前回綴ったよう、私的には香港島サイドは好んで足を伸ばさない場所だ。しかし、これも前回綴ったよう、Causeway Bayなどは交通の便も良く、そして何といっても「そごう」もあるし、もちろん中には日本食レストランや書店まであったり、そして近くにはお気に入りの露店などもあったりするので、今でも滞在中に1度は足を運ぶようにはしているので、全く縁がないと言う訳でもない。
しかし、香港島は決してメインとなる北部だけではなく、山を挟んで南側にも多数街は存在する。イギリスに真っ先に割譲された香港島らしく、南東部にはいくつかの西洋人街的な街が存在するのだけれども、その場所にリンクしている公共交通機関はバスしかない、しかもうねるような山道を行き来するため、乗り物に弱い人にとってはまさに難関、まるで地元民以外の侵入を阻止しているかのような趣すらあるのだ。
一応、その代表格であるRepulse BayとStanleyは、地球の歩き方でも詳細に解説されているのだけれども、やはり上記理由によって旅行者が行き来するには難易度が高く、さらに日本人にとっては言葉の壁もあるせいか、これまで両地点にもそれなりに足を運んでいるにも関らず、これまで一度も日本人、日本語を目に耳にしたことがない。
私自身、2度目の香港において、まだ不慣れなバスにもめげず、地球の歩き方とにらめっこしながら訪れたものの、やはり次第にその回数は減っていき、中には一度も訪れなかった事さえあった。別に、ここを訪れずとも十分香港はエンジョイできるし、やはり何より交通の不便さが一番の理由だ。バスの本数自体は多いので、慣れれば金鐘駅前のターミナル付近からでも行けるし、運よく急行バスに乗れれば20分ぐらいで着くものの、やはり個人的に長時間のバスは厳しい。特に、Stanleyなどには西洋風のレストランなどが多数存在するものの、帰りにそのバスに乗らざるを得ないと思うと、どうしても当地で食を取る事にためらいが出てしまう。よって、南側は北側に比べて、相当な時間や覚悟がない限り訪れる事はなくなってしまった。
それでも、2回に1回程度の割合では訪れている。では、そこまでして訪れたくなる、と言う明確な理由とは何か。それは、すでに香港島ですら珍しい西洋の雰囲気を味わいたいから、に尽きる。マカオなどでは、セナド広場のように割と簡単にポルトガル的雰囲気を味わえる場所があるのだけれども、開発の激しい香港では、植民地支配開始当初の建物はほとんど現存しておらず、かの有名な中環のガバメントオフィスがあるぐらいで、それらしい雰囲気を味わうのは実はなかなか難しいからだ。
それに対して南東の西洋人街では、第1言語はまず英語。現地では常に広東語で話しかけられる私も、ここでは香港人の店員ですら英語で話しかけてくる。つまり、香港特有の言語ストレスをここでは一切気に掛ける事はなくなる。これは非常に大きなアドバンテージであり、いつでも何処だろうと英語が問題なく通じる、と言うストレスの非常な軽減に繋がるのだ。
そして、両者共に書店が存在するのだけれども、いずれも英語の書物専門。今でこそ、尖沙咀のハーバーシティに巨大なページワンが出来て以来、洋書の入手はかなり容易になったものの、以前は日本では入手困難な英語による香港関係の書物を探し求めるだけのために、ここを訪れたりしたものだった。
まあ、実際には知り合いも特に居ないおかげで、買い物ぐらいにしか英語は使わないし、むしろ重慶大廈に泊まれるようになった今となっては、無理して使う機会を求める必要もなくなってしまった。さらに香港であるにも関わらず西洋人が占拠しているおかげで、東洋人として何か複雑な気持ちにさせられる事も確かなので、ページワンが尖沙咀に出来た今となっては足を運ぶ意義がなくなったもの事実。
西側、地元香港人大好きテーマパークの「海洋公園」側には、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」でもロケ地として使われ、そしてかの有名な海上レストラン「ジャンボ・キングダム」がたたずんでいる「香港仔(Aberdeen)」が位置しているが、こちらに関しては観光的なものがサンパンと呼ばれる例の小舟ぐらいしかなく、しかも60HKDぐらいし結構高いので、結局乗る事もなければ、アバディーン自体にも4年ぐらい遠ざかったままだ。もうすぐ、海洋公園経由のMTRが出来れば行きやすくなると思うので、多分それが出来たらまた行くかも、ぐらいだろう。
まあ、私が香港島を好まない理由としてはこんな感じなんだけども、それでも当然の事ながら一度も足を運ばない、と言う事はありえない。香港に来たら、スターフェリーは欠かせない乗り物だし、もちろんビクトリア・ピークの存在が何よりも大きい。残念ながら、近年は大気汚染の影響から、クリアな夜景を望むのはなかなか難しく、よって昨年は一度も山頂にはいかなかったものの、完全な夜景時は未だ言葉が出ないぐらいの美しさを誇るし、やはり未だ香港迷には欠かせない場所のひとつなのであります。