今更ながらレトロフリーク・ギアコンバータセットを購入。詳細はググれば出てくるとして、実を言うと2015年の発売前からこの機器には関心を抱いていた。正直、かなりそそられる商品ではあったのだが、まだPS4も持っておらず、かなりゲームプレイそのものから離れていた当時にレトロゲームのためだけに2万円強は出せなかった事、そしてマイクロSDに吸い出し可能、と言う事はつまり互換機よりもエミュレータじゃないのか、などの要因のおかげで今の今まで購入する気にはなれなかった。
特に後者には長い間引っ掛かりがあり、この機器を買うような層は少なくともネットの常時接続が一般化した辺りからはPCを経験している訳で、それならそれなりにレトロゲームに興味があればまず少なくともエミュレータでプレイしていた経験はあるはずだ。もちろん、当時はまだブラウン管が主流だった時代であり、今のようにテレビにPCの画面を映し出すのは一般的ではなかったので、あくまでPC上、と言う縛りはあったが、それでも当時のスペックのPCでも大抵のレトロゲームは動かす事が出来たので、やはり今更感は否めなかった。
しかし、そんな自分の考えとは裏腹に、互換機(便宜上)としては異例とも言えるヒット、YouTubeにも数多くの動画がアップされ、Amazonのレビューも3桁を超えるなど、やはり発売後も常に気になる商品ではあった。しかし、調べれば調べるほど、ポジティブなレビューばかりではなくネガティブな意見も多く見受けられた。その際たるものは、作りの脆さだ。今更説明するまでもないが、任天堂ディスクシステムなどもあったにせよ、当時のハードは基本的にロムカセット、またはカードが中心だ。当然、カートリッジアダプターには当時のハード同様のスロットがあるのだが、これがなんとも脆く、壊れやすいと言うのだ。
対策として、アルコールや接点復活剤などで徹底的にクリーニングすればある程度は大丈夫だ、と言う結論に至ったが、それでも初期不良や数ヶ月で壊れた、などのレポートは相変わらず散見、決して安いとは言えない機器でありながらこれほどまで脆くては、二の足を踏むのも当然と言えた。
そして、シューティングゲームファンの自分として、絶対に妥協出来ないのは操作遅延の問題だ。ブラウン管は理論上遅延がゼロなので、当時のゲームファンがこれに悩まされる事は皆無、遅延と言う言葉自体見聞きもする事はなかった。そんな我々が初めて意識したのが、PS2のグラディウスIIIだ。ドット単位の動きが要求されるこの作品において、明らかに2フレーム以上の遅延と言うのは致命的とも言える不具合だった。同パッケージのグラディウスIVはなんともなかったので、おそらくエミュレータエンジンを使用しての移植だったからに違いないが、その後のベスト盤、さらにはPSP版に至ってまでもこれは解消される事はなかった。
その後も、タイトーメモリーズのダライアス外伝やカプコンクラシックなど、もはや遅延は当たり前のものとなってしまい、前述のようにシューティングやアクションにはもはや致命的な欠点とも言えただけに、スロットの不具合が解消されたとしてもそれがある以上なかなか購入には踏み切れなかったのだ。
そんな時、今年1月にようやく発売されたギアコンバータセットが、2月になり突然Amazonで大幅値下げされていた。ヨドバシでは19020円であったが、ポイント13パーセント、しかも自分の場合はヨドバシのクレカがあるので、実質14パーセント、それを含めればAmazonよりもお得だ。ここでも悩んだが、ゲームのダウンロード販売が当たり前となった今では、さすがにわざわざハードを引っ張り出してカセットを入れ替えしてまでプレイしようというする気にはならない。エミュレータであったとしても、PCを使うよりも遥かに楽だしスペースもとらない。SFCで主流だったRPGでは遅延は関係ないし、当時のデータが残っているかも気になる。な訳で、遅延は気になりつつもとうとう購入するに至った。もちろん、アルコールや復活剤、SDカードも込みで。
初めて差したカセットは、初めて購入したファミコンソフトであるイーアルカンフーだ。当然、かなりの年季物だったので、入念に端子部を掃除。恐る恐る入れると、やはり固く、さらに読み込み不良のメッセージ。一発目でまさかの破損?の可能性もあったが、YouTubeで紹介されていた抜き方を参考にして取り出し。その後も何本か読み込み不可能なソフトはあったものの、9割は無事に読み込みに成功した。
逆に、SFCやメガドライブは、言われていたほど固くなく、むしろ簡単に取り外しが出来たほどだった。両者はほとんど箱付きで保存していたので、端子部の汚れが薄かったのが幸いであったが、それを考慮しても拍子抜けするぐらに簡単に取れたものだった。発売後からクレームが殺到したせいか、それなりに改良されているのだろうか。後日PCEやゲームボーイもインストールするが、特に問題もなく無事に読み込みを終えることが出来た。
そして、肝心要の遅延だ。色々調べた所、カートリッジアダプターは絶対に外して、コントローラを付ける。対策としてはこのぐらいであるが、やはり遅延は感じられ、特にSFCが数フレームは遅れているように感じた。TwitterにはSFCのグラディウスIIIでも全然感じられなかった、とあったが、少なくとも自分が感じる範囲ではそれはありえず、確実に数フレームの遅延が発生していた。スーパーマリオワールドも、「衰えの可能性もある」なんて意見もあったが、こちらもはっきりとわかる範囲でジャンプのタイミングが遅れていた。元々処理速度の低いハードなだけにシューティングゲームは多くはなく、RPGが主流なのは幸いではあったが、とりあえずSFCに関してはその辺の割り切りは必要と感じた。
遅延の少ない順としては、PCE>>MD>FC>GB>>>SFCと言った所であろうか。しかし、シューティングでは遅延しても、MDソニックやFCの初代マリオなどは違和感なかったし、多少ゲームに依存しているのか、それとも単にシューティングは入力がダイレクトなので感じやすい、だけなのか、そこまでは分からない。ただしどのハードにも遅延は確実にある事は間違いない。
ちなみに、テレビは2008年のパナソニックのプラズマテレビだ。これまで遅延はほとんど感じなかったので、当時の液晶テレビのレベルと比べたら確実に遅延は少ない。しかし、ブラウン管と比較した時やはり1フレーム程度の遅延は感じたので、思い切ってレグザエンジンNeoを積んだハイセンスのテレビに変えてみたが、公称0.83mcの遅延を達成している、と言う事で、確かに早いとは思えたが、それでもレトロフリークの遅延を解消するまでには至っていない。オーディオレイテンシーを入にすると言うのもあるが、正直あまり効果は感じられなかった。
こうしてみると非常に残念ではあるのだが、それでも私は後悔はしていない。HDMI720Pにスキャンラインを付けたHDの映像は、当時のRGB出力を思い起こさせそしてこれが非常に綺麗だし、低音強調も出来るサウンドもクリア極まりない。コントローラもPS4のものがそのまま使えるし、もちろんRAPも使用可能だ。さらに驚くべき事は、半分ぐらいのバックアップのデータがそのまま残っていた事だ。ドラゴンクエストIIIが発売されようとしていた頃、森田将棋などで採用実績がありながらまだ未知の存在であったバッテリーバックアップ、果たして何年持つのか、と言う質問がファミマガ誌上に掲載され、それは5年との事だったが、何度も何度も呪いの音楽にさいなまれながらも、なんと最後にプレイしていた記録が未だ健在だった。私は発売日に購入出来たので、つまりは31年もの間持った、と言う事だ。その他はドラクエIV、未発見の初代を除くFF全シリーズ、そしてファミコン版ウィザードリィと、伝説のタイトルの大半はそのまま残っていたのだ。
残っている以上、さすがに最初からプレイする気は起きないと言う弊害こそあれ、まさか発売して30年近く経った今、レベル上げの続きを行えるなど当時はまるで想像も付かなかったものだ。
と言う訳で、家に眠ったレトロゲームが数多くあるのであれば、個人的には絶対にオススメだ。もちろん、今買うのであれば、最後発で色もかっこいいギアコンバータ付きをお勧めしたい。