多くの井の中の蛙の日本人は、欧米だけを崇め、近隣諸国は見下しがちである。まあ、西洋文化を取り入れ始めた文明開化の時代から、頭一つ抜きんでていたのは事実だし、戦後20年ちょいで欧州諸国を追い抜き、GDPが世界で2位であり続けた事実からも、そういう感覚に陥りがちなのは自分も良くわかる。
しかし、2020年の現在、そういった感覚は驕りでしかない。自分も香港以外はそうそう訪れた事はないので、あまり偉そうな口は言えないのだけれども、少なくとも香港だけでも東京の先を行っていた都市である事は事実なので、それだけでも日本、東京だけがアジアでナンバーワンの世界都市でない事は間違いはない。
そこで、香港渡航歴15回を誇る自分が、2011年2月に初渡航してからこれまでに、「すげーすげー!」を連呼してしまうほど、世界の先端を行っていた部分などを紹介していく。
・エアポートエクスプレス
その特殊性から、都市部よりも30キロは離れた箇所に建設される国際空港にとって、都心部への交通アクセスの利便性と言うのは欠かせない問題だ。東京であれば羽田はともかく、成田空港は開港以来、世界で最も空港アクセスの不便な空港として認識されてきた。1991年に成田エクスプレスが開通、そして2010年7月には西日暮里~ターミナル2を最速36分で結ぶ、京成スカイライナースカイアクセス線も開通した事からも、それなりに便利にはなってきているが、それでも東京駅からでも最低1時間、と言うのは不便と言わざるを得ない。
現在の香港国際空港は、返還から1年後にランタオ島の北西にあるチェクラップ島に開港となったが、さすがにイギリス植民地時代に建設が始まった事もあり、都心部へのリンクも全て計算されつくした上での設計となっている。基本的には鉄道、バス、タクシー、そしてマカオへ行く船などがあるが、初心者の場合は大抵機場快線ことエアポートエクスプレスを使う事になるだろう。そしてこの利用が非常jに簡単であり、税関をくぐりロビーへ抜けると、目の前はすぐに市内への出口があり、その正面にすでにプラットフォームが見えている、つまり初めて行く人にとっても絶対に迷わない造りとなっているのだ。
実際は出口から左へと進むと、各種ATMやセブンイレブンなどが存在するため、ここで現金引き出しや買い物などをしたりしていくのだが、この配置も非常に便利だ。市街地までは36キロほどあるのだが、時速125キロで停車駅も終点の香港駅含めて3つしかないため、わずか24分ほどで中心街へと着くことが出来る。さらに、最寄りのホテルまで無料のシャトルバスサービスも運行されているのだが、初心者がいきなり徒歩で外に出ても迷う事必至なため、これも非常に便利なサービスだ。
・オクトパスカード
ソニーが開発したFelicaが採用されているICカードであるが、日本のSuicaが2001年より開始されたのに対し、こちらは1997年、つまりは世界で初めての公共交通機関用のICカードである。当時はタクシー以外では全て使用可能であり、外国人の使用にも制限はないため、香港滞在時には最重要アイテムのひとつでもあるのだが、利用は乗り物にとどまらないのが最大のポイント。各種コンビニ、ファストフード、レストラン、スーパー、デパート、駐車場など、おおよそのチェーン店などではほぼ利用可能となっており、つまりある程度チャージしておけばほぼキャッシュレスで行けるのだ。最近の日本でも、ほぼSuicaやPASMOだけでも支払えるところまでは来たが、2011年当時ではまだまだそんなレベルではなかった。
一応、当時の日本でもiDやEdy、ナナコなどは存在はしていたのだが、まだまだ使用している人も少なく、この私自身もクレカはネットオンリーで、リアルではほぼ100パー現金だった。そんな生活から突然ノーキャッシュでの旅となった訳だから、この便利さには本当に衝撃を受けたものだった。2015年ぐらいから、私の日本における生活はほぼキャッシュレスになったのであるが、それまではまだ現金を使っていたので、香港に行く度にノーキャッシュ生活に快感を覚えたものだった。
・市内Wi-Fi
今はどうか知らないが、コンビニでは1日または1週間使用可能なWi-Fiカードが売られており、それを使うと市内のあらゆるスポットでWi-Fiが使い放題になるというものだった。おおよそ九龍や中環などに限られたが、当時の日本ではWi-Fiと言えば家で使うもの、であり、そもそもスマホ自体もまだまだ普及前であったので、この点に関してはもう勝負にもならなかった。
・スマホの普及率
2011年2月当時、日本ではまだiPhoneがソフトバンクオンリーだった事もあって、まだまだガラケーが主流の時代だった。それに対して、香港ではかなりの人々がスマホを手にしており、それに比例してFacebookなどもほとんどの人がアカウントを持っていた。2011年の半ばぐらいになって、ようやく日本でも普及し始めたが、私の香港人の友人の多くは2007年ぐらいから初めており、そのあたりでも日本と世界の剥離がうかがえた。
・SIMカード
スマホが早くから普及し始めた理由の一つが、香港では法律でSIMロックがかけられない、と言う事がある。つまり、スマホがキャリアに依存されない訳であり、気に入らなければいつでも買い替え出来た、と言う事だ。そのため、2011年当時から旺角の先達広場のような大規模な中古スマホショップはもちろん、Sham Shui Poなどでも露店が溢れていた。そしてそれに加えて、ローカルなSIMカードも売られており、SIMロックフリーのスマホさえあれば、当時から現地のSIMをそのまま使用可能だった。
私は2012年になってようやく最初のiPhoneを購入したが、もちろんSIMロック付きだったため、その年から香港へ行く前に怪しげなツールを使って現地のSIMを使用していった。2016年頃から、ようやく日本でもSIMロックフリーが合法的に可能となり、さらに香港でもディスカバーシムと言う旅行者用のSIMカードが空港で売られるようになったので、当時と比べてもさらに便利になっている。
・マクドナルド
日本では2012年より展開されている、マックカフェがすでに存在していた。それまでのマックのコーヒーのクオリティを遥かに凌駕する製品群に病みつきになり、円高だった事もあって、滞在中はここぞとばかりに飲みまくったものだった。2014年頃にはモニターで受け取るシステム、その翌年ぐらいにはセルフキオスク、そして2017年頃にはアドミラルティなどの近未来的ストアと、少なくとも3年は日本の先を行っていた。香港人は中華料理しか食べない、みたいなイメージを持つ人もいるかも知れないが、なかなかどうして現地のマックは非常に盛況であり、旺角のマックなどはいつ行っても席を確保するのが難しいぐらいに混んでいる。
・英語の普及率
香港に行く前、「香港英語が通じない!」みたいな人にあった事があるが、少なくとも観光客が行くような場所でそんな事はありえないと断言出来る。Peakで働いている人たちは、皆が皆広東語、普通話、そして英語を瞬時に切り替え、いずれもネイティブレベルで話し、尖沙咀のお土産屋のおばちゃんも普通話、英語は当たり前に話す。さすがに新界の北部になると通用度は一気に下がるが、それでもある程度のお店であれば英語話者は必ず居るし、大抵の駅員も全く問題なく話せる。返還後は母語教育により、市民の英語力の低下が懸念された時期もあったと言うが、少なくとも英会話さえ出来れば香港旅行は全く問題ないだろう。