前回お話しした「真の愛情とは?」。この「本当の愛情」とは、いったいどんなもののことを言うのでしょう。このことが、この「愛着の話」の最大のテーマとなっていきます。

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   さて、「愛着」とはいったい何のことでしょうか。「愛着」とは、ボウルビィという児童精神科医が提唱し始めた考え方で、一言で言えば、子どもと親との間に結ばれる「愛の絆」のことです。この場合の親とは、何も血の通った遺伝的な親とは限りません。むしろ、実際の養育にあたった「育ての親」との間に結ばれる絆のことを言います。いくら血が繋がっていても、その子どもを実際に育てなければ、その子に対する愛情は育まれません。それは、子どもにとっても同様で、親が子どもを愛すれば、子どももそれに反応し、親を愛するという相互的な現象なのだそうです。
   「愛着障害」とは、この「愛の絆」が十分に結べないとき、すなわち「愛着」が形成されないときに起きる子どもの人格形成面に起きる問題症状のことを指しています。なお、狭い意味で、親による極端な虐待や養育放棄によって引き起こされる「反応性愛着障害」という症状もありますが、この「愛着の話」では、精神科医の岡田尊司氏の指摘をもとに、どの家庭でも起こり得る症状としての「愛着スペクトラム障害」(岡田2011)と捉えたいと思います。子どもの具体的な症状としては、後に取り上げる「『我が子は愛着障害などではない』という誤解」という項で述べたいと思います。(続く)