GWが終わり、また学校生活が始まります。毎年このGW明けが不登校が増える時期でもあります。その原因は「いじめ」。前年度からいじめられている子どもはもちろんのこと、今年度からいじめ被害にあっている子どもも、新年度がスタートし精一杯頑張って気を張っていたのが、連休でタガが外れて、学校へ向かうエネルギーが無くなってしまうのがこのGW明けです。
   今回は、そのGW明けの学校生活が始まる前に、ぜひ皆さんにお伝えしたいことがあり投稿しました。それは、順番に以下の3点です。
①いじめられていることを親に相談できないのは、いじめられている“自分の弱さ”を親に見せたくないから
②いじめはなぜ起こる?
③子ども達が知るべきは「いじめ受けるのは“自分が弱いから”ではない」ということ

   以下にそれぞれ考えてみます。

①いじめられていることを親に相談できないのは、いじめられている“自分の弱さ”を親に見せたくないから
   数々の学校問題に取り組んできた白梅学園大学教授の増田修治氏は次のように述べています(「「いじめ」を無くすために親がすべき事 〜「微笑み」で我が子がヘルプを言いやすい環境を作る〜」参照
「(子供は)“自分がいじめられている”ということは、なかなか親に言えないもの。いや、言わないものだと思っていてください」思春期以降になるとプライドもあります。つまり、“いじめられている”と言うことは自分がダメ人間だと認めたことになるような気持ちになってしまう。だから言えないのです。」


その結果、誰も相談できる相手がいなくなった子どもは、逃げ場を失い、自身の命を自ら断つという最悪の決断に至ってしまうのです。親にさえ話していれば、親は我が子の命を救うためにどんな手でもうつでしょう。「学校なんかに行かなくていい。お前の命が一番大切だ!」と子どもに伝えるかもしれません。人生経験の豊かな親は、幾らでも我が子を危険から守る術を考えることができるのです。

②いじめはなぜ起こる?
   次にふれておかなければならないのは「いじめはなぜ起こるのか?」と言うことです。
   このことについては、国立教育研究所の滝充氏が、ある5つの仮説を立てて検証しています。その中には、「いじめの加害者、被害者いずれにおいても、それぞれの立場になりやすい性格があるのではないか?」という、いわゆる“子どもの持つ性格説”も含まれています。これが子ども達が心配している「自分はダメな性格だから」という考えです。
   しかし滝氏は最終的に、先の5つの仮説の中から次の仮説を採用しています。
加害者の子どもたちは、自分が置かれている環境(家族や学級等)に適応できず不満を抱き、それによってストレスを溜め、それを被害者の子どもに向けて発散している
つまり、いじめが起きる原因は被害者にあるのではなく、自分がおかれている環境に適応できずストレスを抱え込んでいる加害者にあるということです。

③子ども達が知るべきは「いじめは“自分が弱いから”受けるのではない」ということ!
   いじめにあう子ども達は「いじめられるのは自分がダメ人間だからだ」と思っています。しかし、「その考えは間違いだ」と、権威ある専門家が否定しました。原因は、強いストレスに悩まされている加害者にあるのです。
   時々、繁華街で刃物を振り回す、自暴自棄になった若者がこう言います。
相手は誰でもよかった
つまり、ストレスに悩まされ自暴自棄になった人間にとっては、自分のストレスを発散できさえすれば、相手など誰でも構わないのです。
   いじめられて親に相談できずに悩んでいる子ども達が知るべきは正にそのことです。自分がいじめにあうのは、相手が何らかの強いストレスにやられているからであり、自分が弱いからではないのです。例えば、野良犬に噛まれた子どもは親に報告するのをためらいません。なぜなら、悪いのは自分ではなく、野良犬だと分かっているからです。ところが、相手が野良犬であっても、自分が犬に石を投げて怪我をさせた、ということになると、途端に子どもは親に口を閉ざします。「自分が悪い」と分かっているからなのです。

《補足》親が忘れてはいけないこと
   一方で、先の増田氏は、こうも述べています。
「今の親御さんは、お子さんに強くあること、なんでも自分の力でできること、自立することを求めすぎています。子ども達は、幼稚園・保育園のころから『しっかりしなさい!』と言われ続けています。そうなると、いざというときにヘルプが言えなくなってしまう。」
   つまり、「原因は加害者にある」と分かったとはいえ、親が普段から無意識のうちに子どもに「強くあれ!」とプレッシャーを与えていることもまた事実なのです。その自分自身の養育のあり方について“我関せず”ではいけません。そのことは常に自分の中で振り返っているべきです。

   これらのことに関わって、私は次のように投げかけました(「無くならない“いじめ自殺” 親は我が子に強くあれと求め過ぎる? 〜難しい自立とのバランス〜」参照)。
「親ならば誰でも、我が子に対して、強くあること、何でも自分の力でできること、自立することを求めるものです。しかし、その働きかけが強過ぎると今度は子どもが自分の弱みをさらけ出し難くなる。親は一体どうやってその微妙なバランスをとればいいのでしょうか?」
   この答えについては、上記記事でお話ししていますので、そちらを参照ください。