アルミとカーボンの差 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

現在、ロードバイクのフレームで最も適していると言われているのはカーボンである。しかし、基本的にその製造には非常にコストがかかるため、エントリーモデルから全てカーボン、と言う訳にはいかない。と言う訳で、おおよそ20万円ぐらいまでの完成車はほぼアルミである。

 

アルミフレームのイメージと言えば、とにかく硬く、そして何よりも振動吸収性が悪い、と言うのがあった。2000年代中盤のTREKやGiantのアルミに乗っていた時などは、とにかく後者の印象があり、50キロ以上も走った翌日にはそれこそ上半身がガタガタになったものだった。

 

しかし、それも今や昔の話。以前も触れたように、TREKが先代のEmondaをリリースした辺りから振動減衰性能は飛躍的に向上し、2016年のモデルながら初めて乗車した時はそのスムースさには感嘆したものだった。ただ、元々現行のシリーズの中では最も山岳向きに設計されているだけあり、ゼロ加速の軽さは断トツなのであるが、その代わりに高速域での伸びが悪いというのがある。つまりは剛性感はいまひとつ、と言う訳だ。

 

加速が良い、と言う事は、イコール街乗りには向いているという事でもある。なので、基本的に短距離ダッシュを繰り返しているようなUberにも向いている、と言う事が言える。しかし、その反面たまに入る3キロ以上のロングピックなどでは、同じケイデンスにも関わらず高速域での伸びが悪い事に若干ストレスを感じる事がある。そして、前述のように確かにアルミの割には振動吸収性能が高いとは言っても、さすがにフルカーボンにはかなわない。と言う訳で、50、60キロ走っても足への負担は少ない代わりに、上半身への疲れはそれなりに来るわけだ。

 

それを解消するために、先週は2007MadoneSLで初めて1日中フルで走ってみた。すでに15年以上前に設計されたフレームとは言え、OCLV110を使用した、かつてはツールドフランスをも駆けたあの栄光のフレームである。さすがに現行のカーボンにはかなわないだろうが、それでも趣味レベルでは十分すぎるほどの性能だ。

 

それで結果だが、案の定とはいえEmondaとはまるで正反対の結果に終わった。カーボンフレームによる振動吸収性の良さもあり、上半身の疲れは劇的に改善された。そしてもちろん、ロングピックへの対応も絶大だ。ペダルの力をダイレクトに伝えるフレームは全く無駄がない。しかし、その反面ゼロ加速は当然弱い。このフレームも、ツールの山岳で通用するレベルで設計されたはずであるが、明らかに踏み出しは重い。それはプロの足を支える剛性レベルなのだから当然の話であるが、やはり剛性感とゼロ加速の軽さは引き換えなのだと実感してしまう。

 

そして、スイスイ登れるEmondaと比べると、やはり坂がきつい。前に触れたように、10速ハブの関係から、アルテグラグレードの11-34をアッセンブルしているのであるが、34TであってもEmondaの28Tよりかは重く感じてしまう。それだけに、軽いギアが生きてくるとも言えるのであるが、当然トップギア側は2T刻みとなり、高速域でのギアチェンジの負担が大きいために、それなりに足に来てしまう。

 

結論として、街乗りかつ1日中フルで稼働する事が前提であれば、やはりEmondaの方が楽だろう、と言う結論になった。個人的には、アルミでももう少しレーシーな感じのGIANTのTCRの方が向いているのかも知れないが、まあどちらにせよ街乗りとUber前提ではアルミで十分だろう。

しかし、1日中Uberを続けられる理由と言うのは、やはりロードバイクに乗ってるからこそである。そして、それがツールドフランスでも使用されたフレームだとしたら尚更だ。いくらアルミフレームの出来が良くとも、この事実にはかなわない。なので、実用性を考えたらアルミなのだが、極めて高いモチベーションを維持し、ロードバイクに乗っているという事を幸せと思い知らせてくれるという点で言えば、やはりMadoneSLにはかなわない、と言うのが今回私が試したうえでの結論である。