今回は、自閉症スペクトラム障害と愛着スペクトラム障害(愛着不全)の子供とに共通して効果のある支援や、両症状の違い等について紹介しています。

※これ以降、自閉症スペクトラム障害と愛着スペクトラム障害(愛着不全)の子供に共通して圧倒的に不足している安心感を補うための支援として「安心7支援」を紹介しています。

 この支援については、これまでにも家庭での子育ての在り方を述べてきた中で紹介してきました。つまり、子供と愛着を結んで安心感を与えることが大切であるのは、家庭であろうが学校であろうが変わることはないのです。

 加えて言えば、自閉症スペクトラム障害以外の発達障害であっても、お年寄りの認知症であっても、ストレスを抱えている健常の子供であっても、大切なものは全て「安心7支援」が与える安心感だと私は確信しています。

 ここでの「安心7支援」の内容については、過去に投降した「個人講義・演習の概要④」

の2枚目以降のスライドで紹介していますので、そちらを参照ください。



 私が特に重要視しているのは毎朝の出席確認です。

「安心7支援」によって、子供一人一人をきちんと見て、一人一人に微笑んで、一人一人の名前を優しく穏やかな口調で呼び、一人一人の返事を「元気がないよ」等と否定せずにうなずきながら聞き、きちんと返事が出来た子供がいた場合には褒めることも出来ます。つまり「安心7支援」のスキンシップ以外の支援によって子供達全員に安心感を与える機会が実は毎朝きちんと設定されているのです。この機会を活かさないと恐らくただの一度も担任から肯定されずに一日を終えてしまう子供が何人も出ることになるでしょう。

 なお、この時に教師は「今日も子供達に安心感を与えよう」という意識を高めながら「安心7支援」の支援内容を確認することができます。また、前日に怒ってしまった子供がいたとしても朝のうちにそれをリセットすることができます。更に、この朝の出席確認で教師は「安心7支援」によって子供の表情が明るくなることに気付くでしょう。そのことで手ごたえを感じると今度は自ずとその日の様々な指導の中に同様の支援を取り入れたくなるはずです。

 因みに、学校現場でなかなか減らないいじめは加害者が溜めたストレスの発散行為であることがある専門家によって明らかにされています。つまり学級の子供達全員に安心感が保証されればストレスを抱える子供が減り学級内のいじめ件数は格段に減少するはずです。そのためには子供達全員に安心感が提供される出席確認がより重要になることは間違いありません。


 では逆に支援方法は同じなのに二つの症状を識別するのは何故でしょうか?

 後天性の特質が強い愛着不全は「安心7支援」等で接すれば症状は完治する可能性が高いのに対して、先天性の特質が強い自閉症は「安心7支援」で症状が緩和することはあっても完治はしません。つまり、“治せる症状と治せない障害”という違いがあることから双方を識別する必要があるというわけです。

 なお治せない自閉症については、ある特別な配慮が必要になります。それは自閉症の困難特性に配慮した支援です。これについてはこの次のスライドで説明します。


 なお、先天性か後天性かという大きな違いがある両症状ですが、実はある同じ問題を抱える子供達の背景にそれら二つの症状が潜んでいる場合があります。それは「あなたはどうしていつもそうなの?ちゃんとやりなさい!」等と叱られる子供達の問題です。

 まず、教師が自閉症などの子供の発達障害に気付いていない場合には、なぜその子が皆と同じように出来ないかが分かりません。また子供がいつも教師から怒られているような場合だと、子供はその教師を信頼できない「回避型」の愛着不全に陥り「先生の言うことをがんばろうと思えない」という状態になっていることが考えられます。

 ですから「あなたはどうしていつもそうなの?」と思ってしまう子供がいた場合は、両症状を疑って考え、まずは「安心7支援」で接することが必要です。


※これ以降、自閉症スペクトラム障害の困難特性に配慮した支援方法を紹介していますが、これについては、過去に投稿した「個人講義・演習の概要⑤」

の2,3枚目のスライドで紹介していますので、そちらを参照ください。