以前投稿した下記記事から始まった今年の夏の活動報告。


 今回からは、8月20日に東京の貞静学園短期大学を会場に開かれた日本家庭教育学会での個人発表の発表資料を紹介します。

 内容は、以前このブログに投降した、乳幼児期の子育ての意義や方法について紹介した下記記事「まとめプレゼンテーション」

の骨子(「まとめプレ…」の情報量は膨大でしたから、概要を把握するうえでは意義のある投稿になるかも知れません)とその事業化案になります。今回から何回かに分けて紹介します。(なお、発表時にご意見を頂いた点については修正を加えています)実質全4回に渡る資料ですが、20分程度で読んでいただけるのではないかと思います。

 なお、本文中の数字(○)は、そこでの記述内容の元になる文献や論文があることを示しています。その文献等については、発表資料の最後(5回目投稿)に掲載しています。

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研究テーマ

「いじめ、引きこもり、犯罪、少子化、虐待等の社会問題を改善するために 〜自治体の妊婦検診等の一環として行う親への啓蒙プレゼンテーション視聴の提案〜」


1. 本研究の目的

 昨今では、虐待事例に顕著に表れているように、親自身が子供の頃に受けた不適切な育てられ方と同じようにわが子を育てるために適切な子育てができない「真性の母性喪失」 (1)(2)や、逆に、親自身は子供の頃に愛情を十分受けていたにも関わらず、仕事等の都合から「これくらいなら子供より仕事を優先させても大丈夫だろう」等と適切な養育環境について誤解していたために子供が不登校や引きこもりになる「状況性の母性喪失」 (3) に陥る実態が見られる。特に後者においては、保護者の子育ての意識が2015年から2022年にかけてどう変化したのかを調べたある調査によれば、「子どもを育てるためにがまんばかりしていると思う」は約20ポイント増、「母親がいつも一緒でなくても、愛情をもって育てればいい」という回答は55.1%に増加、特に専業主婦において「自分の生き方も大切にしたい」という意識が44.5%から60.2%まで上昇するなど、「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」という意識が上昇していることから、この「状況性の母性喪失」は今なお増加していると考えられる。

 因みに精神科医の岡田尊司氏は「普通の家庭の約三分の一の子供にみられる愛着スペクトラム障害(親の不適切な養育によって至る子供の人格不全症状)が、将来的に、離婚や家庭崩壊、虐待、結婚や出産の回避、社会に出ることへの拒否、非行や犯罪等の社会問題を引き起こす場合がある」(4)「愛着を形成するための臨界期は生後1歳半まで」(5)との旨を指摘している。(本稿では「愛着スペクトラム障害」について先天性の症状という誤解を生まないために「愛着不全」と呼ぶ)なお、同様の警鐘は聖マリアンナ医科大学の堀内勁氏も行っている。(6)

 以上のことから、正しい育児環境や育児方法について子供が生まれる前に親に広く周知されなければ、今後も上記のような様々な社会問題が噴出し続けると考える。

 因みに、現在大きな問題となっている少子化に関わって、18歳から25歳までの若者の多くは、経済的な理由ではなく、「子供が好きではない、子供が苦手だから」「自由がなくなるから」という「回避型」の愛着スペクトラム障害に由来する理由から「子供はいらない」と考えていることがある調査から分かっている。つまり、現時点で政府が考えている様々な経済的な支援だけでは、不十分であることは明らかである。

 そのためには、周知する機会を新しく創り出すよりも、既に自治体が実施している妊婦検診の機会を利用して啓蒙プレゼンテーションを視聴してもらうことが効率的と考える(原則90分間の一度だけ)。加えて、愛着の後天性の性質を踏まえ、既に愛着不全症状がみられる子供の親を対象に乳幼児健診の一環として同プレゼンの視聴を行うことによって劇的な改善が期待できる。(7)

 なお、視聴当日は、全てのスライドと解説文とを掲載した別冊資料を配布し、帰宅後に家族の中で共通理解を図れるようにする。


2. 啓蒙プレゼンテーションの概要

 本プレゼンのタイトルは、「子供に健全な一生を贈るための父母両性の働きを活かした子育ての基本」。その特徴は、子供を将来に渡って健全に成長させるうえで必要になる働きを「母性」と「父性」の二つに絞ったことである。(8) (9)(10)(11)親も「自分がすることは、このどちらかで良い」と思うと子育ての見通しが立ちやすくなると考える。なお、実際の子育て場面では一人の親が両性を使い分けることの方が多い。(12)(13)

 プレゼンは全4章構成で、各章の概要は以下の通り。

≪第1章≫愛着が子供の一生に与える影響とその形成に必要な育児環境(子供の一生の人格形成を図る上で乳幼児期がどれだけ大切かを知り、内発的に「母性的没頭」の必要性を自覚してもらうため)

第2章≫子供の二大愛着不全症状とその原因となる子育て(陥りやすい子育ての仕方を事前に知っておき、意識的にその落とし穴に入らないようにするため)

≪第3章≫二大愛着不全症状を改善するための父母両性の働きを表したそれぞれの支援方法(4章の準備として、両性それぞれの具体的な立ち振る舞い方を知るため)

≪第4章≫3つの生活場面毎の父母両性の使い分け方(各生活場面での父母両性のバランスを適切に保ち、人格的にもバランスのとれた大人に育てるため)

(次回へ続く)