素人短編小説 飛行慣熟訓練 -9ページ目

素人短編小説 飛行慣熟訓練

元運航従事者の素人小説です。
飛行機に興味のある方は是非優しい目で読んでやってください。
なお、文中に出てくる団体、個人名はフィクションです。
また、小説自体も、事実を基にしたフィクションです。

天候に関しては、羽田が南風運用である点と、VIS(視程)が良くないので、ILS22を使用している点くらいか。

 

何の問題も無い運航になりそうだ。これだけで、半分仕事が終わったと思う程だ。

あとは、機上にサインをもらう為の指示書、メモを取る為の自作の記入シート、筆記用具、操縦室への搭乗許可証、さっき打ち出したフライトプラン、これで必要な物は揃った。

いや、忘れていた。ATC(管制)をモニターする為のイヤホンが必要だった。

 

操縦室には、JUMPシート(補助席)に座った人が通信出来るように差し込み口があるのだが、機種によっては遠いので、長いコードのイヤホンが必要なのだ。

 

これで間違いなく必要な物は揃った。

あとは到着を待つだけだ。

 

『おはようございます』『よ~っす』様々な挨拶をしながら、社員が出勤し始めた。

時間を見ると8時20分過ぎ、私が出社してから50分程が経っていた。

ここから暫くは通常業務だ。

 

今日は、私は出張なので、担当ではないが、担当者ともう一度気象解析を行う。

やはり、大きな問題はない。

 

続けて、今日の離陸便のバランスを確認する。

飛行機のバランスは、飛行性能に大きく影響するので、既定値内かを確認する。

 

前後どちらかに偏っている場合は、既定値内であっても、旅客係が見る端末に「AFT CHK IN(座席の決まっていないお客様の座席は後ろ側に席をアサインして下さい)」と出す場合もある。特に空席が多い時のツアーのお客様がいるときに起きやすい。

 

一般的にツアー客はまとまって座るためだ。

しかし、今日は問題なさそうだ。

 

今日の担当の矢野君は、まだ若いが有能な人材で将来の幹部候補だろう。あと何年彼の上司でいられるか。そう長くはない気がする。

 

9時前になり、早番の旅客係が出社してきた。

普段着なので、仕事の時と印象が違う。

唯一普段と違うのは、髪をお団子結びにしている女性がいることか。

お団子髪に普段着、アンバランスだが、航空業界の女性は仕方ない事と諦めるしかない。

 グランドハンドリングのメンバーも出社してきて、全員が揃った。

 

時機を見計らって、朝礼を行う。

朝礼の真ん中は、我々ステーションコントローラーの定位置で、今日は矢野君が担当だ。  

 

全国の気象情報、到着地の気象情報、到着に支障があるかないか、自空港の天候が悪い時には、到着の可能性、ダイバートやワーストリターン等の運航に関する情報を話す。

 

旅客係は、特殊旅客の有無や、乗り継ぎのお客様の有無、到着出来ない時の対応予定等を話し、整備さんは情報があれば話すが、整備さんの持っている情報は、大抵、私達も持っているので、あまり話す機会はない。

そして、最後に所長の一言で終わる。

 

イメージとしては、機長を中心にしたCAとのブリーフィングに近いものがある。

 

朝礼が終わると、それぞれが持ち場に帰っていく。私は担当では無いものの、各システムのモニターの前に座って、二人体制で行う事にした。

丁度その頃、初便が羽田を出発した事を表す紙がプリントアウトしてきた。一応、目を通して確認する。

 

 

定刻の出発だ。となると、今日の天気では、恐らく早着になるだろう。準備は少し早める事にする。

 

 

*他にも、『元飛行機関係者のしょうもない話』を書いていますので、よろしければご覧下さい。(station-control)です。