アーケードスティックのお話・その9 Victrix Pro Fs | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

2020年1月のEVO Japan直後に遂に日本にて正式発売が発表されるも、コロナの影響もあるのか度重なる延期となり、本当に発売されるのだろうか、という雰囲気すら漂いつつあったVictrix Pro Fsだが、5月17日になってようやく発送されるに至った。

 

税込み価格で40000円を超える、つまりそれだけでPS4 ProやXbox One Xが買えてしまおうか、という、まさにアケコンとしては破格の価格ではあるものの、各方面での絶賛レビューを読む見る限りでは、さすがのアケコン好きの自分も買わずにはいられないというもの。そして、これまでにRAPはもちろん、ファイティングエッジ刃、旧パンテラ、そしてオブシディアンという各社のフラッグシップモデルも所有している自分にとって、それらのモデルと比べて果たして4万の価値はあるのか、という検証も可能だ。

 

自分が一番気になるのは、レバーを操作した時の感覚だ。HORIを除き、各社フラッグシップは全て三和電子が基本となっているので、普通に考えたら操作感覚は変わらないはずである。しかし、不思議な事に、筐体の剛性が操作性に及ぼす影響は極めて大きく、高級機とエントリーモデルでは同じレバーが組み込まれていても、まるで違う製品のように感じるぐらいにフィーリングが異なっていくのだ。もちろん、それは価格にそのまま比例していく。

 

今のアケコン業界において、1万円以下というのははっきり言っておもちゃに等しいので、基準となるのは最低でもHORIのRAPだ。重量感はそれなりにあるのだが、天板が薄いせいなのか三和電子のレバーに換装してもフィーリングはいまひとつであり、操作音も大きい。コンバーターを使わない限り、Switchに関してはほぼRAP1択なので、妥協せざるを得ないのではあるが、やはり他の高級モデルと比べると明らかな差を感じてしまう。これはRAPNに関しても当てはまるので、どちらを選ぶかはそれはもうデザインとボタン配置の好みでしかない。

 

それならもう、HORIではエッジを選ぶしかないのだが、さすがに2万円モデルだけあって、三和に換装時のフィーリングや静穏性はこちらの方が上回っている。しかし、それでも旧パンテラやオブシディアンと比べると自分的には今一つだ。三和に換装する事が前提であれば、ノアール配置に拘らない限り、オブシディアンを選択した方が無難だろう。

 

 

 

 

 

 

静穏性とフィーリングに関しては、旧パンテラは最高だ。同じ三和パーツなのに何故これほどまでにフィーリングが違うのか、と触った瞬間に気が付く事だろう。とにかくレバーを操作しているだけでも快感であり、特に細かい動きがとてもやりやすいので、格ゲーだけでなくシューティングゲームにも最適と言える。そして、ボタン一つで開閉出来るので、メンテナンス性も最高だ。欠点は、重量があるので長時間の膝置きは負担がかかる事、高さがあるので他のアケコンと併用していると違和感を感じてしまうかもしれない事、ケーブルが独特なので、万が一破損してしまうと替えが容易に効かない事、天板に痕が付きやすい事、そして販売時期が短く、さらに所有者が手放さないので中古市場でプレミアム価格がついてしまい、今だとかなり入手困難である事、などが挙げられる。Victrixがある今、4万以上も払って買う価値があるかどうかは正直言い難いのであるが、それでもアケコンの歴史史上で最高傑作である事は間違いない。

 

 

 

 

 

 

オブシディアンは、現行で買える三和モデルとしては最も無難な選択肢だろう。デフォルトだとレバー長がわずかに長く、ナットをかまして調整する必然性が生まれてしまうのが欠点であるが、それ以外はデザイン、剛性感、そして高級感と全く文句のないレベル。レバー周りのフィーリングも素晴らしく、旧パンテラを所有していながらも、オブシディアンを購入してからはほぼこれ1択、正直これでないとモチベーションが上がらないほどだった。そして、かの「ときど」氏をはじめ、プロの使用率が非常に高い事もその一端だろう。長い間マッドキャッツのアケコンを使用していたウメハラ氏すらも、ヒットボックス仕様のオブシディアンを使用しているほどであり、それだけでもこの評価が高い事がうかがわれる。あえて欠点を挙げるとすれば、よく言われているようにコードのカバーが外しづらい事、天面のボタンサイズが全部同じで、使用頻度の高いオプションボタンが探しづらい事、デフォのレバーボールがメタル製で冷たい事、などだろうが、正直些細な問題だ。と言う訳で、現時点で新品購入できるアケコンの中では、今でもこのオブシディアンが圧倒的におすすめだ。自信をもって断言出来る。

 

 

 

 

前振りが長かったが、いよいよ本題のVictrixだ。まあ、すでにいくつかのレビューが上がっているので、詳しい事はそちらを見てください、と言った感じなのだが、唯一レバーのフィーリングについて触れている所が皆無だったので、やはり私が一番気になった点と言えばそこだ。このFSPROは、Link2と言う独自の着脱式レバーを搭載しており、それが大きな売りともなっているのだが、正直私のように自宅でしか使用しないのであれば全くもって不要な機構だ。一応、試したのではあるがどうしてもフィーリングが合わず、さらにシャフトカバーが付いていないのも好みではないので、使ってすぐに普通のレバーに交換した。もちろん、これも最初から付いているので、Oリングをペンチ等で外して付け替えるだけだ。

 

そうしたらフィーリングも大分良好にはなったのだが、感覚自体はこれまで挙げたどのフラッグシップモデルよりも異なっていた。正直、操作音は旧パンテラよりかはもちろん、オブシディアンよりも大きい。しかしもちろん、RAPのようにマイクロスイッチ音まで響くような安っぽさは全く感じる事はない。筐体は航空機グレード並のアルミニウムとの事だが、それがフィーリングに大きく影響している事は確かだろう。少なくとも、これまでのアケコンで感じたフィーリングとは全く異なるのは間違いない。それが功を奏したのか、今まで一度も最終面すら到達出来なかったダライアス外伝において、こちらを使用して一発目のプレイであっさりと成し遂げてしまったのだ。まあ、最終面の開幕直後で終わってしまったのであるが、これも4万アケコンの成せる業、と言うべきか。

 

そしてアケコンのもうひとつの要とも言えるのが、入力遅延だ。一応、歴代最速との事であり、現行の市販モデルではHORIのエッジ、QanbaのDrone、パンテラEVOと同等の最速レベルと言う事になっている。しかし、RAP2017モデル以降、遅延においてはもう行きつく所まで行きついているはずなので、体感できる違いはほとんどないと言ってもいいだろう。さらに、一応、検証上では未だにUFBが最速となっているので、こちらも結局それを上回る事は出来なかった。なので、少なくともUFBをメインとしている人にとっては、反応速度による買い替えメリットは皆無とも言える。

 

天板はエッジの如く、ちょっとひんやりするのは確かだ。しかし、その分手汗が付く事は皆無なので、他のアケコンのような清掃の手間は大きく省かれる事だろう。そしてなだらかな傾斜が付いているが、これはどのアケコンにもなかった特徴であるので、最初は違和感を感じる人も多いだろう。自分はオブシディアンの傾斜がちょうど良かったので、正直違和感の方が強かったのであるが、まあ慣れの問題だ。

 

ボタン配置はビュウリックスだが、レバーとの間隔は広くあけられているのでパンテラやRAP改に近い感じだ。オブシディアンではもう慣れたのであるが、RAPプレミアムで初めてプレイした時、レバーとの間隔が狭いのが非常にやり辛かったので、この配置は個人的にはいい感じだ。

 

ケーブルはUSBC端子となっており、さらにストラップに巻き付けておく事も出来るが、前述のように自分は自宅でしか使うつもりはないので、不要なので外してしまった。

 

個人的にはこんな印象であるが、正直オブシディアンの出来が素晴らしく良いので、それが現行かつ定価で入手できる環境下において、果たして4万払ってまで買う価値があるものなのだろうか、と言うとそれは容易には判断は出来ないのが正直な所だ。少なくとも、他人にはまず勧めたいとは思わないし、アケコンに4万払ってくださいというぐらいであれば、やはり自分であればオブシディアンを勧める以外はない。

 

なので、個人的な結論としては、旧パンテラが現行ならともかく、そうでない以上はやはりオブシディアンが最高のアケコンだと断言出来る。それであえてVictrixを選ぶとなると、やはり現状最高級品のアケコンを所有しているという満足感を味わってみたい、と言う理由が一番だろう。そのぐらいのマニアであれば、4万払っても決して後悔する事はないと思うので、最高級品のアケコンを手にしていると言う所有欲を満たしたいのであれば、是非廃盤になる前に購入してください。