先週のテレビ番組「モーニングショー」(テレ朝)で、児童虐待防止法について特集していました。

   この番組のレギュラーコメンテーター玉川徹氏によれば、ご自身の親御さんは徹少年に体罰をしなかったそうです。「なぜしなかったのか?」と聞いたところ、「自分も親からされなかったから、お前にもしなかった」との返答。このことから玉川氏は「このような連鎖ってあるんじゃないかな?」と指摘。

   つまり、玉川氏の場合は「親から体罰を振るわれなかった人が、自身の子どもにも体罰を振るわなかった」、つまり、“望ましい子育てが受け継がれた”といういわゆる「“正”の連鎖」でした。


   ところで、この番組に解説者として出演した家族問題カウンセラーの山脇由貴子さんは、「親から愛されないことによって起きる子どもの問題行動」として「愛着障害」という概念を紹介しました。つまり玉川家では、逆に世代間で正しい「愛着」が育まれ続けてきたのです。

   しかし、我が国の「愛着」研究の第一人者である精神科医の岡田尊司氏は、我が国では戦後以降、玉川氏の場合と真逆の「愛着」の「“負”の連鎖」が存在し続けていると指摘しています。これによって我が国は、時代の流れとともに、確実に「愛着」崩壊の波にむしばまれてきているのです。
   1980年から翌年にかけて放送されたテレビドラマ「三年B組金八先生」の第二作目では、校内暴力を繰り返す子どもたちを取り締まるために、警察が学校の中に入る様子が描かれました。


「私たちは腐ったミカンをつくっているのではない。人間をつくっているのだ!」という金八先生の名言が印象的なこのドラマは、1970年代後半から社会問題になった校内暴力の問題をテーマに描かれたものでした。この現象も、ある時期からの「愛着」障害の世代間連鎖によって起きたものだったのです(詳しくは「愛着の話 No.36 〜愛着崩壊の歩み〜」をご覧ください)。
    岡田氏は、その「愛着」崩壊の波によって、現在の日本社会は、昔に比べて、人格(「愛着」スタイル)が不安定な人間が増え、そのために、いじめ、不登校、ひきこもり、非行、家庭内暴力、恋愛・結婚回避、セックスレス、離婚、薬物依存、家族内殺人等の凄惨な問題が増加していると、「愛着」のもたらす影響を指摘しています。

   改正された「児童虐待防止法」によって心に傷を負う子ども達が減り、“負の連鎖”が断ち切られることを心から願っています。

P.S
   玉川氏のことをいろいろ言う人はいるようですが、氏のように、「石橋を叩いて渡る」ような用心深さを持ち、特定の分野に顕著に優れた能力を持ち、問題の解明のために周りに流されることなく前進する、というタイプの人は、世の中が進歩するために必要不可欠な存在です。事実、歴史上の偉人にも同様のタイプの人が数多くいます。
   そんな玉川氏のご両親は、徹少年に適切に愛情を注ぎ、氏が自分の良さを正しく発揮できるように育ててくださったと言えると思います。