素人短編小説 飛行慣熟訓練 -10ページ目

素人短編小説 飛行慣熟訓練

元運航従事者の素人小説です。
飛行機に興味のある方は是非優しい目で読んでやってください。
なお、文中に出てくる団体、個人名はフィクションです。
また、小説自体も、事実を基にしたフィクションです。

今日は関係するNOTAMは無い。重要項目は弁当の数だけだったので、この情報だけを切り取り机の上に置いておく。

 

さて、準備に取り掛かろう。

まずは、気象の解析だ。地上天気図で、日本全体の天気概況を掴むと、次第に高度をあげて、高層天気図の解析を行う。

 

湿域、シアーライン、ジェット気流の位置と高さ等の確認をし、頭の中で立体図にする。

ここに、悪天予想図の情報も入れると、日本中の空の断面図が出来上がる。

 

既に打ち出してあった、フライトプランの高度を確認して、揺れないかどうかの確認をする。今日の天候では、フライトに影響なさそうだ。

 

今日は、到着便は38000ft(約11500m)、私が乗る帰りが39000ft(約11800m)と標準高度を選んでいる。標準高度でフライトプランが作成されている=この高度は揺れないと言うことではない。

 

フライトプランは、未明に全便の分を作成しているので、欠航でもない以上、標準高度で作成されるのが普通なのだ。

 

出発前、パイロットが行うブリーフィングで、機長が高度の変更を希望すれば、通常、PCの端末を叩いて変更することができる。

フライトプランの確認は羽田を出発する頃もう一度確認するとして、機長が誰かだけを確認しておく事にする。

 

機長が誰か、飛行慣熟訓練には大問題なのだ。話好きの機長なら、色々と質問も出来るが、無口な機長だと、一言も話さないまま到着してしまい、レポートの助けにはならないからである。

 

今日の機長は、石津キャプテンだ。このキャプテンは、長年飛来して来ている顔なじみだ。運がいい、今日の飛行慣熟訓練は上手くいきそうだ。

 

質問だけ、もう一度まとめておこう。

いくら話好きの機長でも、話せる時間は長くはない。離陸、上昇し、水平飛行になってキャプテンアナウンスが終わってからの、ほんの10分程度である。

 

それを過ぎると、降下開始まで、まだ時間はあるのに、進入、着陸のブリーフィングが始まり、副操縦士も機上コンピューターの端末を叩き、情報を入手しだすのだ。

 

なので、質問は厳選しておく必要がある。

逆に質問されることもあるが、それは気にしても仕方ない。その時に考える事にする。

 

天候に関しては、羽田が南風運用である点と、VIS(視程)が良くないので、ILS22を使用している点くらいか。

 

何の問題も無い運航になりそうだ。これだけで、半分仕事が終わったと思う程だ。

あとは、機上にサインをもらう為の指示書、メモを取る為の自作の記入シート、筆記用具、操縦室への搭乗許可証、さっき打ち出したフライトプラン、これで必要な物は揃った。

いや、忘れていた。ATC(管制)をモニターする為のイヤホンが必要だった。

 

操縦室には、JUMPシート(補助席)に座った人が通信出来るように差し込み口があるのだが、機種によっては遠いので、長いコードのイヤホンが必要なのだ。

 

これで間違いなく必要な物は揃った。

あとは到着を待つだけだ。

 

『おはようございます』『よ~っす』様々な挨拶をしながら、社員が出勤し始めた。

時間を見ると8時20分過ぎ、私が出社してから50分程が経っていた。

ここから暫くは通常業務だ。

 

 

*他にも、『元飛行機関係者のしょうもない話』を書いていますので、よろしければご覧下さい。(station-control)です。