NYCミュージカル体験記。 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

NYCを代表するエンターテインメントと言えば、まずミュージカルを思い浮かべる人が多いと思う。まさにそれは正解であり、ヒルトンホテルからブロードウェイを南下していくと、そこには無数のミュージカルの看板と劇場がずらりと並ぶ。

しかし、当然の事ながら、私自身まるでその手のものを理解する感性に乏しく、それらを目の当たりにしてもまるで見たいとも思わなかった。しかも、安くても大体50ドルぐらいはするし、とにかく生活費以外の出費を極力抑える事が最優先事項だった私にとって、関心があるとは言えないものに対してお金を費やす余裕などまるでなかったのも大きな理由だった。

私の訪米直前から、ちょうど渡辺謙主演の「キングアンドアイ」が始まっており、日本人がミュージカルの本場で英語で主役を演じる、と言う事から、それはそれなりに関心を抱いたものの、会場のリンカーンセンターは1000人ちょいのキャパシティしかなく、しかも超話題作だけあって500ドルは当たり前のプレミアム価格となっては手の出しようもなかった。

しかし、ツアーの方々たちからのチケット申し込みはそれなりにあったので、劇場内のチケット売り場には何度も訪れる事が出来たのだけど、個人的にこれはそこそこ好きなお仕事の一つだった。まず、劇場のほとんどがタイムズスクエア周辺にある事。食事やトイレに困らない、と言うのもあるけど、単純に世界一華やかな場所のひとつに居て気分が高揚しない人はほぼいない。そしてもちろん、短時間とは言え英語を使う事も出来て難易度も高くない。そんな理由で、チケット購入はいつも二つ返事で行っていった。

前述のよう、ミュージカルはNYCの最大の目玉のひとつだけあり、何となくチケット購入も大変、なイメージがあるかも知れない。実際、自分もそうだった。確かに、数日滞在の旅行客にとっては、都合の良い曜日が取れない事もあるかも知れないし、また最初は場所も良く分からないかも知れない。さらに、当然英語オンリーのため、座席指定など難しい面もあるだろう。ただ、それらの条件をクリア出来ていれば何てことはなく、ほとんどの場合開場前にカウンターに行けば買う事は出来る。

大体、1階席のオーケストラか、2階席のメゾネに分かれているので、座りたいを直接言って指定する。当然、前者の方が値段は高めだ。価格表はほぼカウンターの上に表示されているが、メジャーな作品は、チケットマスターなどでディスカウントのバーコードをプリントして、それを見せるのが手っ取り早い。基本的な傾向としては、ロングラン作品は価格が抑えめであり、当然人気作品はそれなりにする。

他には、タイムズスクエア前のtktsと言うブースにおいて、当日午後2時ぐらいから売れ残っている当日券が大幅ディスカウントで売りに出されるので、それを待つ手もあるものの、当然長時間並ぶ羽目になる。個人的に4時間とか並ぶぐらいなら、多少お金を払ってもその時間を有効に、と言う考えなので、一度も使った事はなかった。さらに時間に限りがある旅行者にとっては辛いだろう。

以上のように、しばらくはチケットを買う事しかしてこなかった訳だけども、終わりに近付くにつれ、次第にせっかくNYCに来たのだから少しは体験していこう、と思うようになった。作品に関しては、とりあえず知名度と価格から、オペラ座の怪人と、昨年9月でフィナーレを迎えたマンマ・ミーアの2つを見る事にしていった。

最初に見た作品が前者だったのだけれども、ストーリーも予習してないし、英語もほとんど理解出来ずで、正直な所全く話が理解出来なかった。正直、これはTOEICのリスニングがどうとかの言う次元ではなく、ネイティブ並のリスニング力がない限り、つまり第2言語として中学以降から英語を学んできたほとんどの日本人にとっては、最初から理解はほぼ不可能だろう。よって、これに関してはほとんど雰囲気を体験してきた、だけで終わった。

しかし、2回目のマンマ・ミーアは、ABBAの曲を聴くだけで楽しめる、と言う触れ込みだったので、期待していったのだけれども、セリフこそ完全理解は出来なかったとは言え、歌があまりにも素晴らしく、休憩中に思わずCDを買ってしまったほど感動してしまった。後半はそこまでではなかったものの、やはりフィナーレのメドレーは素晴らしく、「人間が一番感動するのは、人間がする事」と言う事実を改めて実感させられた。

これに感動したおかげで、もうひとつだけ見ておこう、と言う事になり、毎公演チケットが完売の大人気作品、ウィキッドを見る事にしていった。さすがに大人気だけあり、ディスカウントなどと言うものはなく100ドルぐらいしたものの、ボスからのお小遣いでまかなった。

舞台装置や会場のスケールは期待に違わず超豪華だったものの、やはり理解の難易度は高く、またグッズもやたらと高かったため、残念ながらこちらはマンマ・ミーアほど楽しむ事は出来なかった。しかし、3作品を通してみて、やはりエンターテインメントと言う世界ではアメリカには絶対にかなわない、その真髄と言うものを嫌と言うほど理解も出来たので、終わった後はもっと早く見ておけば良かったかな、と後悔もしたものだった。

また、最初に触れたキングアンドアイに関しても、チケットは高くとも入手不可能と言うまではなかったので、せっかくの渡辺謙主演だったのだから、多少高くても見ておけば良かった、とこちらも後悔の念が生まれてしまった。まあ、滞在時の金銭事情を考えたら仕方のない事なんだけども、ある程度お金に余裕がある短期旅行であれば、後悔のないようお金を使うべき、とは思うようになった。