大学時代、私は一度だけ、深夜のアルバイトをしたことがあります。
それが製本の仕事でした。
新刊の文庫本に、たくさんの大学生たちと一緒に、黙々とカバーと帯をかけていきました。
たった一夜だけの仕事でしたが、本好きの私にとって、その時間はいまも忘れられない思い出として心に残っています。
まさかその時は、自分自身が本の著者になるなど、想像もしていませんでした。
それから長い時を経て、いま私は、いままで生きてきて、出合った中で最も思い入れの深い本と向き合っています。
現在、その本にもう一本のスピン(しおり紐)を入れ込む作業を、印刷所で行っています。
下の階から聞こえてくる活版機の音。
同じフロアでは、和綴じ本を作っておられる職人さんたちが、それぞれ高い技術で担当作業をてきぱきと進めておられます。
その姿がとても頼もしく、長年積み重ねられてきた手仕事の力を感じています。
窓を開け、扇風機を回しながら、一冊一冊、自分の本をいとおしく開いて、紐を差し込み、のりをつけていく――。
また、お経の和綴じ本が、一冊一冊、手作業で綴じられていく様子を初めて目にし、とても新鮮な驚きを覚えました。
不思議なご縁を感じています。
昨日、社長夫人昼休みにお話していた時、私の本について、「赤い花布、ピンクと水色のスピンといった仏教書はあまり見たことがなくて驚いた」「カバーがとてもきれい」と打ち合わせの時に驚いたと言われました。
仏教書というと、紺や茶色など落ち着いた色合いのものが多い印象があります。
その中で、この本ならではの雰囲気を感じ取っていただけたことが、とても嬉しく心に残っています。
作業も、もう少しで完成です。
先にスピン一本の状態でお手元に届いた方で、「もう一本欲しい」と思われる方がおられましたら、どうぞご遠慮なくお声掛けください。作業にも慣れ、修復用の道具も揃ってきました。
本は、あと二冊、上梓予定です。
一冊は前作の解説。
もう一冊は、二冊の本への反響や、今生で私が歩んできたこと、その意味を振り返りながらまとめるものになると思います。
楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。
