海外盤DVDコレクション歴 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

今ではすでに1世代前のメディアとなってしまったものの、未だ中古や廉価版などで需要が止むことはないDVDビデオ。1996年に登場したDVD、長らく知る人ぞ知るメディアに過ぎなかったDVDを、一気にメジャーな存在に押し上げたのは、言うまでもなく2000年3月に登場したプレイステーション2だ。

PS2発売直後から、市販のDVDビデオの売り上げは急上昇、それまで未だ主流だったビデオテープを一気に抜き去り、レンタルビデオ屋の店頭からも瞬く間にビデオが消え、1年後にはほぼDVDに入れ替わった。その事実から分かるよう、PS2がDVDを爆発的に普及させた最大の要因である事は歴史的事実であるが、実は、リアルタイムで覚えている人しか分からないかも知れない事実として、初代バージョンにはちょっとした不具合があった。

後期は分からないが、少なくとも初期のバージョンのPS2では、本体のみではDVDビデオの再生は不可能であり、必ず付属のユーティリティディスクから、DVDドライバをメモリーカードにダウンロードする必要があった。実は、その最初期のVer1.00において、ある操作をする事によってリージョンプロテクトを無効にする事が出来たのだ。

経緯などはググれば詳細が出てくるだろから割愛するが、日本はリージョンコード2、映像タイプはNTSC、つまりDVDディスクが両方ともそれに合致しない限り、決して他のDVDは日本のプレイヤーでは再生出来ないようになっている。しかし、リージョンコードを無効にさえしてしまえば、同じNTSCのディスクであれば、米国のリージョン1のDVDも再生出来てしまう、と言う訳になる。

なんとなくこれはかなりお得感があるように思えるが、実際のところ、この当時はさして大きな問題にはならなかった。ゲームには関係ないし、そもそも、国内のネットショップすら整備されていないその当時に、わざわざ米国から個人輸入までして買おう、なんて酔狂な輩はいなかったと思う。一応、海外のソフトを扱う販売店なども新宿にありはしたが、正直ぼったくり価格であり、余程のものでない限り買う人は少なかったと思う。

それが、次第に国内でもマルチリージョンプレイヤーの需要が高まってきたのは、やはり「千と千尋の神隠し」の「赤い問題」がきっかけだったと思う。発売元は、散々な言い訳をして、この色調が正しいとして譲らなかったが、後のフランス版や、翌年のアメリカ版がそうでなかった事からして、その主張はあからさまな嘘だった、と言う事が露呈されてしまった。しかし、それでも国内で修正版は、数年前の新装ジャケット版がリリースされるまでおあずけであったので、私も含め納得いかないユーザーは、わざわざ北米版を購入していったものだった。

大体2003年春頃の話になるが、この頃になると日本語でアメリカから注文可能なサイトもあったし、もちろんアマゾンからの個人輸入も可能、またヤフオクなどでも売っていたり、さらには親切な事に輸入代行してくれる人までも居たりした。プレイヤーも、時を同じくして中華製や韓国製など、コマンドでリージョン切り替え可能なプレイヤーが、ドン・キホーテなどを中心に一気に販売されていき、さらに1万円台でもプログレッシブ対応が当たり前となっていったので、前年までと比べると購入のハードルは一気に下がっていったのだ。

ざっとこんな感じではあるものの、私を含めた香港功夫映画ファン、特にブルース・リーの信奉者は、実は前述の話よりももう少し早く海外DVD需要が高まってきたのだ。おそらく、ほとんどのブルース・リー信奉者にとって、最初に購入したDVDは「燃えよドラゴン・ディレクターズカット」だったと思う。98年にVHS版も発売されており、もちろん私もすでに購入して大満足であったものの、それでもDVDならではの高画質、ビデオ前半に収められていた特典がいつでも視聴可能、そして何より、英語のセリフが字幕でそのまま表示可能、つまりブルース・リーが何を言っていたかが100パーセント理解出来る、これらのアドバンテージが揃って購入しない理由は存在しなかった。

当時ならではの両面1層ディスク、と言うのが煩わしく感じたものの、前述の事から、DVDビデオの目新しさも加わり、おそらくほとんどの人が大満足したと思う。もちろん私もそのひとり。その結果から、おそらく大半の人は以前の香港主演作品にも食指を伸ばしただろう。しかし…私は「ドラゴンへの道」をレンタルしたのだが、ザラザラな画面に字幕は日本語だけ、かろうじて英語音声があるのが利点ぐらいで、これならポニー版のビデオでもいいや、ぐらいの悲惨な出来だった。同じビームからリリースされていた「ドラゴン危機一発」と「死亡遊戯」も同様であり、「ブルース・リーの神話」などはVHSと何ら変わらぬクオリティだった。当然、いずれの作品もワイド非対応のLB。

最後発で、香港メディア・アジア版をそのままパッケージ変えで販売していた「ドラゴン怒りの鉄拳」は、LBながらビームよりも遥かにマシな画質に多言語・多音声、そして「死亡遊戯」の未公開映像と、こちらは買う価値はあったものの、それでも燃えよドラゴンに比べたら足元にも及ばないものだった。またPALベースなので、NTSCながら4パーセントの早回しも痛かった。

そんな国内版に不満タラタラであったある日、ユニバーサルレーザーの香港盤を1枚2800円程度で販売している、国内の業者を見つけた。現地の相場はすでに1000円ぐらいだったのだが、当然そんな事は知る由もなく、当時の国内DVDは総じて高価だった事から、「ブルース・リーの神話」と「ドラゴンへの道」の2枚を購入していった。画質はLBながら、国内版よりも遥かに綺麗だったものの、後者は字幕に不具合があり、さらに英語音声が未収録だった事から、満足とは程遠いものであった。

その頃、それまでほとんど知る事の出来なかった、ブルース・リー映画の公開当時の様子などを、ネットでようやく知る事が出来たのだけれども、同時に燃えよ以外の全ての香港主演作品が「英語版」で公開されていた事を知った。私自身も、「ブルース・リーの神話」が英語版ベースであり、すでに日本のビデオでは標準となっていた「広東語版」よりも格好いいな、と思っていただけに、私自身もリアルタイムの方たちと同様、英語版への欲求が一気に高まっていった。

ようやくここに来て本題的な感じであるが、当時英語版で双璧をなしていたのが、アメリカのFOX盤と、イギリスの香港レジェンド盤のふたつだ。前者は1999年と言う、DVD黎明期の発売であるせいかLBと言う欠点こそあるものの、完全にアメリカ公開オリジナル盤に加え、当然英語字幕も完全収録、と言うのは大きな魅力、まずは最初に抑えておくべき製品だった。

そして後者の香港レジェンド、こちらはメディア・アジアが数年かけたと言われる完全レストア・リマスター盤であり、もちろん全てワイド画面対応。言語は中には新録音もあるが、ブルース・リー作品に関しては当然オリジナル英語音声完全収録、超格好良いアニメーションまでするトップ画面、超充実した特典やHKLオリジナルの予告編集など、まさに決定版に相応しい超豪華な作りであった。

イギリスは同じリージョン2ながら、PALなのでこちらもそのままでは再生出来ないものの、パイオニアやビクターのプレイヤーはほとんどが自動変換に対応しており、それさえ持っていれば、わざわざリージョンフリーのプレイヤーを買わずに済む、と言う利点があった。それでも4パーセントの早回しは修正出来ないので、それが唯一の欠点ではあったのだけども、前述の豪華さに比べたら些細であるし、何より当時のNTSC圏で英語のリマスター盤と言うのは皆無に等しかったので、英語版と言ったら欧州版に頼るしかなかったのだ。

その頃になると、海外サイトからそのまま購入、と言うのも慣れてきたので、中には「スーパーも英語な完全な国際版」が収録されている、との事で、おおよそ一般的日本人には縁の遠い「スウェーデン盤ブルース・リーボックス」まで購入した事すらある。当然、全体的なクオリティはHKLにかなわないものの、それでも「ドラゴンへの道」と「ドラゴン怒りの鉄拳」の始めて見る英語のタイトルバック、特に真っ黒な後者には感動したものだった。

もちろん、その波はブルース・リーのみでは収まらず、全部でこそないがジャッキー・チェンやジェット・リーの映画などもほとんど個人輸入で見て行った。特に、プロジェクトAやワンチャイ2なども、オリジナル英語音声だったので、当時はもちろん2016年の現在ですら貴重なバージョンだ。

また、アマゾンなどの個人輸入であれば、時間こそかかるものの代行のような余計な諸費用は掛からないので、送料含めても日本版より安い事がほとんどだった。よって、当時は日本版しか知らない一般的日本人よりも、大分その恩恵を授かっていったと思う。特に、エヴァンゲリオンのDVDボックスなどは日本では2万円ぐらいしたかと思うが、アメリカ版のプラチナボックスはTV版全収録ながら日本円で合計6000円程度、もちろんリマスターで英語・日本語両音声ありと、ほぼ全てにおいて国内版を上回る出来と価格だった。

そして、ブルース・リーの英語版DVDにおいては、2005年のアメリカ版ボックスにおいてひとまず一段落付くことになった。ベースはフォーチュン・スターの香港盤であるが、画質はさらにレストアがかけられており当時の最高峰レベル、もちろん英語音声も、余計なSEこそ付随されているものの、基本的にオリジナル完全収録、まだHKLから「怒りの鉄拳」と「危機一発」のプレミアムエディションこそ発売予定だったものの、とにかく本編に関しては一段落した訳だ。

そして、翌年HKLレーベルが閉鎖されると、2004年をピークとする、自身の海外版ペースも次第に落ちていき、圧倒的に国内版より安いWWEのレッスルマニアのDVD・ブルーレイを購入していったぐらいだった。これに関しては、日本版の3分1程度の価格に加え、何故か国内のアマゾンでも用意されているので、買わない手はなかった。

2010年以降、香港映画のメディア化の権利を得たパラマウントが遂に本気を出し、2011年にはLDからの映像をつなぎ合せた「日本公開復刻版」が特典としてジャッキー・チェンのブルーレイに収録、そしてそして、2012年にはとうとうブルース・リー作品においても復刻を展開、さらに「怒りの鉄拳」と「死亡遊戯」に関しては、奇跡的に現存していたフィルムをレストアして収録と、それまで冷や飯を食わされていた日本のファンを狂気させた。これら商品が発表された時の衝撃と感動はこの上なく、大げさではなく生きていて良かった、と実感したものだった。

翌年以降も、ジャッキー・チェンのプロジェクトA、スパルタンX、ポリス・ストーリーそして福星シリーズなどにおいても、当時のオリジナルフィルムを収録と、我々香港映画ファンにおいてパラマウント様に足を向けては寝れない日々が続いた。よって、ここ最近、少なくとも2000年代以前においての作品で海外盤を購入する事はほぼなくなったものの、それでも「葉問」の英語音声目当てなどで北米版を購入する事は珍しくはない。特に、ブルーレイは日本もアメリカも、そして香港もリージョンAなので、PS3をそのまま使える事は何よりのアドバンテージだ。よって、価格、そして英語音声が存在する限り、私が海外盤を購入しなくなることは半永久的にないだろう。