【今回の記事】

新幹線殺傷:容疑者自閉症?「旅に出る」と1月自宅出る


【記事の概要と感想】

「自閉症と診断された小島容疑者(22)は県内の会社に就職後約1年後に『人間関係が合わないと退職。『自分は価値のない人間。自由に生きたい。それが許されないのなら死にたい等と話していたという。」との報道。


   東海道新幹線車両内で、3人が殺傷されるという凄惨な事件が起きてしまいました。加害者の男性は、自閉症と診断された小島容疑者22歳。

   記事内容を見る限り、おそらくこの男性は知的遅れのない自閉症の方だと思います。このタイプの人は、見た目は健常者と全く変わらないため、周囲の理解が不足していたり、心無い言動を浴びせられたりしやすいのです。また、この男性自身も周囲との人間関係がうまく出来ないことや、周囲からの言動を浴びせられることに対して、自己肯定感が極端に落ち込んでいただろうということは、彼が「自分は価値のない人間だ。自由に生きたい。それが許されないのなら死にたい」等と話していたことから十分考えられます。実際に学校現場では、この問題が深刻化しています。その中では、やはり人間関係につまずいた発達障害の子供達が「俺なんか地獄に落ちればいいんだ!」等と真剣に叫ぶのです。そのように、自暴自棄になっていた人間が、見境なしに他者に害を与える行動に走ることがあると考えることは、決して的外れとは言えないでしょう。

   ですから今回の事件は、未成熟な社会が招いた、いわゆる“二次障害”による事件だと思います。なぜなら、本来整った生活環境の下での自閉症者は、健常者よりも何倍も正義感が強く真面目で素直なのですから。


   自閉症を含む発達障害者については、「発達障害者支援法」が既に平成17年から施行されて以来、12年もの年月が流れています。しかし、未だに自閉症に対する理解が進んでいないのは残念なことです。

   加えて、この事件は既に多数の報道がされていますが、この男性が自閉症であるという事を報じているものは少ないのが現状です。もちろん彼のした事は許されることではなく、こうなった今は然るべき罰を受けなければならなりません。

   しかし、彼の表面的な行為だけに目を奪われるのではなく、今の社会が“感覚過敏”である自閉症者にとってどれだけ生きづらい社会であるかを考えるきっかけとなることを私は願います。そうでなければ、いつかまた同じような事件が起きるでしょう。しかし、今回不運にも命を落とされた方に報いるためにも、それだけは避けなければならないのです。


   因みに、“感覚過敏”で人間関係に生きづらさを強く感じる自閉症者にとっては、「愛着7」のような温かで肯定的な接し方をすることが彼らのストレスを軽減する意味でも、人間関係を円滑にする意味でも望ましいのです。しかし残念ながら、精神科医の岡田氏が指摘し、更に拍車がかかっている「脱愛着社会に生きる“他者の立場を軽視する人間”は、“感覚過敏”の自閉症者に対して今後ますます他者への警戒感や恐怖感を抱かせるに違いありません。