いじめの悩みを親に相談できずに自殺する子ども達が後を絶ちません。


   数々の学校問題に取り組んできた白梅(しらうめ)学園大学教授の増田修治氏は次のように指摘します。

今の親御さんは我が子に対して、強くあること、何でも自分の力でできること、自立することを求め過ぎるために、子どもは『いじめられている』と言うことは自分が“ダメ人間”だということになるという心理が働き、親にいじめの悩みを打ち明けられなくなる」


「なるほど」の指摘です。しかし、親ならば誰でも、我が子に対して、強くあること、何でも自分の力でできること、自立することを求めるものです。しかし、その働きかけが強過ぎると今度は子どもが自分の弱みをさらけ出し難くなる一体どうやってその微妙なバランスをとればいいのでしょうか?




  “子どもに無理をさせているかどうか”を見極めるうえで一番明確なのは、子ども自身の判断に委ねることです。「無理をしているかどうか」は子どもの気持ちによってしか決まらないものだからです。


   実は、子どもの自立を求めながらも、子どもが「無理をしているかどうか」を見極める支援方法があります。それが「見守り4支援」です。

   この4つの支援とは、「任せて、②見守り、③諭して、④褒める」です。大まかに言うと次のようになります。


①任せて

   活動を始めから子どもに任せる

見守り

   子どもの活動する様子を口を挟まずに優しく見守り続ける

諭して

   子どもがSOSを求めてきた時や子どもに大きな不利益が生じる時に優しく教える

褒める

   子どもが上手にできたら褒める


「①任せて、②見守り」では、子どもが自分の力で問題解決に当たる自立の姿勢を願っています。それに対して「③諭して」では、子どもの心に大きな傷を残すことが予想される場合を除いて、基本的に子どもの方からSOSを求めてきた時にだけ親が助言を与えます。この「子どもの方から親にSOSを求めてきた時」というのが、子ども本人に無理がかかっている時です。そういう時には、親は子どもを快く向かい入れて優しく諭してあげるのです。

   更に、そういう経験を重ねることで、子どもは自分の弱さを親にさらけ出すことに抵抗を感じなくなるでしょう。


   つまり、「自立を願いながらも、願い過ぎないようにバランスをとる」という難しい“さじ加減”に親が頭を悩ませる必要はなく、「見守り4支援」という一定の枠組みの中で支援していれば、子どもからのSOSの有無に従って自動的に両者のバランス調整をすることができるというわけです。

   これが一たび、“子どもに任せ見守る”という基本線が破られてしまうと、子どもは親の“期待”という名を借りた“干渉”に負けてしまい、難しいバランス調整の負担は、全て親の判断に委ねられることになるのです。


   しかし、子どもに対して「困った時ときは、遠慮しないでSOSを求めなさい」と言葉では言っていても、実際場面で子供が親に話しかけるためには、親御さんが普段から子供が話しかけやすい雰囲気を持っていることが必要です。

   そのために有効なのは「安心7支援」の「子どもを見て微笑む」です。子どもは親の“微笑み”による柔らかな“見守り視線”に出会うと、親との心の繋がり、つまり「愛着(愛の絆)」を感じます。その“愛の絆”で繋がっている時は、親子の間に壁は存在しません。精神的な“絆”で繋がっているのですから、親を自分に近い存在だと感じ、話しかけやすい環境になるのです。

   そもそも、親に限らず不機嫌そうにしている人には誰でも話しかけづらいですよね。