子どもの一生の人格形成に悪影響を与える愛着不全には「回避型」と「不安型」と、これらの合併である「混乱型」の3種類があると言われています。愛着タイプが違うなら、できればその人に合った接し方をするのが一番理想的であるはずです。ただ、私達が出会う人々を愛着不全であるかどうか、更にどのタイプの愛着不全であるか、を見分ける事はほぼ不可能です。
 しかし唯一そのことが分かる人達がいます。それは自分の身近にいる家族やパートナーです。彼らとは、日頃から生活を共にし、性格や行動特徴が分かっているからです。しかし、毎日非常に近い距離にいるからこそ、人間関係がうまくいかないと、とても辛い生活になりますし、夫婦の場合、最悪離婚と言う事態にも発展しかねません。
 ちなみに精神科医の岡田尊司氏は、「安定型」愛着タイプの人は、「回避型」や「不安型」等の不安定型愛着タイプの人の愛着を改善できると指摘しています。

 そこで今回から2回にわたって、岡田氏の文献をもとに、二大愛着不全タイプである「回避型」と「不安型」の家族やパートナーへの接し方について紹介します。
 今回は「回避型」愛着不全タイプです。

「回避型」タイプの人との接し方について
①そもそもどんな人?
・親しい関係や相手との情緒的な共有を心地よいとは感じず、距離をおいた対人関係を好む。

・人とぶつかり合う状況が苦手で、自分から身を引くことで葛藤を避けようとする

・恋愛に対してドロドロしたものを嫌い、相手との絆を何としても守ろうとする気持ちが乏しい。特に男性の場合、パートナーが困って自分の支えを必要としているとき、助けを与えるよりもむしろ怒りを感じてしまう。

・やらなければならないと分かっていても、厄介なことは後回しにする面倒くさがり屋。

・何に対してもどこか醒めている。

・パートナーを自分の所有物のように扱い、思い通りにならない場面では、相手を攻撃したり暴力を振るったりする。

(イメージです)

 より適切な診断をするうえでは、岡田尊司著「愛着障害〜子供時代を引きずる人々〜」(光文社新書)の巻末「愛着スタイル診断テスト」がお勧めです。

 なお、回避型に陥る原因となった自身の幼少期の親による養育については、本ブログ記事「愛着の話 No.23 〜子供の愛着パターンのタイプとその原因 ①〜」を参照ください。幼少期の我が子に対して、その求めに応じず世話をしなかったり、褒めもせず常に否定し続けたりしていた親の養育が尾を引いているのです。


②どう接すればいい?

 回避型の人は、「あなたなんかいなくても痛くも痒くもない」と相手に見せつけるように、傲慢な態度や無関心な態度、寄せ付けない態度をとるが、心理的な接近を望んでいないわけではない。
 また、回避型の対人関係の特徴の1つは、相手を「利用可能性」で見ると言うこと。自分にとって利用が可能な時には相手に関心を持つが、利用することが何もない時には関心を失ってしまう。加えて、情緒的な表現や細やかな心遣いといったことが苦手。その分、単純明快でわかりやすく、やはり現実的に利益をもたらす助言を好む。
 回避型の人は、共感されてもあまり響かないが、自分の関心がある事について語ることは有効なアプローチとなる。自分が話したくない事は持ち出さず、自分の関心事についてだけ語り合える存在に対しては安心感を抱くようになる。
 すると次第に相談者が本人にとっての安全基地として働くようになる。そうなると次の段階に移る準備が整う。次の段階は、指南役や助言者、インストラクターとなる段階だ。ただし何でもかんでも指南するのではない。相手が求めてきたことについてだけ控えめに「それはこうじゃないかな」「こうした方が良いかもしれない」と教えると良い。

【感想】
 上記から、接し方のポイントは、以下のようになるでしょうか。
①先ず、本人は相手に対して無関心な表情をすることが多いかも知れないが、相手を嫌っているわけではないので、臆せず接近を試みると良いこと。
②ただし、いきなり助言は受け付けないので、本人と心理的に近づくために、先ずは、本人の関心事について語り合うことが良いこと。
③本人が相手に気を許す(安全基地として働く)ようになったら、本人に利益をもたらすような助言を出来るだけ控えめに教えると良いこと。

「回避型」タイプの人は、幼少期に親から世話をしてもらえなかったと言う辛い経験があるため、①まずは本人の関心事について語り合うことで、充分本人を安心させることが必要なのです。その後、本人が安心感を感じることができるようになって初めて、②相手からの助言を受け入れることができるようになります。
 これはちょうど、以下の「①充電場面→②活動場面」という流れと同じものと言えます。幼少期の愛情が欠如していたという問題を抱える「充電場面」にいる「回避型」だからこそと言えるでしょう。