縦画面のゲーム環境。 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

事実上スペースインベーダーから幕を開けた日本のビデオゲーム業界、その影響があまりにも大きかったせいかその後に発売されたゲームのほとんどが縦画面の時代があった。ギャラクシアン、パックマン、ギャラガ、ドンキーコング、マッピー、ゼビウス、そしてドルアーガの塔などなど、これらの偉大なる名作は全て縦画面として発売されていた。

 

そして、上記に挙げた作品は全てファミコンにも移植された。しかし、当然家庭用のテレビは横置きのみである。よって、当然の事ながら横画面でプレイする事を前提としたアレンジ移植がなされた。ギャラクシアンやギャラガ、ゼビウスなどの縦スクロールシューティングは全てキャラ比率を調整した上での横画面となり、マッピーはワンフロア少なく、そしてドルアーガに関しては完全にマップが総入れ替えとなるぐらいに別物となっていた。

 

この中で、唯一パックマンだけは画面左3分の2のみをゲーム画面に使用し、残りはスコアと残機表記と、のちのメガドライブ用ゲームのように擬似的な縦画面テイストを出していた。これは家庭用でも上手くアレンジがなされた例であったのだが、当時の画面解像度の限界から、ファミコンでこのような画面表示が出来たのはこれと、ファミコンでは後発に当たるスペースインベーダーぐらいであったかと思う。

 

このように、縦画面のゲームをどうやって家庭用に移植するかが、ファミコン黎明期からの課題であった。ただ、当時はあまりにもアーケードとは性能差がありすぎ、アレンジ移植は避けられないものであったのと、何より私自身がまだゲームセンターに通い詰める前の話でもあるので、あまり気になるものでもなかった。

 

そんな頃、家庭で唯一最もアーケードに近い移植をプレイ出来るハードが存在した。リアルタイムであれば言うまでもないが、当時シャープが1987年に発売したX68000である。その圧倒的な性能を活かし、当時の家庭用では不可能であった「極めて完全移植に近い」アーケードの作品が多数発売された。そしてそのほとんどのソフトに、縦画面モードまでも搭載されていたのだ。もちろん、正直、当時のCRTディスプレイが縦置きに耐えられる設計になっていたかは不明なのだが、とりあえず家庭で史上初めて縦画面でプレイ出来る環境を実現させたのはX68000だった。

 

しかし、当然家庭用ではまだ不可能な時代であった。その代わり、PCEではその高解像度を活かし、一部のゲームではコマンドにより縦画面テイストな比率に変更可能なゲームがあった。具体的にはドラゴンスピリットや出たな‼︎ツインビーであったのだが、どちらも隠しモードであり、しかも後者に至っては、パッケージに表記があるにも関わらず裏技扱い、しかもマルチタップが必要という今ではありえないほどのアンチフレンドリーな仕様で呆れた記憶がある。また、家庭用オリジナル作品であるはずの、スーパースターソルジャーにも何故か縦画面テイストモードは付いていた。

 

メガドライブでは、メーカーを問わず、先述のファミコン版パックマンのような縦画面テイストが基本であった。MDの基本解像度は320x240と、他ハードのそれよりも高かったので出来た仕様であったかと思う。もちろん画面比率はそのままではないとは言え、このおかげでそれなりにアーケードに近い感覚でプレイ出来たものだった。

 

そんな家庭用ゲーム機において、初めて本当に縦画面モードを搭載したのは、1995年1月にPS用として発売された雷電プロジェクトである。リッジレーサーを始め、他のローンチが3Dポリゴンを前面に押し出していたゲームがほとんどなの対し、一応IIはその時点での最新作とは言え、正直「今雷電なの?」と思ったのは否めなかった。しかし、その答えがそれである。当時のアーケードゲームが軽く移植出来るほどの大容量と、アーケードそのままの解像度を表示出来る事を活かした32ビット機において、初めて家庭用史上における縦画面モードを実現させたのだ。

 

しかし、今とは比較にならないぐらいにテレビ番組が生活に占める割合が高かった当時、基板コレクターでもない限り、ゲーム専用モニターなど所有している人間など皆無、そもそもゲーミングモニターという概念自体がゼロと言う時代であった。なので、実際に縦置きにしてプレイしていた人間などは本当に少数であっただろう。

 

そんな時代に、全ゲーマー憧れのモニターがソニーのプロフィール・プロであった。当時、ゲーメストの基板屋の広告で見ただけであったが、29インチで298000円であったかと思う。IPSモニターは画像が綺麗な代わりにTNより高い、というのが今の常識であるが、それでもせいぜい24.5インチのフルHDでもせいぜい30000円ほどであり、当時を思えば可愛いものである。なので、いくらゲームが対応していても肝心のテレビを縦に出来ないのでは本末転倒であった。

 

もちろん、横置きのまま縦画面でプレイ出来るようなボタン設定も存在していた。つまり実質横スクロールシューティングとしてのプレイとなるのであるが、当然感覚がまるで異なってきてしまうため、実際にそれでプレイしていた人は少数だったと思われる。まあそれはともかく、この縦置きモードの搭載は、他のメーカーにも影響を与えたようであり、タイトーのレイヤーセクションや、そしてナムコミュージアムの全縦画面ゲームにも採用された。この間、コナミからも「出たな!!ツインビー」もカップリングとして移植されたが、移植に拘りの薄いコナミは縦画面モードを搭載せず、しかも横画面モードの画面比率もアーケードとは異なっていたので、ファンから見れば正直やっつけ仕事であった。という訳で、この縦画面モードは2020年1月のアケアカ版まで待つ事となる。

 

私自身は縦置きでプレイしたくてたまらなかったが、そんな余裕もあるはずもないので夢物語であった。しかし、ナムコミュージアム3が発売された頃、メガドライブテイストのドルアーガの塔の横画面モードにどうしても納得がいかなかった。右側に、そのMDよろしくスコアと宝物が表示されているのであるが、当然アーケードの雰囲気は全く伝わってこない。もちろん、縦画面モードにすればアーケードそのままの表示となるので、どうしてもそれでプレイしてみたかったのだ。

 

そこで、電源は入るものの、アンテナ部分が死んだブラウン管テレビがある事に気づいた。そのまま縦にするのは怖かったので、かつてのテーブル筐体のように、画面が天井を向くように置いて表示させてみたのだが、家庭で初めて見るアーケードそのままの縦画面表示には本当に感動したものだった。さすがに怖くてそれは一瞬だったものの、それから時間がある時などはたまにそれでプレイしていたものだった。

 

それからしばらく、2chのゼビウススレに遠藤雅伸さんが現れたのをきっかけとして、ナムコミュージアム2のゼビウスで1000万点を目指そうと思ったのだが、このバージョンもMDテイストであったので、とてもアーケードの雰囲気は再現されておらず、正直それまでまともにプレイもしていなかった。しかし、もちろん縦画面にすればアーケードとまるで同じ感覚でプレイ出来る。結果的に1000万点を達成出来たのであるが、これが初めて縦置きにしてまともにやり込んだ初めての事であった。

 

同時に、縦置きへの弊害も理解する事が出来た。具体的に何がどうなるのかであるが、画面端から次第に変色していくのだ。不具合と言えばそのぐらいであるのだが、これを解決する消磁機という機械があるらしく、業務用のモニターはこれが備わっているから大丈夫らしい。まあ、あとは当時のテレビは21インチ程度であっても重量と奥行きがかなりあるので、単純に落下などの危険性もあるのは確かである。なので、当時でも縦置きにする時は本当にガチでクリアを狙うような時限定であり、具体的にはPSのストライカーズ1945IIや、怒首領蜂程度であったかと思う。

 

そして、当時は大体2001年頃の話となるのだが、その頃はPCが飛躍的な進化を遂げており、ディスプレイ環境もCRTから液晶へとシフトしていく時代でもあった。当然、液晶であれば縦横関係ないので、やろうと思えばいくらでも縦置きが可能な時代が遂にやってきたのであるが、当時でもまだまだゲーミングという概念はなく、ディスプレイ自体もスタンド一体型がほとんどであったので、スタンドごと真横に置く、という力技しかなかった。

 

しばらくすると、360度回転可能なディスプレイも登場するのだが、まだまだアーム一体型であり、当然普通のディスプレイよりも割高であった。もちろん、前述のようにまだゲーミングという概念がない時代であったので、ディスプレイの遅延、応答速度も全くゲームに特化したものではなかった。当時、遅延とかまるで気にする事もなくプレイしていたのであるが、応答速度1msが当たり前の今にとって、当時のディスプレイはどのぐらいであったのだろうか。

 

そして今、eスポーツの認知によりゲーミングツールは当たり前、家庭用ですら専用のゲーミングモニターを使用する事も当たり前となった。ゲーム特化の反応速度はもちろんの事、ある程度の価格帯からはピポットと呼ばれる画面回転機能も当たり前についてくる。本当に手軽、かつ安全に縦画面シューティングをプレイ出来る時代がやってきたのだ。

 

正直、HD画面が主流になったXbox360とPS3以降のハードは、横画面にしてもその高解像度から完璧にアーケードの比率を再現してくれるし、そして昨今の大画面化もあって、あえて縦画面にする必然性も少なくはなってはきている。それでも、大画面だとどうしても画面まで遠くなるし、目の位置も異なってくるので、やはり縦シューをガチで極めるとなると縦画面は必須となるのだ。そう言う訳で、試行錯誤や危険を冒してまで縦置きでプレイしてきた私にとって、こんなに手軽に縦画面でプレイ出来る時代がやってきた事には本当に感慨深いものがある。eスポーツを発端とするゲーミングツールの展開と良い、本当にゲーマーにとっては良い時代がやってきたのだな、とつくづく思う。