私は5年前に小学校教諭を退職した後、「普通の家庭でも将来様々な社会問題を抱える子供に育ててしまう可能性がある」と警鐘を鳴らす精神科医の岡田尊司氏の文献を中心に、その内容をブログ読者にも理解しやすい表現に打ち直し「愛着の話」(No1〜No109)として連載化しました。その後それを根拠に、昨今の様々な社会問題について主に家庭での子育てに焦点を当てながら、その原因や改善の方法について調べたことをこのブログに投稿してきました(純粋な教育問題に限っても1000事例以上)。その結果、一定の成果を導き出す段階に至りました。そこで、これまで分かったことをまとめ、それらを親御さんに直接お伝えするためのプレゼンテーション(パワーポイント)を作成し、これも一定の完成に至りました。


 以下は各章の概要です。


《第1章》(本章は出産前に見てほしい内容)

 乳幼児期の養育が子供の一生の人格等(人間関係能力、自立性、ストレス耐性力、依存性、心身の健康面他)の形成に影響を与える愛着を形成し、不適切な育児環境(ワンオペ育児、0歳児保育等)によって世話をした場合には、子供が様々な社会問題(非行、引きこもり、虐待、犯罪等)に陥る可能性もあること。

※本章の目的→子供の一生の人格形成を図る上で乳幼児期がどれだけ大切かを知るため

《第2章》(以下2〜4章は子供が小学校に入学する前に、できれば1歳半を迎える前に見てほしい内容)

 子供の愛着が不安定であるタイプは主に次の二つのうちどちらか。親の愛情が不足することから「何やってるの!」「やめなさい!」等と子供を否定・拒絶する等した場合に、子供が人との関わりを避けたり人に反発したりするようになる「回避型」愛着不全タイプと、親の愛情が強過ぎて不安定になることから気分次第で褒めたり怒ったりする等した場合に、子供が過度に他人の顔色を気にするようになる「不安型」愛着不全タイプとがあること。

※本章の目的→陥りやすい子育ての仕方を事前に知っておき、意識的にその“落とし穴”に入らないようにするため

《第3章》

「回避型」愛着不全に陥らないための母性の働きとしての「安心7支援」と、「不安型」愛着不全に陥らないための父性の働きとしての「見守り4支援」とについて、親が具体的に何をすればいいか、それぞれの支援内容を具体的に提案したこと。

※本章の目的→第4章の準備として、両性それぞれの具体的な立ち振る舞い方を知るため

《第4章》

 子育ての中で見られる代表的な3つの生活場面を取り上げ、それぞれの場面で、母性と父性をどのように使い分ければいいかを明らかしたこと。

※本章の目的→各生活場面での父母両性のバランスを適切に保つため


 そこで、今回からしばらくの間3日おきくらい、主要なスライドを選んで、それらの解説文と併せて皆さんに紹介しようと思います(実際にプレゼンをする時のようにスライド内のそれぞれの言葉の登場に合わせて解説を加えるということはできないため、読んでいて分かりづらいと思いますがご了承ください)。但し旦那さんやご家族が論理性を重んじる方の場合、その理解と協力を得るためには全てのスライドが必要なので、実際のプレゼン時には、全てのスライドと解説文とが掲載され講話の内容をご家族のもとに持ち帰ることが出来る別冊資料を配布します。

 なお、プレゼンの際にはその時に頂いた時間に合わせて必要な部分を選んで紹介します。

 ただし今回は、実際のプレゼン内容の紹介を始める前に、若干長くなりますが“前書き”として、本プレゼンの基本的な考え方についてお話しします。





 テーマは、「子供に健全な一生を贈るための父母両性の働きを活かした子育ての基本」です。ポイントは、今現在行う子育てが、子供の今の生活だけでなく、将来の生活をも健全なものにできるかどうかを左右するという点と、その方法として、本来の父母両性の働きを活かすことに着目したという点です。なお、これはあくまで「母性と父性」ということで、「母親と父親」ではありません。「母性」や「父性」とは、あくまで母親と父親それぞれに特徴的に見られる“気持ち”のことで、どちらかが両方を使い分ける場合も多いものです。つまり、たとえ一人親家庭であっても、場面に応じて両性を使い分ける必要があるということをご承知おきください。詳しくは本プレゼン内で紹介します。


 さて、上記テーマからもお分かりのように、このプレゼンの最大の特徴は、母性と父性という子育てを支える二大要素に着目した点です。これらの存在を認める意義については、それぞれの持つ意味(母性は“子供の受容”、父性は“子供への指導”)と併せて、特に児童青年精神医学の権威であった故佐々木正美氏が強く主張してしています。私は、あえてその母性と父性に注目することはとても大きな意味を持つと考えました。

 なぜなら、親は子供を健全に成長させようと、毎日の生活の中でありとあらゆる言葉や行動で子供に働きかけていますが、それぞれの言動は、その時々の思い付きで行われていることが多く、それぞれの言動が、母性による“受容”なのか、父性による“指導”なのか、自覚はしていないことが多いと思います。同時に、子供が問題を起こした時も「今この子に何をしてあげればいいの?!」と慌てがちです。しかし、「今この子に必要な働きかけは母性と父性のどっち」等と考えることができれば、毎日の煩雑な子育てを整理して考えやすくなると考えたからです。言わば暗中模索”から“二者択一”への転換です。

 更に、幾多の教育書には多種多様な子供への支援方法が紹介されていますが、実は何れもこの父母両性のどちらかの働きを表したものになっています。それらの膨大な子育て法を父母両性の二つに集約させて考えれば、皆さんがその本を読んだ時に、自分が持っている「母性」と「父性」という“整理戸棚”に収納し自分の財産を更に増やすことも可能になります。


 特に、正しい母性を働かせることは、第一にして最大の柱になります。私がこれまでの研究を進めるにつれて分かったのは、今の子供達、更にはその結果として至る大人達の様々な社会問題(離婚や家庭の崩壊、虐待やネグレクト、結婚や子供を持つことの回避、引きこもり、非行や犯罪等)の背景にあるのは、間違いなく、彼らが不安感やそのために生じるストレスを抱いた時に、それを受け止め癒す母性の働きが不足しているということでした。ただしそれは母親の落ち度などではなく、育児に対する社会の偏見や世の中一般の誤った子育て常識(詳細はプレゼン内で紹介)のためです。仮に、子供達にその「安全基地」が提供されれば、いじめも不登校やひきこもりも、更には少子化も家庭内の虐待も改善することでしょう。どうすれば母性の働きを具現化できるのか、そのことについて、出来るだけ具体的な方法を提示すること、それが本プレゼンの最大のねらいです。

 第二の柱が、正しい父性を働かせることです。日本社会では以前から、厳しく指導する父親の姿が印象的です。それでも度を越さなければ父性の役割を果たすことは可能です。しかしこのプレゼンでは、昨今の体罰・虐待事例も鑑み、敢えて子供が試行錯誤する姿を見守る働きとしての父性を強調しています。正しい母性の働きがあり、子供に任せて行動させていれば、それだけで子供は健全な大人に成長します。その認識の上に立って、その父性をどんな場面で発揮すればいいのかを提案します。

 この父母両性の働きの在り方については、本プレゼンの主に第3,4章で具体的に提案しています。


 更に、母性を復活させるにしても、その道筋もやはり二通りあると考えています。

 子供の不登校について、自身の著書で提言をされている黒川昭登氏によれば、子供が不登校に陥る大きな要因は、その親に母性が不足していること(「母性喪失」)であるとされています。その母性の不足に、ある二種類の背景があると黒川氏は指摘しています。

 一つは、親自身が子供の頃に愛情を注がれず、正しい母性の働きを学ぶことができなかったために、親になった時に我が子にどのように母性を注いだらいいか分からないケース(「真性の母性喪失」)。もう一つは、子供の頃に母性を注がれてはいたが、親になった時に仕事の都合や誤った育児常識等のために正しい育児環境を築くことができないケース(「状況性の母性喪失」)です。

 私は、この二つの「母性喪失」を改善させることが、不登校に限らず、子供のあらゆる不安感やストレスの改善につながると考えています。

 この「真性の母性喪失」への対応策については主に第3,4章で、「状況性の母性喪失」については主に第1,2章で提案しています。