ここ数年のLCCの台頭により、香港旅行がさらに身近なものになってきた。
私が初めて香港に足を運んだ2011年2月は、まだLCCそのものがさほどメジャーでもなく、基本的に香港に行くにはフルキャリアを選択するしか方法はなかった。香港と言えばまずはキャセイパシフィックであり、アジアを代表するキャリアだけあって、サービス、運行時間帯ともに文句の付けようがないのであるが、平均6万円近いチケット価格では、なかなか私レベルでは気軽に買えるものではなかった。
私の知る限り、フルキャリアにおいてもっともリーズナブルなのは、「チャイナエアライン」だ。台湾・桃園経由となるため、待ち時間を含めると7時間ほど費やしてしまうものの、場合によっては4万を切る場合もあるため、上記のキャセイに比べると大分割安と言っていい。機内サービスも申し分なく、台湾人アテンダントも基本的な日本語会話は可能、もちろん機内エンターテインメントもエマージェンシーの案内も日本語ありと、英語が苦手な日本人にとって何の不満の出る所もない。
しかも、当エアラインは美人が多いとのもっぱらの評判。もちろん皆が皆そうではないものの、私が感じた限りではかなりの美人率と言っていい。じっと座っているだけの機内、それだけでも飛行機に乗っていると言う楽しみが増すものだ。
ただし、多少エアラインについて詳しい人ならご存知だろうが、CAは事故率が非常に高いと有名だ。実際、日本でも名古屋や沖縄でも最悪レベルなインシデントを起こしてしまっている。原因は、いちからパイロットを育てるのを怠り、軍人上がりのを安直に起用してしまっていたため、とのもっぱらの噂であるが、スカイチームに加入以降はそれらもかなり改善されているようであり、少なくともここ10年近くにおいて、日本近辺で重大インシデントはないように思える。私もそれを知り、最初は搭乗を渋ったものだけれども、毎日数回日本-台湾間を飛んでいるにも関わらず、ここ数年は特筆すべき事故は起こしていないから大丈夫だろう、何より安いし美人も多い、との事で、2012年の秋以降はほぼ全てCAを使用している。もちろん事故や大きな遅延はない。
そして、最初に触れたよう、ここ数年で一気に各社LCCが勢力を伸ばしてきた。その草分け的存在と言えるのが、関空を拠点とするPeach Aviationだ。関空-香港間を2万円台と言う、当時としては破格な価格を設定し、日本におけるLCCの知名度を上げるのに一役買ったと思う。サービスにうるさい日本人、LCCのコンセプトを理解もせずに利用し、最初のうちはクレームも大分あったようだが、浸透した今となってはそれも落ち着いた事だろう。
しかし、長きに渡り関空のみだったため、関東圏の人間には無縁の存在だった。よって、私的には先述のように、ほぼCA1拓だった訳だけども、この2年で香港エクスプレスやジェットスターなども参入、特に前者は頻繁なセールを行っているため、運が良ければ往復1万円台、しかも羽田空港から行けるようになった。もちろん、LCCである以上客にも我慢を強いられる事も多いのだが、レビューを見る限りではそうそう大きな不満もなく、安全性に関しても高い評価を受けているようであり、当面はLCCトップの座はゆるぎないものとなるだろう。
以上のように、ここ数年のLCCによる価格破壊の影響により、香港に行く事だけを考えたら、大分ハードルが低いものとなってきた。それにより、最近目にする0泊の「弾丸旅行」もやろうと思えばやれる事はないだろう。しかし、大抵の場合は香港に数泊はする事となる。それを考慮した場合、実を言うとまだまだ香港旅行は気軽に行えるものではない、と気付かされる事になる。何故か?そう、香港のホテル価格は、アジアでは東京、もしくはそれ以上かも知れないぐらいにべらぼうに高いのだ。
元々観光地としての人気が高いのに加え、近年の規制緩和による中国人旅行客の激増、それにより、ただでさえ土地がなくホテルが少ない香港、供給が完全に需要に追い付かなくなってしまっているのだ。
私が始めて香港に降り立った2011年2月、ジョーダンに位置する初心者向けホテル、BPインターナショナルの1泊の価格は7100円だった。しかし、前述の理由と当時より価値が大幅に下落した円相場の影響もあり、今日では確実に倍以上、シーズンによっては1泊2万円は行ってしまうだろう。新界に位置するホテルであれば多少は安いだろうが、それでも1万円を割る事はない。楽天などで見つけられる、モンコックなどに存在する格安ホテルであれば、それ以下で泊まれる可能性は高いだろうが、価格とつりあわない部屋の狭さ、立地の悪さに辟易するだろう。
よって、香港まで格安で来れる事は可能になっても、普通のホテルを使う以上数日で軽く数万は吹っ飛んでしまうため、結局他のアジアの国々よりかは未だに割高となってしまう。しかも、近年は大気汚染や公害の影響により、あまりにも美麗で有名な夜景も、美しく見れる機会がかなり少なくなってしまっている。今でも香港最大の売りとも言える夜景、それが見れないとなると、数万かけて香港に泊まる意義もないと言うものだ。
そんな劣悪なホテル事情であるが、私の場合は少なくとも6泊、多ければ9泊は香港に行くたびに泊まるようにしている。もちろん、10万円以上軽く払えるほどのお金がある訳でもないのに関わらず、だ。では一体どうしているのか。その答えが、尖沙咀のもはやランドマークである重慶大廈に代表される、基本バックパッカー、貧乏旅行者向けの「ゲストハウス」だ。