さて、これまで見てきたように、子どもと「愛着」を形成することは、子どもにとってのよき「安全基地」となり、子どもとの間に「愛の絆」をつくることでした。
   さて、そのためには、当然子どもへの「愛」が必要です。これがないと、人との交流を避ける「回避型」の愛着スタイルを持つ大人になってしまいます。そして、その愛は、何かができた時だけ褒め、できなかった時は叱ったり無関心になったりする「条件付きの愛」ではいけません常に親や他者の顔色ばかり気にする「不安型」の愛着スタイルの人間になってしまいます。つまり、「安定型」愛着スタイルの大人に育てるために必要な愛は、愛されるうえで何の条件も必要としない無条件の愛なのです。
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岡田氏はこの「無条件の愛」について、次のように述べています。「母親とは、本来無条件の愛を与えてくれる存在だ。世界中の全ての人が敵にまわろうと、最後まであなたのことを信じてくれる存在。母親とは、空にある太陽と同じくらい当たり前に、あなたを照らしてくれる存在だ。その当たり前が、生きるということ、愛するということ、信じるということ、そして、ここにいるということ、全ての根源的な当たり前を支えている。だからこそ、母に無条件に愛されて育った人は、自分やこの世界というものを無条件に信じることができる。当たり前のものとして感じることができる。ただ普通にいるだけで、心が満たされ、幸せを感じることができる。(岡田2014)」

   さて、この「無条件の愛」。教育本などにも度々登場する言葉ですが、実はとても抽象的な表現です。そこで、ここでは、この「無条件の愛」について、①子供を褒める時、②子供を叱る時、③普段の時、それぞれどうすれば「無条件の愛」を子供に伝えることができるのか具体的に考えてみたいと思います。

①子どもががんばった時はもちろん褒めますが、表面的な“結果”を褒めるのではなく、その背景にある子供が“努力”した態度を褒めましょう。親が、よい“結果”の時に褒めて、よくない“結果”の時は叱るのは、子供自身を認めているのではなく、子供が持ってくる“よい結果”という“おみやげ”を待ち望んでいる表れです。“おみやげ”を持っていけば褒められる、という「条件付きの愛」を子供は敏感に感じ取り、自分に対する愛情として認識できません。逆に、仮に“結果”が芳しくなかったとしても、子供が“努力”していたら、その態度を褒めることで、子供は「親は自分が成功しても失敗しても、がんばった自分を愛してくれている」と受け止める事ができるのです。それこそが“無条件の愛”です。
②逆に何らかの失敗をしでかしてしまった時にも、たとえ周りの人たちがどれだけで子どもを責めようとも、「人間だもの、そんな時もあるよ」「次に同じ失敗をしないようにすれば大丈夫だよ」等と、失敗を受け止め励ましたり応援したり、「あなたらしくありませんよ!」「今のあなたは本当のあなたではありません!」等と、その子ども本来の姿を信じて叱ってあげましょう。子供が“失敗”した時でも子供の存在を肯定する、そこには「成功したら」という条件が存在しません。まさに“無条件の愛”です。その時、子供は叱られているにも関わらず、輝いた目で大人を見ます。叱りながらも子供を肯定している気持ちが、子供の心に響いているです。
③では、それ以外の時、つまり普段の時はどうでしょう。そんな時も、太陽の日差しが子どもを包みこむように、目の前にいる子どもを「安心7支援」のような肯定的な愛情行為(見て微笑む、穏やかな口調で話しかける等)で温かく包み込んであげましょう。そのことで「今あなたがいること、それだけでお母さんは嬉しい」という愛情が子供に伝わります。それこそが“無条件の愛なのです。

   これら3つの親の言動が、子どもに対して「褒めている時も、叱っている時も、普段の時も、いつでもあなたのことがすきだよ」という“無条件の愛”を伝えることになるのです。