密にはレバーとボタンの間隔が若干広がっていたため、完全に配置を模したのはHORIのRAPが最初である。その翌年には、完全にアーケードのコンパネを模したプレミアムバージョン、通称お3万コンまで発売、翌月に発売された通常盤のXbox360用RAPももちろんPS3同様のコンパネが採用された。

 

先述のよう、ストII世代である私にとって、どうしてもこのビュウリックスというのは抵抗があったものだった。だからと言って他に選択肢もなかったので、仕方ないので使い続けてはいったのだが、そうしていくうちに完全に慣れ切ってしまい、逆にノアール配置に抵抗を感じるようになってしまったのだ。

 

以上の流れから、家庭用でもビュウリックスが完全に主流となっていったのであるが、HORIが2017年にRAPのノアール配置バージョンを発売、そして翌年1月に発売した2万円のフラッグシップである、ファイティングエッジ刃においてもノアール配置が採用された。後の廉価版のファイティングスティックや、そして昨今XboxOne用に発売されたファイティングスティックaなどにもノアール配置が採用され、いつしかノアールはHORIの代名詞的存在となってしまった感もある。まあ、海外のフラッグシップモデルは全てビュウリックス配置であるがために、その辺りで差別化をしているのかも知れないが、そういう訳で日本のファンにとってはノアール配置というのは今でも身近な存在と言えるのかも知れない。

 

そして、もちろん以上のノアール配置アケコンもすでに所有している。しかし、先述のようにビュウリックスに慣れ切ってしまっている事、そして中身が空洞で静音化対策されていないという事もあり、HORIのファンには悪いがいまやほとんど使う事はなくなってしまったのだ。

 

そして、今でもObsidianは所有しており、一時はその操作感の良さから旧Pantheraを差し置いてメインアケコンに昇格したほどなのであるが、今ではめっきり使っていない。というのは、海外フラッグシップの中ではこれだけレバーとボタンの間隔がアーケードと同じ完全にオリジナル準拠なのであるが、やはりこれだと若干窮屈に感じてしまうのだ。その辺りの事情を考慮して、他のフラッグシップは若干広がっているのであるが、私的にはこの方が合っていたがために、特にVictrix購入後はほとんどObsidianを使用する事はなくなってしまったのだ。

 

と言う訳で、もしPearlを買ってもメインで使う事はないだろう、と購入へのためらいもあったのであるが、反面前々から欲しいと思っていた事も確かであるので、品切れにならないうちに購入したと言う訳だ。そして、結果は大満足。見た目の美しさはもちろんであるが、ノアール配置が思った以上にPearlのガワと相性が良く、両手が非常に良い感じで収まってくれるのだ。

もちろん、ノアール配置である以上、同じ事はHORIのアケコンで体感済みである。しかし、先述したようにHORIのガワはファイティングエッジですらも剛性との相性がいまひとつだった事と、そして天板が平面である事も大きい。基本、アーケードのコンパネは平面が普通なのであるが、私的には手前に向かって斜め傾斜がある方がめちゃくちゃやりやすいのだ。今なお最高傑作のひとつとして名高い旧Pantheraなども、筐体の剛性と静音性は最高であるものの、天板が平面、というのが自分にとっては実は合わないものだったのだ。Obsidian購入後にそれがメインに昇格したのもそれが原因である。

 

そして、Obsidianはレバーが若干長めになるようにセッティングされていた。もしかしたらバージョン違いなどもあるのかも知れないが、少なくとも私が初めて触った時は明らかな違和感があったし、実際にメジャーで測っても明らかに標準よりも長かった。それで、レバーの台座にナットをかませて調整したのであるが、このPearlに関してはその心配はなく、完全に標準と同じ56mmを指していた。

 

そんな訳で、実はノアール配置とObsidian筐体は最高の相性であった、という訳であるが、しかしそれ以上の最大の特徴として、その外見の美しさというのがあるだろう。これははっきり言って画像で見るよりも明らかに綺麗であり、もう惚れ惚れしてしまうほどのフォルムである。多くの人はレバーボールやボタンを自分好みにカスタムするだろうし、実際に私もObsidianとVictrixの黒は味気なく見えてしまい好みの色に変えてある。しかし、このPearlに関しては一切弄る事はないだろう。Obsidianのレバーボールはメタル製で違和感あって仕方なく、真っ先に変えたものだったが、Pearlに関しては三和電子の白そのものなのでその必要もない。

 

ビュウリックス以降が当たり前の人たちにとっては不要かも知れないが、自分のようなレトロゲーマーにとって、レトロゲームをプレイするに至ってはビュウリックスよりも、やはりブラストに近いノアールの方がしっくり来るだろう。そんな人たちにとっては絶対にお勧めである。必ずや満足し、その美しさにも惚れ惚れしてしまう事間違い無いだろう。