前回の「回避型」タイプの人との接し方に続き、今回は不安型タイプの人についてです。


「不安型」のパートナーについて

①そもそもどんな人?

・自分が受け入れられているかどうか、相手に認めてもらえているかどうかに敏感。少しでも相手の反応がおかしかったり、いつもと違っていたりすると、それだけでやきもきと気を揉んでしまう。

・不満や苦痛といったネガティブなことを、つい口にしてしまう傾向がみられ、言いだすとどんどんエスカレートして、そこまで思っていないことまで言ってしまうこともある。

・否定的な感情にとらわれやすく、些細なことをいつまでも引きずりやすく、じくじくと長引かせやすい特徴もある。

・「見捨てられるかもしれない」という不安が強いため、自分が愛されていることを過剰に確かめようとすることもある。やむを得ない事情で相手が自分をかまってくれない事さえも腹立たしく思い、裏切られたと感じて怒りをぶつける。



・気を使い過ぎるために相手に逆らえないということがしばしばみられる。

・自分のパートナー等の身近な相手に対しては、自分と他者との境界が曖昧になり、相手を自分の一部のように思い込んでしまうことも見られる。

・人に認められたいと必死なので、始めは過剰なまでに「良い子」を演じようとするが、少しでも相手の評価が下がったような気配を感じると、落ち込んでしまうか、まるで堤防に亀裂が入ってしまったかのように、爆発を繰り返し「悪い子」に変わることも珍しくない。この両極端な態度は、家族やパートナー等の遠慮のない親密な関係になればなるほど見られるようになる。


 より適切な診断をするうえでは、岡田尊司著「愛着障害〜子供時代を引きずる人々〜」(光文社新書)の巻末「愛着スタイル診断テスト」がお勧めです。

 なお、不安型に陥る原因となった自身の幼少期の親による養育については、本ブログ記事「愛着の話 No.24 〜子供の愛着パターンのタイプとその原因 ②〜」を参照ください。幼少期の我が子に対して、自分の気分次第で褒めたり叱ったりと、予想不可能な対応をしてきた親の養育が尾をひいているのです


②どう接すればいい?

 不安型の人は、自分を受け入れてもらいたい、認められたいと言う欲求が非常に強い。少しでも自分のことを否定されたとか、拒否されたと感じると、気分を害し、相手に対し批判的になる。

 そうした状況に陥らずに、不安が他の人と向き合い、その人にとっての安全基地となるためには、何よりもまず「共感」を大事にする必要がある。相手の思いをよく受け止め、大変さや苦労をねぎらうことが大切だ。その部分を怠ると、どんなに大事なことを伝え、有効な支援を行ったとしても、「自分のことをわかってもらえなかった」と言う印象しか残らない。不安型の人は、不満や愚痴、取り越し苦労がどうしても多くなりがちだが、しっかり耳を傾け、おざなりな扱いをしないことが大切である。

 女性にモテる男性には、マメな男性が多いと言うことが言われる。特に不安型の人を相手にする場合には、マメな人が圧倒的に好まれるだろう。不安型の人は、いつも自分のことを構ってくれたり、世話をしてくれたり、関わりを持ってくれる人を切実に必要としている。

 また不安型の人の場合、メールの返事が遅れるだけで機嫌が悪くなったり、不安定になったりすることも起きやすい。自分が求めているのに、返信が来ないと言うことを、「無視された」と受け取ってしまう。安全基地としての大事な条件の1つは応答性である。求められたら応える、これが不安型の人と安定した愛着を築いていく上での根本原則である。

 また不安型の人は、自分で決めるのが苦手である。ささいな判断も、自分1人でするのは自信がない。誰かにすぐ相談したくなる。そして相手に代わりに決めてほしいと思う(依存性と言う特性)。しかし、ここで答えを教えてしまいたくなっても、教えないほうがいい。それではやはり、自分のものにはならない。自分で考えると言うことが大事なのである。「あなたはどう思う」「どうしたいの」とあくまで本人の主体性を尊重する態度をとる。仮に本人が自信がなさそうであれ、自分の気持ちや考えを入れたときには、そのことを肯定的に評価する。


【感想】

 上記から、接し方のポイントは、以下のようになるでしょうか。

①自分を受け入れてもらいたい、認められたいと言う欲求が非常に強い不安型の人に対しては何よりもまず「共感」を大事にして相手の思いをよく受け止め、大変さや苦労をねぎらうこと。不満や愚痴に対してもしっかり耳を傾け、おざなりな扱いをしないことが大切。

②メールの返事が遅れるだけで機嫌が悪くなったり、不安定になったりすることも起きやすい不安型の人に対しては、その求めに出来るだけマメに応答することが大切。


 さて、ここからは、たった1つだけ私なりの意見をお話しします。

 岡田先生は

「相手に代わりに決めてほしいと思う。しかし、ここで答えを教えてしまいたくなっても、教えないほうがいい」

と指摘されていますが、私は、先ずは答えを教えて本人の不安状態を解消してあげたほうがいいのではないかと思います。なぜなら、何十年以上もかかって形作ってきた人格なのですから、この時急に「自分で考えてみて」と要求してもうまくいかないのではないかと思うからです。

 このブログでは、以前から、下表のような、問題を抱える「充電場面」と、自力で探索行動を始められるようになる「活動場面」の表をご紹介していますが、「充電場面」にいる人に(答えを教えて)安心感を十分に与えれば、自分から「活動場面」のほうに移動できる旨は、岡田先生も自身の著書の中で指摘しています(「母性の働きを与えられた子どもは親が何をしなくても自ら行動を起こす〜「自力回復力」という考え〜」参照)。私は、「自分で考えてみて」等と他人が無理に圧力をかけることなく、人間の中に本来備わっている特質に委ねるほうが得策ではないかと思うのです。


 以上の気配りを繰り返すうちに、「これまで自分を認めたり否定したりして振り回してきた過去の大人とは違い、この相手の人は自分を裏切らない人だ」と理解して、相手を自分の安全基地であると信頼するようになるのではないでしょうか。


 つまりは、上記①、②に以下のことを加えたいと思います。
③相手に依存し、ささいな判断も自分1人でするのは自信がない不安型の人には、相談された答えを明確に教えて安心感を与えることが大切。
④以上の気配りを繰り返し、本人を決して裏切らない態度を示し安全基地としての信頼を得るようにする。

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 今回、「回避型」と「不安型」タイプへの接し方を考えていて分かったのは、子どもの頃に、「回避型」は親から与えられていなかった愛情を、「不安型」は親から安定・一貫した愛情を、それぞれ今与えることが必要だということです。その結果として、「この人は自分に不足していたものを与えてくれる人だ」と思ってもらえたら、初めてその人の安全基地になることができるのですね。