★ある日のみんな
「そんにゃに落ち込むにゃよ〜」
涙をぽろぽろとこぼすヒトの分身であるケイ氏を小さな黒猫であるシャケオは上目遣いに見上げながら、ケイ氏の肩をポンポンとたたいた。
「メダカとはいえ、小さなひとつの命が消えたんだよ?…これが悲しまずにいられると思う?」
ケイ氏は目の周りを赤くして、ジーンと鼻をかんだ。
「おりもさ〜、友達のバッタが死んだ時に悲しかったよにぃ」
シャケオよりさらにチビなグレー猫のニャミオはケイ氏のそばでしみじみとつぶやいた。
「いくら学校の水槽が過酷な環境だったとしてもね〜、そのヒメダカはお年寄りだったのよ。最後はゆったり過ごせて嬉しかったって言ってたわよ」
シャケオとニャミオよりはお姉さんだけれど、まだ子猫の面差しであるロシアンブルーのニャミが、しっぽをしならせながら言った。
「ケイ氏にありがとうって伝えてほしいってね」
「えっ?そう言ってたの?」
「そうよ〜。そう言ってたに決まってるじゃにゃい」
ぱっと顔を上げたケイ氏に、ニャミはひげをピンピンさせながら自信満々に言うのであった。
「そうかなあ?」
「そうよ〜、そうに違いにゃいわ」
「でも、病気になって苦しかったんじゃないかな…、すぐに気づいてあげることも出来なかったんだよ?」
「苦しかったかも知れないけど、それでも気づいてからは、おうちに連れ帰って大切にしてくれたことは、べつのおはにゃしでしょ?お水を替えて、お塩を入れて、病気を治そうとしてくれたことまで、悪く思うようなメダカじゃあにゃいわよ」
「そうだにゃ、元気だせよ」
シャケオが、くにゃくにゃとくたびれたひげをピンとさせようと伸ばしながら、目をまん丸にして言った。
「しょうだよ〜〜(そうだよ〜〜)、あのバッタくん、元気かにゃあ…」
「元気にゃ訳にゃいでしょ、死んじゃったって言ってたじゃにゃい」
ニャミがすかさず突っ込む。
「しょう(そう)だった、おりが間違えてふんづけて死んじゃったんだ!」
「「「マジか〜?!」」」
ニャミ、シャケオ、ケイ氏の声が見事にハモった。
★ケイ氏の日記より
「生態系ピラミッドの上のほうにいる、ヒトの分身であるわたしと、魚との関わりにはいくつかの形がある。
例えば、捕食する側、される側であること
例えば、育てて楽しむ側、育てられる側であること。
で、今回は育てるヒトとして関わったメダカが天国に行ってしまった。
たくさんのおさかなや、トカゲやヘビや鳥たちが天国に行く。毎日毎日。ヤモリもアリンコ、ミジンコも。もっと小さないのちも、たくさんのぼっていく。
たくさんの。大きかったり、小さかったり、きれいだったり、少しにごったりしている魂が天国にのぼっていく。今は地獄のことはおいておくとして。
今日みたいな天気のいい日、青空を見上げて目を細めると、どこかでふわふわのぼっていく魂が見えるような気がする。見えたっておかしくないような気がする。
メダカのお墓を作ろう。
それから、これから出会うメダカたちが病気にならないように守ってあげられたらいいと思う。
いつかは死んでいくものだとしとても、毎日、その日いちにちを元気に過ごしてもらえるように」
★日記を書くケイ氏の背後で…
「本当にメダカの言ってたことが聴こえたの?」
シャケオが小声でニャミに尋ねた。
「えっ?そんにゃの聴こえなかったわよ」
ニャミが澄まし顔で答えた。
「でもさ、ケイ氏があんにゃにお世話したんだし、あんにゃに悲しそうだったんだもの。メダカにその気持ちが伝わっていたのは当たり前だと思うにゃ。きっと、メダカは嬉しかったに決まってる。だから、ああ言ったまでよ」
得意げにひげをぴくつかせながら、ニャミは言った。
「そりがニャミなりのなぐさめかたにゃんだにゃ」
シャケオが納得したように言うと、
「まあ、そうとも言うのかしらに〜」
そう言いながら、ニャミは後ろ足で立つと、お得意の回し蹴りで思い切り空を切った。
おしまい
ケイ氏は小さな木とロープで出来た外国からやって来た小さなヒト形。むすめの分身。
他の三匹は猫のぬいぐるみ
病気になってしまったメダカを、むすめがバケツに入れて持ち帰ってきた。けれど、看病の甲斐なく今朝死んでしまったとパパからメールがあった。朝はなんとか生きていたんだけど…。
むすめは模試の最中である。昨日の夜も遅くまで起きて、気にしていたから、あ〜〜。という感じである。昨日、薬を頼んだんだけど間に合わなかった。
魚の病気は予防に限ることをわたしも学んだ。
暇に任せて、小さなおはなしを書いたから、後で読んでもらおうと思う。まずは、ちゃんと伝えてから…