前回の続き)

【感想】
    記事内で、面接官から問われている質問を「親に関わること」「子どもに関わること」の二つに整理します。

《親に関わること》
①「親の人柄 はどうか」
②「家族の輪はあるか」
③「将来、学校と家庭との方針が食い違ったらどうするか」
④「お子様がいじめられていると相談してきたらどうしますか?」
⑤「お父様のご趣味は何ですか?」

《子どもに関わること》
⑥「お父様の尊敬できるところはどこですか?」
⑦「あなたがブランコに乗ったばかりのときにお友達が代わってと言いました。どうしますか?」
⑧その場で考えて自分の言葉で話せるか
⑨言葉の意味がわからない場合に面接官へ質問できるか?

    次に、問われていることについての意味や、それに関わる普段の養育のあり方について考えます。
《親に関わること》
①「親の人柄 はどうか
    人間は社会的動物です。常に誰かと共に過ごすことが求められます。つまり、望まれる“人柄”のカギは“対人面”、即ち“人とプラスに関われる”ことです。例えば、「朗らか」「明るい」「優しい」「思いやりがある」等のです。
    しかも、親御さんの人柄や考え方は、子どもに影響します。ですから、人とプラスに関われる親の子どもも人とプラスに関われる人間になる可能性が高くなります。だからこそ子育てには親の“人柄”が重要になるのです。

②「家族の輪はあるか
    ご自身の家庭には“家族の輪”はあるでしょうか?特に、親同士が子どもの前で度々ケンカしていると、少なくとも子どもの意識の中では“家族の輪”は存在していないはずです。ただし、子どもが望むような条件を示しながらパートナーの悪口を言っていると、子どもは誤った学習をしてしまい、悪口を言われた側の親の言うことを聞かなくなってしまい、“家族の輪”どころか、家族内に“序列化”が生まれてしまう場合も少なくありません。
   また、先の親の人柄が“内向き”なものになっていると、この“家族の輪”もできにくくなるでしょう。その基本は、人への働きかけであり、人を見て、人に話しかけ、人の話を聞き、人の気持ちに共感するなどの行為です。それらはまさに“家族の輪”とは、家族同士の「愛着(愛の絆)」を形成するための「愛着7」のような愛情行為なのです。

③「将来、学校と家庭との方針が食い違ったらどうするか
    個々の家庭の方針は様々違いがあるでしょう。学校は、それら全ての家庭から子ども達を預かっています。また、大学時代や初任者時代に専門の教育を受けてきた、いわば専門家です。これらのことから、「我が家ではこういう方針なので、学校でもそうして欲しい」と要求するのは適切ではないと思います。学校側は「困った親」という印象を抱いてしまい、問題をこじらせかねません。基本的には学校の方針を尊重する意識の方が子どもの健全な成長のためにも望ましいです。自分の親が学校に無理難題を突きつけていると、実は子どもは心の中ではその様子を疎ましく感じているものです。また、学校や担任に対する不満を子どもの前で発言することも、子どもの学校での生活意欲が萎えてしまうことになるので、やはり望ましくありません。
    一方で、子ども一人一人の様子が一番よく見えているのは保護者です。担任が気がつかず、子どもが一人で悩みを抱えているような場合には、学校への連絡や相談は是非必要です。学校でも家庭でも、互いの立場を尊重しあいながら、「子どもの気持ちを第一に考えていこう」という共通したスタンスを持っていることが大切だと思います。

④「お子様がいじめられていると相談してきたらどうしますか?
    記事内で紹介されている模範解答は、「子どもの言葉を鵜呑みにせず、よく状況を聞き出し『明日はお友達にこう言ってみようよ』など家庭内で解決する姿勢を見せる」でした。ここでは、親が「我が子が正しい」と決めつけて相手を責めないことや、子どもが親に正直に話せる親子関係ができているか、自分たちも問題解決のために努力できるか、等が求められるでしょう。
    更に、ふさぎこんでいる子どもをハグして、「お母さんはあなたを応援しているからね」等と、母子間の「愛着(愛の絆)」を強め、子どもにエネルギーを注入してあげることも大切です。

⑤「お父様のご趣味は何ですか?
    父親は子どもの遊び相手、つまり遊びを通して子どもに社会のルールを教える「父性」の働きを持っています。父親が好きな子どもは、父親の好きなことを真似しようとするので、父親の趣味が他者や自然と触れ合うような“外向き”なものであれば、父親との遊びを通して社会への適応力を身につけることができるでしょう。

《子どもに関わること》
⑥「お父様の尊敬できるところはどこですか?
    母親の働きかけ次第で、父親の尊敬できるようになるか、ならないかが決まると言っても過言ではありません。立場がその逆の場合も同様です。
    また、“父親”について聞いているのにはある意図があるのかもしれません。お母さんは子どもを受容する「母性」を持っているので、基本的に子どもが苦しくなった時に味方をしてくれます。それに対して、先に述べた通り、父親は子どもを社会に通用する人間に磨く「父性」を持っています。それが時に子どもにとっては「厳しい」と映ることがあると思います。自分の味方をしてくれる母親については「優しい」等の肯定的な評価をしても、自分に厳しい父親については、父親が子どもとの「愛着」を築いていなければ、肯定的な評価をし難いと思います。だからこそ面接官は、子どもが父親に対して肯定的な評価をしているかどうかを確かめる質問をするのではないでしょうか?その意味から、父親に対して肯定的な捉え方をしている子どもは“社会性”を身につけていると捉えることができると思います。

⑦「あなたがブランコに乗ったばかりのときにお友達が代わってと言いました。どうしますか?
    このような場面では、記事中で指摘されているように「自らの思いを相手に伝えられるコミュニケーション能力」や「相手の立場や心を察する力」が必要になります。いわゆる、子どもを将来自立した社会人に育てるための「キャリア教育」で求められる「人間関係能力」です。
   ちなみに、対人面で揉め事が起きた時のソーシャルスキルは、大きく分けて3種類あります。一番望ましくないのは、①感情的になって自分の気持ちを相手にぶつけることです。場合によってはケンカが起きて、ますます問題が大きくなるでしょう。二つ目は、②自分の気持ちを我慢することです。トラブルにはなりませんが、我慢する側にストレスが溜まります。最も望ましいのは、③自分の気持ちを落ち着いて言葉で伝えることです。例えば、①「今乗ったばっかりなんだ!待ってろ!」②「うん、分かった」
③「ごめん、今始めたばかりだから、もう少しだけ待ってくれる?」
等です。これらは小学校低学年でも十分理解できます。普段から教えていれば、就学前の子どもでも生活に活かせると思います。

その場で考えて自分の言葉で話せるか
    記事中でも指摘されているように、一番いけないのは、心配した親が助け舟を出すことです。いつも子どもに対して過保護だったり過干渉だったりしていると、思わず助け舟を出したくなるでしょうし、子どもも親の方を見て助けを求めるでしょう。つまり、普段から子どもに任せて努力させたり考えさせたりする「自立4支援」のような接し方をしているかが重要になります。それは即ち、先の「キャリア教育」における「意思決定能力」の育成に繋がります。


言葉の意味がわからない場合に面接官へ質問できるか?
「自立4支援」では、子どもが自分から聞いてきた時だけ諭して教えます。その支援が子どもの“質問力”を養います。それは、先の「キャリア教育」における「情報活用能力」の育成にもなります。「まずは自分の力でできるところまで頑張る。それでもわからない時には自分から質問する」、このことを繰り返し話して聞かせることが大切です。