「甘えさせる」と「甘やかす」の違い
「みなさんは、お子さんにきちんと甘えさせていますか?甘やかしていませんか?」そう聞かれると、一瞬どう違うのか戸惑う方も多いのではないでしょうか?実はこの二つには、全く別物と言っていい程の大きな違いがあるのです。

   まず、子どもに甘えさせること」は、子どもが自分で頑張っても乗り越えられない場面に陥った時に、必要な親の愛情や手助けを求める子どもを受け止めることです。これはいわば、母親との間に愛着を形成し、辛いことがあった時に「安全基地」に避難させることを意味します。
   逆に、子どもを甘やかすこと」は、子どもが頑張れば自分の力で解決できるのに、安易に親の手助けを求める子どもを受け止めたり、子どもの物質的な欲求に対して、むやみに物を与えたりすることです。逆に、子どもが求めてもいないことを親の方から与えようとすることも同様です。いわゆる“過保護”と呼ばれるものです。

子どもの求めに応じる時と応じない時
   ちなみに、親の愛情を与えるということは、子どもとの間に「愛着(愛の絆)」を形成してあげることです。例えば、子どもは寂しい時や不安な時等に母親からの愛情を得ようとして、スキンシップを求めたり、褒めてもらおうとしたりすることがありますが、それは、親に対して安心7支援のような愛情行為(「スキンシップを図る」「小さなことから褒める」)を求めているのです。また、「おかあさん、みて、みて!」とせがんでくるときも、「子どもを見る」「子供に微笑む」行為を求めているのです。子どもは、親からの愛情が十分足りている時は自分から求めるようなことはしませんから、子どもの方から求めてきた時は、親からの愛情が不足している時です。きちんと「安心7支援」による愛情行為を施してあげましょう。それが子どもに「甘えさせる」ということです。
 また、親の愛情以外に“物理的な手助け”を求めてくることもあります。親の目で見て、今までにもできていたことや、頑張ればできそうなことに対しては応じません。それが「見守り4支援」での「子どもに任せる」に当たります。そうしなければ子どもを甘やかす」ことになるのです。そんな時は「きっとできるよ。もう少しがんばってごらん」と優しく諭します。
 
   場合によっては、その時の子どもの力では無理な事もあります。そんな時でも、親の方からは手を差し伸べません。安易に親の方から助けてしまうと、「困っていれば、何も言わなくてもお母さんが助けてくれる」と誤学習してしまい、自分から「HELP」を出せない子どもになるからです。そんな時は、「この子は自分から『HELP』が言えるかな?」と微笑みながら見守りましょう。そして、子どもの方から「HELP」を言えた時には、にっこりほほ笑んで対応します。このことによって、子どもはきっと「困った時にはお母さんに聞けば優しく教えてくれる」と認識できるようになるでしょう。このことは、子どもが思春期頃になっても悩みを親に相談できる関係性を築くうえでとても重要です。
   ただし、何で困っているのかをできるだけ自分の言葉で言える力をつけさせたいので、子どもの方から何も言わないでいる時は、「どうしたの?」と微笑みながら子どもに聞きます。それでも何も言えない時は、二択式にして「○○○なの?それとも□□□なの?」と穏やかな口調で聞いて、最終的な“意思決定”は子どもがするようにしたいものです。それが子供の将来の人格形成を支える「キャリア教育」の一環にもなります。
   この間、親の言動は終始穏やかで落ち着いています。それが「自立4支援」の「諭す」に当たります。

「甘えさせる」と「甘やかす」の違いを見極めよう
   さて、以下に様々なシチュエーションを挙げました。これまでの内容を基に、それぞれ“甘えさせること”と“甘やかすこと”のどちらに当てはまるか考えてみてください。

1)ゲームや競争で一番になれず怒っている子どもに、わざと負けて勝たせてやる
2)上手に食べられないので、ママが食べさせてやる
3)子どもが自分で片づけられるのに親がやってしまう
4)転んだとき、「痛い、痛い」とママのところへ訴えにきたときに優しく「痛かったね」と慰めてやる
5)菓子や玩具を子どもが望めばいくらでも買ってやる
6)眠いときや疲れたとき、「ママ、抱っこ~」と、せがんできたときに抱っこしてあげる
7)ジッパーや靴ひもなど、自分でできないことを「ママやって」と頼まれたので結んであげる
8)もう少ししたら食事なのに「お腹が空いた~」とわめくので、お菓子を与える

   正解は、“甘えさせること”が、「2」「4」「6」「7」。“甘やかすこと”が、「1」「3」「5」「8」です。

    お母さんは子どもにとっての「安全基地」です。「基地」に避難させてもいい時とそうでない時とを見極めて、「甘えさせ上手」なお母さん、そして「甘やかさない」お母さんになれるといいですね。