重慶大廈的滞在事情。 | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

香港旅行において避けて通れないと言えば、その滞在費の高さだ。2014年ぐらいから香港最大手のLCCである香港エクスプレスがメジャーとなり、荷物を預けなければそれこそ往復2万円以下で行ける事もざらになってきた。地理的にはさらに身近である台湾ですら、そこまで金額的にも、そして時間帯的にもお得なLCCは存在しえないので、それも未だに香港旅行を真っ先に好む理由の一つだ。

 

しかし、行くだけなら容易いが、もちろん行くからには寝床を確保しなければならない。そこで壁にぶち当たるのが、前述のように滞在費の高さだ。ここ1年、プロテストの影響で下落傾向にあるものの、通常時であればまともなホテルに泊まろうとすると間違いなく1万円は払う羽目となる。

 

日本一有名なホテルチェーンであるアパホテルが、都心ですら6000円ほどで泊まれる事を考えたらそれはべらぼうな高さだ。しかし、せっかく行くからには一日でも多く滞在したい。そんな香港マニアにとって避けて通れない道のひとつが「重慶大廈」だ。そこで、基本的な説明に関しては以前に触れているので、今回は初めて泊まった時の体験談を語っていこうと思う。

 

2013年、結局キャンセルとなってしまったものの、当初は日本をしばらく離れる予定、イコール香港にもしばらくは行けないなと思っていたので、思い切って10日間ぐらい滞在する事にした。しかし、前述のようにまともにそれだけ泊まろうとしたらえらい金額になるし、また安倍首相が復帰した直後で次第に円安傾向にもなっていたから、それまで避けていた重慶大廈にいよいよ泊まる計画でいた。

 

さすがに日本のウェブサイトで重慶を扱っている所はないので、基本海外サイトからの予約となるのだが、大体はBooking.ComかAgodaの2択となる。どちらも使っていったが、最終的には使いやすさと見た目の良さから、前者1択に落ち着いた。選んだ宿はMaple Leaf Guest House、紅葉旅館だ。基本、重慶のゲストハウスなどは英語サイトを含めてもほとんど情報がないので、それがさらに不安をあおっていくのであるが、さすがに世界的なサイトだけありレビューがしっかりしているので、それを参照にもしていった。

 

当然、重慶大廈に泊まるような連中は、世界中から集まるだけあってレビューの大半は英語だ。日本語もなくはないのだが、せいぜい全体の1パーセントぐらいだろう。つまり、英語を理解出来なければいきなりここで壁にぶち当たる事になる。まあ、さすがにそんな連中が重慶に泊まる事なんて考えないだろうから、あまり気に掛ける事ではないのかも知れないが。

 

当時はまだ香港エクスプレスがメジャーではなかったので、桃園経由のチャイナエアラインを使用していた。ほぼ14時ころのフライトとなるので、香港に着くのは大体21時前ぐらいだ。そんな時間に、万が一予約がコンファームされていなかったら、と言う恐怖感は、正直今になっても存在する。実際、そんな事は一度足りともなかったのであるが、今でさえそうなのだから、重慶大廈に初めて泊まるという恐怖感もあり、かなりナーバスだった事を覚えている。

 

重慶までは空港からA21のバスに乗り、中間道で降りればダイレクトで行ける。この時かは覚えていないが、着くかどうかの不安から、周りの乗客に「このバスは尖沙咀まで行くか?」と英語で質問した覚えすらある。また中間道からは若干歩くのだが、バスから降りるや否やすぐに黒人の客引きが絡んでくるので、ここ最近はひとつ前で降りるようにしていた。

 

重慶は3F以上は完全にブロックで分けられており、ABCDEとそれぞれのエレベーターで行かないと上層階では決して他ブロックに行く事は出来ない。ゲストハウスはAとBに集中しており、そこは終始大混雑しているので可能な限りそこのゲストハウスは避けるのがコツだ。Eブロックに存在する、メイプルリーフを選んだのもそれが理由の一つだった。

 

ここのゲストハウスは、ほとんどがインド系や中東系、東南アジア系が運営しているのであるが、メープルに関しては地元の中華系であった。無事予約はされていたのであるが、なんの手違いからか最初の一夜だけは別の部屋に泊まる事となり、翌朝に移動する羽目となってしまった。当然、最初に出会ったランドレイディの方が英語で説明してくれたのであるが、その英語と言うのがYou, come here, tomorrow morning, OK?みたいな感じであった。

 

ゲストハウスを運営していて、片言の英語などはありえないので、自分が日本人だからか若干ブロークン気味な英語を話したのかどうかは不明なのであるが、この瞬間に、海外におけるコミュニケーションは、日本人が学校で学ぶテンプレートのような英文ではなく、あくまで「お互いにとって分かりやすい英語を話す事」の方が遥かに重要だと気付いたのだ。

 

言われるがままに、翌朝すぐに移動したのであるが、今度は夫らしき宿主の人が「Stephen?」と呼び掛けてくれた。もちろん、記帳ではローマ字の本名のみなのだが、予約時の備考でそう呼んでください、と事前に送っておいたので、以降はずっとそう呼んでくれた。日本人の名前は発音しづらいし、アイデンティティが云々とケチをつける人も居るだろうけども、やはり海外では英語名を持っておいた方が何かと便利なのは言うまでもない。

 

余程安い所はどうか分からないが、最低でも30USドル以上の部屋であれば最低限の清潔感は保たれているし、シャワーとトイレも完備されている。もちろん、香港の宿ではお馴染みの、シャワーが便座の真上にあるスタイルではあるが、最初は抵抗があっても1回でも済ませてしまえば何てことはなくなるものだ。フラットTVやエアコン、ドライヤーやセーフティボックス、そして欠かせないフリーWi-Fiも完備されていたのであるが、冷蔵庫だけはなかった。基本、その場合は共用のものが廊下にあるのであるが、プライベート用となるとあるのは稀だ。

 

記録によれば、10日で39000円ちょいとあるので、一日だけでも4000円近く払っていた事になる。もちろん、香港のホテルと比べれば格安なのであるが、重慶としては高い部類に入る。しかし、海外では確実に「サービスと価格は比例」するものであり、もしこれ以下を探そうとなれば、必ずどこかで妥協しなくてはならなくなるものだ。実際、その後はもっと安い宿に泊まった事あるものの、その度にそれを強く実感する事ともなったので、「快適に過ごしたいのであればまずはお金を払う事」と言う「世界の常識」をようやく学べる事ともなった。

 

10日も滞在ともなれば、もちろん洗濯も必須となるのであるが、さすがにそんなサービスは行ってはいない。しかし、需要のありそうな所にはかならずそういうサービスはあるもので、重慶のグラウンドフロアにはいくつか洗濯屋が存在し2回ぐらいは使用していった。もちろん、英語でお願いするのであるが、この時も「分かりやすい英語を話す」事を学んだ事から、毎回、When or what time finish?のような簡潔な表現を使用している。

 

これ以降、重慶大廈への恐怖心はほぼなくなり、また立地的にも最高である事から、2017年にお隣の美麗都大廈に泊まるまでは、ずっと重慶を使用していった。前者に移ったきっかけとしては、冷蔵庫がありながらもリーズナブルな価格だったのと、さすがにエレベーター待ちがだるくなってきた事、などが挙げられるのであるが、実際に泊まってみるとさすがに静かだなとは思いつつも、やはり物足りなさも残ったからだ。もちろん、歩いて数十メートルなので、行こうと思えばいつでも行けるのであるのだが、それでも実際にそこに泊まっていかないと以外と訪れる必然性はなかったものだった。それで、昨年2019年に、3年ぶりに泊まったのだが、やはりエレベーター待ちはうんざりだなとは思ったものの、それも重慶の名物のひとつでもあるし、そしてGFのあの異様な雰囲気も、重慶でしか味わえない要素のひとつだ。

 

さすがに女性にはお勧め出来ない場所ではあるものの、それでも重慶に泊まれたとなれば度胸もつくし、話のネタにもなるので、普通の旅行に飽き足らない人は是非一度はチャレンジしてほしいものではある。もちろん、何かあっても責任は負えないので、最低でもトラブルを自身で解決出来るレベルの英語力を要してからでお願いします。