昨日の投稿の続きです。

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【感想】
「アダルトチルドレン」と呼ばれる人達
 世の中には「アダルトチルドレン」と呼ばれる人達がいます。(以下「 https://h-navi.jp/column/article/35026768」より参照)
 子どもの頃に家庭内の経験によって精神的に傷つき、現在を生きるうえで支障がある大人達です。心的外傷の例としては、アルコールやギャンブルなど各依存症の親の下で育ったり、虐待やネグレクト・家族同士の不仲・子どもに対する過剰な期待等の“機能不全家族”の中で育ったりすることが挙げられます。特徴としては、
「周囲の期待通りに振る舞おうとする」
「他人に承認されることを渇望し、寂しがる」
「『No』が言えない」
等の“対人依存”性が挙げられます
 
 今回の母親に振り回された事例も「機能不全家族」の一例と言えるでしょう。

 また、「いい子症候群」と呼ばれる子ども達もいます。これは、ほめられることより保護者が不機嫌になることを恐れ、どうしたら保護者が喜ぶのかを常に考えて、その期待に過剰に応えようとするいい子”のことです。“親の価値観に振り回される”という点では「アダルトチルドレン」と同じですが、「アダルトチルドレン」が「毒親」の影響を受けたまま大人(アダルト)になった人達であるのに対して、「いい子症候群」は、子ども世代を指します。この子ども達がそのまま歳をとって大人になると「アダルトチルドレン」と呼ばれるようになると捉えられます。
 
父母両性のバランス
 先の脳科学者中野氏の友人は、自身の中に「母親の行動を理性的に受け止める性質」を認めています。自分を苦しめるほどの母親の言動さえ、受け止めてしまう背景には、愛着形成後の2~3歳頃の発達課題である“母子分離”を果たせなかったことがあるのではないでしょうか。
 この母子分離を果たすうえで重要な役割を果たすのが父親と言われています。しかし、「ご両親は彼女が物心ついたころから、滅多に口もきかないほど不仲」だったとのことです。つまり、父性の働きが弱かったために、母親と子どもとの距離が近くなり過ぎ、母親が自分自身の価値観を我が子に強く押し付ける環境が生まれてしまったと考えられます。事実、中野氏は「母親の愛が濃すぎるが故に、娘に逸脱した行動をとってほしくなくて、あれこれと注文をつけたり、口うるさくコントロールしてしまう」と母性の過度な強さを指摘しています。
 
「毒親」の“今”を改善する
 中野氏は、環境を改善するために「祖父母なり夫なり、いろいろな人を入れて薄めてあげるとちょうどいい。少し遠くから、他人様の子だと思って接すると楽になるかもしれません」と指摘していますが、現実的には、夫を子育てに介入させることによって父性を回復するか、一人親の場合は意図的に父性の働き(「見守り4支援」)を意識して子どもに接する等の対応が必要になると考えます。
 
「毒親」の“未来”を改善する
 ところで、精神科医の岡田尊司氏は、愛着不全の一つである「不安型」タイプについて次のような特徴を指摘しています。
「いつも周囲に気を使っている」
「少しでも相手の反応が悪いと、『嫌われているのではないか?』と不安になる」
「『愛されたい』『認められたい』と言う気持ちが非常に強い」
「『不安型』は自身のパートナーに“求める”気持ちと、パートナーを“拒絶する”気持ちの両方が併存している」
 
 お気づきでしょうか。実は、この「不安型」愛着不全は、「アダルトチルドレン」と同じ対人依存症状を表しています。
「不安型」愛着不全の考え方は、愛着理論の生みの親であるボウルビィ(19071990)と親しかった心理学者エインズワースが行った新奇場面法という実験(母親に対する子どもの反応を調べるもの)から明らかになった4つのタイプのうちの一つで、「アンビバレント型」とも呼ばれます。「アンビバレント」とは、相反する気持ちが同時に存在する様子のことで、先の「パートナーに“求める”気持ちと、パートナーを“拒絶する”気持ちの両方が併存している」という特徴はそのことに由来しています。
 一方、「アダルトチルドレン」の考え方は、1989年のある国際シンポジウムで、アルコール依存症の親に育てられた子どもを象徴する言葉として紹介され、にわかに注目を集めたものとのことで、歴史は比較的浅いです。一時期取り上げられる機会が減ったこともあったようですが、その後「毒親」に関連する考え方として再度注目を集めています。
 すなわち、「アダルトチルドレン」は、本来は「不安型」愛着不全に含まれる考え方で、ある時期に顕著になった社会背景を受けて特に注目された言葉と捉えることができるのです。
 
「不安が強く神経質」
「自分の気に入らない我が子には否定的である一方で、気に入る場合には過度に可愛がるタイプ」
と指摘しています。正に、本記事の事例にみられるような、我が子を自分の意のままに翻弄した「毒親」の言動と瓜二つです。
 
 また、岡田尊司氏は「『不安型』の人は、自身のパートナーに求める気持ちとパートナーを拒絶する気持ちの両方が併存している(「両価的」=「アンビバレント」な性格)」とも指摘しています。つまりそういう大人は、自分自身が親になった時に、「自分の気に入らない我が子には否定的である一方で、気に入る場合には過度に可愛がる(やはり「両価的」)」ようになる、つまり、求めたり拒絶したりしていた(「両価性」の)“対象”がパートナーから我が子に置き換わることが十分に考えられます。
 すなわち、今現在の親が、「自分の気に入らない我が子には否定的である一方で、気に入る場合には過度に可愛がる」ような「両価的」な養育をしていると、今度は我が子が自分のパートナーに対して「両価的」な対応を示す「不安型」愛着不全の大人や「アダルトチルドレン」になり、更にその子が人の親になった時に、今度はその子どもを自分の気分のままに「両価的」に翻弄する、いわゆる次世代の「毒親」となってしまうのです。

 つまり、我が子を未来の毒親にしないためには、子どもが自分の思うとおりにした時には褒める一方で、そうでない時には叱る「両価的」な養育をやめ、一貫して安心7支援」によって子どもに愛情を注ぎ続ける養育を行う必要があるのです。
 因みに、ここで言う前者がいわゆる「条件付きの愛」(ある条件を満たした時だけ褒める)であり、後者が「無条件の愛」と言えるでしょう。